突然ですが、マイクロソフト(MSFT)とシスコシステムズ(CSCO)、IBM(IBM)の3つの中で、あなたが今もっとも割安だと思う銘柄はどれですか?

と、いきなり聞かれても困ると思うのでバリュエーションの基本指標である予想PERを言っておきます。

MSFT:28.5倍
CSCO:12.3倍
IBM:9.7倍

PERが低いIBMがもっとも割安、、なわけありませんよね。いくらPERが低くても、将来の売上、利益成長がなければ割安とは言い難いです。PERが高くても、今後10年、20年かけて売上、利益が年率10%超で成長するなら割高とは言えないでしょう。PERだけで割安割高を判断することは不可能。将来の成長とのバランスで判断しなくてはいけません。

というわけで、3銘柄の過去10年間の売上成長を見てみましょう。

以下単位はすべて百万ドル

クラウドAzureがエンジンとなりマイクロソフトの売上は右肩上がり。10年間の成長率(CAGR)は8.1%。

シスコシステムズは緩やかな右肩上がり。最近は成長が停滞気味で、従業員のリストラを行っているほどです。先日の増配もほんのわずかで株主を失望させました。株価も上値が重い状況。10年間の売上成長率は2.9%。

クラウドビジネスの波に乗りくれたIBMは成長の種を育て切れておらず苦しんでいます。現状を打破するために昨年レッドハットを300億ドル超で買収。CEOも交代しました。売上は成長しないどころかFY11をピークに右肩下がり。この10年間の売上成長率は-2.8%。

売上だけでなく利益(EPS)でも見るべきですが、わかりやすい例として売上データを紹介することにしました。

3銘柄の過去10年の売上成長率(CAGR)と現在のPERをまとめます。

マーケットは合理的にソロバンを弾いていますね。過去の売上成長率が高い企業ほどPERも高くなっています。

改めてここまでのデータを見て、あなたならどれが長期的に有望だと思いますか?

マイクロソフトは確かに成長路線をひた走っていますが、PERは28倍つまり益回りは3.5%しかありません。もし成長が止まれば株価急落は免れません。が、今の成長率が今後も続くのであればPER28倍くらい余裕でペイできると思います。

シスコシステムズはネットワーク機器で確固たるブランド、地位を築いていますが、最近は期待外れの決算が続いています。一時的な循環で近い内に再び成長軌道に戻るならPER12倍はお買得かもしれません。

IBMはどうでしょうか。PER9.7倍ということは益回りは10%を超えます。批判されることが多いですが、NYダウ銘柄の一つです。10年債利回りが1%強しかない時代にあって、NYダウ銘柄が10%の利回りを提供してくれています。これはお買得? いや、でもこのまま売上が下がり続ければ、今の低いPERでも報われない可能性は十分あります。大型M&Aも実施しておりリスクはそれなりに高いです。

マイクロソフト、シスコシステムズ、IBMの3つのうち、どれがもっとも「割安」で長期リターンが高くなるのか。その答えはわかりません。それがわかれば苦労しません。タイムマシーンに乗って30年後のNY市場を見てみないと分かりません。もしかしたら、無くなっている企業もあるかもしれませんね。

投資は不確実な未来に賭けることだから、答えはわからなくて当然。過去の実績や決算書、自分のビジネス知識を総動員して決めるしかありません。『株式投資の未来』を読むと、高PERの成長企業いわゆるグロース株が強い傾向にあることがわかるので、そういう意味ではマイクロソフトが有望かもしれません。しかし、低PER銘柄が市場平均をアウトパフォームすることも多々ありますから、シスコやIBMが有望と言えるかもしれません。

いくら考えても結局悩み続けるだけなのですがw、こうやって考えることが大切だと思います。株価モメンタムではなく、きちんと利回りを見るということです。今の株価で投資したらいくらの(理論)利益があるのか。それがこれからどんな推移で上昇していくのか。それを想像する。

個別株であれインデックスであれ投資は自己責任。自分が納得して投資してないと後悔します。特に損した時はそうです。納得感を持って投資するとは、きちんと利回りを見て投資することだと私は思っています。利回りと言うのは、今の数字だけでなく将来も含めた長期の数字です。