自社の株価が下がっても労働者の生産性に影響なし
最近うちの会社の株価だだ下がりです。これまで日経平均をアウトパフォームし続けてきましたが、ここにきて急激にアンダーパフォームしてきています。
原材料価格の上昇、欧米の人件費増および採用難に伴う工場の操業度悪化、輸送費の上昇(特に欧州)。これらが利益率を圧迫しています。
他のグローバル企業も同じマクロ経済条件で頑張っているわけで、うちだけ特に株価が下がっているのは何かあるのでしょうか。細かい他社比較までやってないのでわからないです。
経理部あるあるだと思うのですが、業績がしんどくなってくると、社長や事業部トップからの風当たりがきつくなります。
もっと早く決算締まらないのか、この事業の粗利率悪化はなぜか、物流費の見通しは、原価差異の見通しは、とか色んな宿題が飛んできます。
株価が下がると、役員特にCEOは焦ります。株価が自分の経営手腕の通知表みたいなもんですから。株価によって自分の報酬も左右されるという経済面もそうだし、それよりはCEOとしての尊厳、名誉みたいなものを気にしてる感じがします。
まあ、株価なんて現CEOの能力だけで決まるものでもないと思うのですがね。
一方で、一般従業員は自社の株価下落なんてどこ吹く風です。さすがに経理部門では「最近、株価下がってるね~」くらいの会話は出ますが、深刻な雰囲気ではないです。どこか他人事な感じです。
てか他人事みたいなもんです。持株会などで自社株を買っていない限り、勤務する会社の株価が下がったところで従業員の財布は全く痛みません。経理部門でなければ、株価が今どうなっているか知らない人も珍しくはないでしょう。
うちの株を持っている投資家は「ああ、どうしよう、、もう売ってしまおうかなあ」と不安になって、本業に手がついてないかもしれません。
どれだけ理不尽な理由であれ、経済的な損失を負うのは資本家です。
ロシアへの経済制裁で、ロシアのビジネスから撤退して減収。突然の原油価格高騰で利益減少。そんな事前に予測するのは不可能で対策の取りようがない事象だったとしても、資本家は経済的な結果責任を取らなくてはなりません。それが資本主義のルールです。
一方で、従業員は基本的には固定給が必ずもらえます。株価が半値になっても従業員が損をすることはありません。ボーナスが減ったり、残業代を申請できなくなったりなどの間接的な被害を受けることはありますが、基礎的な収入は守られています。
そのおかげで、株価が下がっている今でも私たち従業員は冷静に淡々と仕事をこなすことができます。何事もなかったかのように、いつも通り働いてアウトプットを出しています。
投資家が目前の株価に右往左往してしまうのは仕方ないことです。自分の財布が痛む話なので。
投資家にそこのリスクをすべて負担してもらっているおかげで、雇われている労働者は株価を気にせず仕事に集中することができます。そのおかげなのか、長期的には株価は右肩上がりになる傾向があります。
現代の所有と経営(労働)の分離はうまい仕組みだなあとよく思います。
労働と資本どちらにもbetしておく
労働者は資本家から搾取されている。
資本家けしからん!
労働者は資本家から利益を取り戻すべきだ!
というのが岸田首相の基本的な考えなのでしょうか?笑
というのは冗談として、労働者が搾取されているのは事実ではあります。会社の利益が急上昇しても、その恩恵はすべて資本家と経営者が持っていくので。給料を上げて欲しいと言ったところで、それが受け入れられることは少ないです。
ただ、最近は労働者と資本家のパワーバランスが変わりつつあります。労働者の交渉力が高まっています。アメリカでは一部ホワイトカラーの業種で新卒年収10万ドルなんて条件もあるそうです。
マックジョブも専門職も、慢性的な人手不足です。高い給料を求めて転職する人が特にアメリカでは急増しています。
日本はアメリカほどではないにせよ、人手不足であることは同じです。労働者側の交渉力が高まっていることを感じます。
同じ会社に在籍する限りは、給料アップという直接的な恩恵はないのですが、辞めないように大切にされているというか、そんな雰囲気を感じます。残業申請するな!という圧も今のところは小さいです。
2009年卒の私の経験として、労働者側の立場がもっとも弱かったのはリーマンショック直後の2010~2012年あたりです。当時は監査法人にいましたが、残業もまともに申請できなかったです。違法残業だらけでした。
事務所の労務管理の問題もあったでしょうが、当時のマクロ経済の影響の方が大きかったんだろうと今は思っています。
投資家としてETFなどを活用してポートフォリオの銘柄を分散させておくことが基本ですが、そのさらに一つ上のレイヤーとして、労働と資本という分散投資も大切だなと感じます。
資本家は労働者より上の立場にあると見られることが多いですが、そうではなく社会でそれぞれ異なる役割を担っているだけ、と考えた方がいいかもしれません。
労働者はリスクを取ってくれる資本家がいないと安心して働けないし、資本家は日々仕事を頑張ってくれる労働者がいないと株式価値を高めることができません。
資本家が強い時代もあれば、労働者が強い時代もあります。この10年は圧倒的に資本家優位でしたが、コロナ禍以降は労働者優位になりつつあります。
ここからどうなるかはわかりませんが、労働と資本どちらにも投資しておいた方が安全だと思います。
労働市場の流動性の低さ、賃金の硬直性、違法残業、低い失業率etc
日本における労働市場の特殊性は、社員=家族という独特の世界観に起因するところが大きいように感じます。
これが強みとして機能した時代も確かにありましたが、現代においては機能不全を起こしてますよね。
米国の高インフレは、企業物価を消費者物価に転換できているからであり、それは消費者=労働者の賃金が上がっているからだと思います。需給に基づく、完全な価格形成機能が働いている。
日本は、労賃として受け取るべきものを低インフレという形で、消費者として受け取っています。価格形成が歪んでいる。
安い日本、みんなで貧乏になりましょう路線ですね。
リスクヘッジは、米国株で行った方が良さそうですね。
よく言われることですが、日本が給料が上がらないのは雇用の流動性の低さが原因ですよね。
政府が言っても無駄で、需要と供給のバランスで賃金上昇圧力がかからないと、本格的な給料アップは無理だと思います。
一方で、日本の他国に比べた物価上昇率の低さは素直に助かります。
アメリカほどでないにせよコロナ禍の財政支出があっても、大して消費は活性化せず、物価も上がらず、転職は活発にならないあたりは日本っぽい展開です。
どっちが良い悪いではないにせよ、今の日本の食品等のインフレは明らかにコストプッシュ型なので、おっしゃる通りみんなで貧乏路線ですね。
円も安くなる一方ですし。