株主はネスレやペプシコ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の経営者に夢想家を選ばず、過大な期待は抑えられている。クオリティー銘柄が魅力なのは、株主の資金をCEOのむなしいプロジェクトに散財しそうにないことである。
ウォールストリートジャーナルより
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私が地味な生活必需品セクターの銘柄を好む理由がこの文章に詰まっています。
イノベーションという横文字はカッコいいし、企業の競争力の源泉でもありますが、その努力と苦労は大抵は株主に恩恵を与えません。消費者に恩恵をもたらします。そうやって社会は豊かになってきました。
企業がイノベーションを続けるのはそれが好きだからではなく、そうしないと生き残れないからです。しかし、ごく一部の企業は大したイノベーションがなくとも高い収益性を維持できます。それが記事にも例示されているプロクター&ギャンブルやペプシコなどです。マーケティング費用は必要ですが、IT業界の様なバチバチした技術争いはありません。時間の流れはゆっくりです。多少の改良、新製品開発があるとは言え、何十年も同じような製品を売り続けています。
大きな資本支出がなくとも、毎年がっぽり営業キャッシュを稼げる。その資金で自社株を買い戻して地味にEPS(一株当たり利益)を向上させ、結果として株価も右肩上がり。もちろん、配当もたくさん。そういう企業が長期投資向きだと思います。地味なビジネスだから、バリュエーションが異常に高騰するケースも少ないです。コツコツ再投資を続けやすい銘柄です。
一方で、あまりにイノベーションから距離を取ってしまうと、それはそれで不安になります。実際に米国株投資を4年経験してみて感じたことです。結局21世紀も地味なオールド・エコノミー銘柄のリターンがS&P500指数を超えるだろう、という考えは持っているものの将来はわかりません。当たり前ですが。
だから、不安になります。イノベーションが盛んなハイテク企業へ一切アプローチしないのはリスキーなのでは、という思いが沸々と湧いてきました。機械のように無感情で淡々と投資を続けることはできません。私はただの個人投資家。マーケットに振り回されることはしょっちゅう。著名なファンドマネージャーの発言で自分の考えが揺らぐこともしばしば。
そんなわけで、イノベーションから遠ざかり過ぎるのはダメだと思い、アップルなど情報技術セクターの銘柄にも投資しています。ただ、その中でも比較的テクノロジーが成熟している銘柄を狙っているつもりです。
ジョブスが亡くなり2011年にティム・クック氏がCEOに就いてから、アップルはイノベーションの力が衰えた。新iPhoneの発表でもワクワクすることはなくなった。なんて意見をよく耳にします。私は投資家としてこの意見をポジティブに評価しています。
大幅な改良を加えなくてもiPhone11の売れ行きは好調です。コカ・コーラが世界中で売れ続けるのと同じ感じです。そうなると、株主に残る利益が増えます。イノベーションで富が消費者側に移転するリスクが小さくなります。
イノベーションに近寄り過ぎない。でも完全に避けることもしない。そんな程よい距離感を保ちながらポートフォリオを作ってきたつもりです。株主に富が残りやすい企業と、そうでない企業とがあります。前者を見極めたいところですね。