フェイスブックの2018年第4四半期決算(2018年12月期)は市場予想を上回り、株価は急騰しました。が、それでも同社の翌2020年予想EPSに基づくPERは18倍台前半です。コカ・コーラのそれは19倍です。

成長著しいフェイスブックのPERがコカ・コーラよりも低いとは、過去の財務データを見る限り信じがたいです。フェイスブック株が安過ぎるのか、それともコカ・コーラ株が高過ぎるのか。いやいや、マーケットは合理的だから同社とも妥当な評価額が付いてると考えるべきでしょうか・・。

単純にこれまでのEPS成長を見ただけの素人視点ですが、フェイスブックの株価は公正価値よりかなり安く見えます。2010年~2018年の8年間のEPS成長率は年率51%にもなります。もちろん、この成長率が今後も続くことは考えられないです。すでに20億人以上がフェイスブックを利用しているわけですが、世界人口は75億人です。ユーザー数の伸びには限界があります。税金回避に対する欧米当局の圧力もあるし、プライバシー保護の問題もあります。

色んな経営課題があるのはわかりますが、それでもフェイスブックというSNSが社会に必要とされていることは、同社の500億ドル超の広告収入が証明しています。SNSは廃り流行りが激しいと言われますが、ここまでシェアを拡大してしまえば競合はいないも同然でしょう。インスタグラムの買収も素晴らしい判断でしたよね。

フェイスブックの収益性、財政状態はピッカピカです。優等生。PER18倍は安く見えます。

一方で、コカ・コーラはどうでしょうか。同社の予想PERは19倍でフェイスブックよりも高いです。が、2009年~2018年の10年間のEPS成長率は年率5.2%しかありません。

コカ・コーラは清涼飲料水の製造販売という安定したビジネスを営んでいます。誰も知る有名ブランドを武器にグローバルで高いシェアを確保しています。昨年インドに行きましたが、コカ・コーラやペプシコのロゴマークは至る所で見つかりました。単価が安いので新興国の所得が大きく上がらなくても、将来の売上増が期待できます。

私はコカ・コーラ株を100万円ほど保有しています。安定したEPS成長が期待できそうだし、今後もポートフォリオの5%を目安に投資を継続していくつもりです。

ただ、警戒感も持っています。世界的なブランド企業でバフェット銘柄だから長期保有すれば絶対に儲かる、とは思ってません。ジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』の中で、高いリターンをもたらした銘柄として紹介されているからと言って、それが21世紀も続くとは安易には言えません。

『株式投資の未来』によると、1957年~2003年のコカ・コーラ社のEPS成長率は11.2%とS&P500平均の6.1%を大きく上回りました。結局、そういうことなんです。景気安定株だから儲かるんじゃなくって、利益が成長するから儲かるんです。どれだけ利益が安定していようとも、成長がなければ株主リターンは寂しいものになります。

いや、そりゃまあ、PERが6倍とか7倍だったら大した利益成長がなくても、株主は報われるかもしれませんよ。でも、現実は違います。コカ・コーラのPERは20倍近いです。益回り5%。このバリュエーションの株式に長期投資して相応のリターンを得るには、少なくとも市場平均程度の利益成長は不可欠です。

タバコ株は昨年大きく売られPERも下がりました。アルトリア・グループ(MO)の予想PERは11倍。ちなみに私はPERが20倍近い時にMOに投資し、現在多額の含み損を抱えています。フィリップモリス(PM)のPERは14倍。MOよりは高いけど、まあまあ投資しやすいバリュエーションです。

食品株も売られています。バフェット銘柄のクラフトハインツ(KHC)の予想PERは13倍。ゼネラルミルズ(GIS)は14倍。

こうやって10倍台前半くらいにPERが落ちてくると、比較的安心感を持って投資できます。もちろん、PERが低いからってすぐに株価が上がると思っているわけじゃないですよ。短期的な株価変動なんて予測不能。見ているのは株価ではなく利益と配当です。

コカ・コーラやペプシコなどグローバル飲料メーカーの株価は底堅く推移しています。それは他のブランドに負けない強い競争力がある証拠と言え、投資家として心強く思います。一方で、こんなに高いバリュエーションで投資して大丈夫か?という不安も付きまといます。

バリュエーションは常に大切。コカ・コーラがピカピカの黄金銘柄だからって、高過ぎる値段で買ってはいけない。

具体的にはどれくらいまで許容できるか?
う~ん、感覚ですが20倍台前半が限界かな。これ以上高いバリュエーションはいくらコカ・コーラと言えども、ちょっと許容できないです。

PERが20倍を超えるような普通株をいつも買っているような人は、長期的には多額の損失を被ることになるだろう。

ベンジャミン・グレアム、デビッド・ドッド著『証券分析』より

多少PERが高くても、コカ・コーラのような優良安定企業に投資した方が長期では報われる気もします。でも、PERは非常に重要な指標。軽視はできません。銘柄選別が大事なのは言うまでもないけど、買い値も大切。

低PER銘柄は高いリターンをもたらしてきた実績があります。でも、低PERということは投資家期待が低いことの裏返しであり、そのマーケット評価を軽視するのも怖いです。

成熟企業にもかかわらずPERが高いということは、収益の安定性に対するマーケットの評価が高い証拠です。それは投資家として安心材料ですが、期待リターンはどうしても低く見積もらざるを得ないです。

このように、低PER銘柄と高PER銘柄にはそれぞれ長所短所があります。

安パイにバランスよくポートフォリオを組むしかないかな。私の保有銘柄の中では、コカ・コーラとペプシコ(PEP)、コルゲート・パルモリーブ(CL)は高PERです。メドトロニック(MDT)とブラックロック(BLK)、ファイザー(PFE)は中PER。アッヴィ(ABBV)、IBM、ベライゾンコミュニケーションズ(VZ)は低PER。あまり意識していたわけじゃないけど、PERの程度でうまく分散してるな。偶然だけど。無意識かな。

う~ん、考えれば考えるほど投資って難しいなって思います。どこにどれだけ資金を振り向けるか。限られた資本をどうポジショニングするか。これによって将来、億単位でリターンが変わる可能性があります。年率1%の差は30年複利では大きな違いになります。静かな真剣勝負ですよね、株式投資って。ホント面白い。S&P500平均を超えたい。