資産価格の妥当性は利回りを見ないと判断できない
都心部を中心に不動産価格が上昇しているとは、ニュース等で頻繁に聞く話だと思います。
ただ、値段が上がる=割高になる、とは一概には言えません。
マンション価格の妥当性はどういう視点で考えればいいのか?
過去からの時系列推移?
それも一つの視点です。5年前より10%上がっていれば、ちょっと高くなってるなってわかります。
しかし、最も大切な視点は利回りです。
マンションの利回りは、想定家賃を購入価格で割り返すことで求められます。
物件の価格自体を比較しても意味はないです。
福岡市外れの3千万円のマンションと、都内の1億円のマンション。そりゃ高いのは東京1億円のマンションです。小学生でもわかること。ただ、値段が高いからって資産として割高と言えるわけではありません。
IBMとアップルを比較して、アップルの方が時価総額が大きいからアップルの方が割高だ。物件価格同士を比較することは、これと同じくらいの暴論です。
もう一つ踏み込んで、坪単価で比較すると少しはマシになります。でも、これでも投資価値の判断材料にはなりません。郊外の坪単価200万円のマンション、都心の坪単価500万円のマンション。坪単価が安い方が割安とは言えません。
マイクロソフトの株価は300ドル、アマゾンの株価は3300ドル。だからってこれだけじゃ割安も割高もわかりませんよね。まさか株価が高いからアマゾンの方が割高なんて言う人はいないはずです。
株式価値の妥当性は、その株が今後生み出すEPS(一株当たり利益)を考慮しないと判断がつきません。PERを見るってことです。
不動産も一緒で、その物件が(もし賃貸に出せば)今後生み出すことができる家賃収入を考慮しないと、価値の妥当性はわかりません。
資産の価値はそれが将来生み出すキャッシュフローの割引現在価値の合計です。このファイナンスの大原則は不動産も例外ではありません。
坪単価500万円の高額物件でも、それが坪当たり50万円の家賃を生み出すなら、利回りは10%なのでお買い得と言えます。
逆に坪単価200万円のリーズナブルな物件でも、それが坪あたり6万円の家賃しか生み出せないなら、利回りは3%なので割高と言えるでしょう。
株が割安か割高か見極める時に利回り(PER)を見るのと同じように、不動産も利回りを見ないといけません。
資産はその価格だけを見ても価値を判断することはできません。その資産がどれだけのキャッシュフローを生み出すかに意識を向ける必要があります。そのキャッシュフローは今現在だけじゃなく、今後10年くらい先までは考えたいところです。
この考え方は賃貸に出さない自宅マンションでも同じです。帰属家賃という概念を知っておいた方がいいです。
都心部のマンションの利回りが低いのには訳がある。都心のマンションは割高ではない
さて、最近都心(23区内)のマンション価格の妥当性をネットで調べています。物件価格、坪単価も見ているけど、一番注目しているのは利回りです。
便利なもので、過去の取引価格や家賃を調べることができるんですね。
で、結論から言うと都心の中古マンションの平均利回りは4%です。もちろん物件によって差はあるけど平均すると4%。3.5%~4.5%のレンジに収まることが多いです。
この利回りは他地域と比較して高いです。
郊外に目をやると、利回りは5~6%くらい普通にあるそうです。ここはすみません、自分で調べたわけではなく、ネットの情報です。あと郊外と言っても、三鷹とか町田、調布辺りは23区外でも郊外には該当しないと考えています。
株で言えば、郊外の物件はPER16~20倍(益回り5~6%)。都心の物件はPER25倍(益回り4%)です。
都心のマンションはなぜ利回りが4%と低いのでしょうか?
バブルなのでしょか?
いいえ、ちゃんとわけがあります。都心の物件は空室リスクが相対的に低く、かつ家賃も上がりやすいからです。
日本が人口減少フェーズに入っているのはご存じの通りです。ただ、地域別に見るとどこもかしこも減少するわけではありません。
東京都政策企画局のデータによると、2040年にかけて東京都で世帯数が減少すると予測されるのは奥多摩町、青梅市、檜原市、日の出町、昭島市といった都心から離れている地域だけです。
千代田区、港区、中央区は世帯数がむしろ20%以上増加すると予測されています。文京区、渋谷区、品川区、世田谷区、板橋区、江東区は世帯数が10%~20%増えると予測されています。
(参考外部データ:東京都政策企画局の資料)
都心の物件は確かに利回りが低い。でも、今後20年にわたって世帯数が増えるわけだから、家賃収入は安定すると期待できます。家賃は硬直性があるからグングン上がることはなくとも、簡単に下がることもないと考えられます。
賃貸マンションの供給量は増えすぎているという指摘もありますが、都心の中でも駅近の物件は物理的に供給量が限られるわけで、そういう希少な地域にある物件は常に供給<需要になると思われます。
株式で考えてみてください。下手に低PERのバリュー株に手を出すよりも、決算ピカピカの高PERのグロース株に投資した方が儲かることが多いですよね。ここ数年のIBMとマイクロソフトのように。
不動産も同じだと思うんです。下手に高利回りを狙わない。多少利回りが低くても構わないから、立地条件ピカピカの優良物件を買った方が長期的には儲けが大きくなると思います。
ほどほどの株を素晴らしい価格で買うのではなく、素晴らしい株をほどほどの価格で買うべき。バフェット先生はこう言います。
ほどほどのマンションを素晴らしい価格で買うのではなく、素晴らしいマンションをほどほどの価格で買う。住宅購入も同じ姿勢が必要だと思います。
いくら優良株でもPERが高すぎると投資価値はなくなります。優良企業マイクロソフトとは言えPER50倍となれば黄色いや赤信号です。
それは不動産も同じ。いくら都心の駅近マンションでも利回りが低すぎるなら投資価値はありません。
今の4%という利回りをどう判断するか。
減税加味すると住宅ローン金利が実質ほぼゼロであることを考えると、私は4%は許容範囲内だと感じます。決して割安ではないけど、法外なほど割高でもない。ちょうど今の米株と同じくらいの印象。いや米株よりはちょっと割高かな。
3年くらい前に投資的な観点から持ち家をお勧めさせていただいた者です。
当時はあまり興味なさそうでしたが、久しぶりのブログをのぞいたら
賃貸派だったhiroさんが、自宅の購入を検討していたので驚きました(笑)
ちなみに私はちょうどその頃、23区の投資用マンションを購入したのですが、
(甘く見積もったであろう)不動産業者のシミュレーションですら、
トータルでプラスになる損益分岐点まで5年かかる見通しだったの反して、
3年目の時点ですでに含み益が100万円以上出ており、嬉しい誤算です。
ただ、投資用ローンではすでに金利を上げる金融機関も出てきました。
住宅ローンもおそらく近いうちに利上げに踏み切りますので、
購入するのであれば、早めに決断したほうが吉かもしれませんね。
そうですね、3年前は全く興味なかったですw
やはり結婚がきっかけになって本気で勉強したからだと思います。
投資用ローンは金利が上がっているのですね。
情報ありがとうございます。
焦りは禁物と思いつつも、長期金利の動向は気になります。
審査を申し込んでから実際に借入を実行するまでの期間は気が気でないですね。
いつも株式戦略のために見させていただいています。ありがとうございます。
最近はマンション購入に傾かれているとのこと。
ひとつの気づきなのですが、不動産は株と異なり、バイ・アンド・ホールドは最適戦略ではないと思います。
「売れること」が一番重要です。
低金利の住宅ローンと、逆ザヤにもなりえる住宅ローン減税を駆使する。
そのうえで、イグジット戦略を立てられるかが勝利の秘訣だと考えます。
たとえば、4000万円で買った家が、10年後に30%価値が下がっていて2800万円でしか売れなかったとしても、これは損なのでしょうか? 月の家賃が10万円と思える家に10年間住めていたのならトントンなのでは?
8000万円で5600万円だとしたら、月20万円の価値があったかどうか?
これらは価値が下がっていても売れる物件に関してです。
不動産取引で留意しなければいけないのは株式と違って「売れないもの」があるで、そうしたものをつかまないことだと思います。
全くの同感です。
売れること、もっと言うと高値で売れることを重視して物件を選んでいます。
30年40年と住み続ける前提はなく、長くても15年では売却かなと思っています。
それもあって、広くても65㎡くらいでいいかなと思っています。
あまりに広いと売りづらいですし、あと都内の良い立地の坪単価だと単純に手が届かなくなります。
株は間違ってもポイっと売れますが、不動産は選択を誤ると簡単には挽回できません。
自分なりに勉強したつもりではおりますが、慎重に進めます。