長期的に投資を続けていくことを考えているなら、名目リターンばかり見ていても仕方ないです。インフレを加味した実質リターンが高くなるかを考えて投資判断しなきゃいけません。購買力が高まらないと、リスクを負って投資をしている意味がありません。なるべくインフレに強い資産に投資したいところですね。

金融投資の対象として最もメジャーなのは株と債券です。株と債券に分散投資しましょうとは巷でよく言われることです。

インフレは株と債券それぞれの資産クラスにどう影響するでしょうか?
株と債券はインフレに強いのでしょうか、弱いのでしょうか?

結論から言ってしまえば、短期では株も債券もインフレには弱いです。一方で、長期では債券はインフレに弱いけど株はインフレに強いです。

短期 長期
弱い 強い
債券 弱い 弱い

 

短期:株も債券もダメ。。バリュエーション調整が行われるため。

短期では株も債券もインフレに弱いです。(期待)インフレ率が上がれば、株価も債券価格も下落しちゃいます。

なぜ、短期では株も債券もインフレに弱いのでしょうか?

それは、一言で言えばバリュエーション調整が行われるからです。現在とは違う未来の高いインフレ率に合わせるために株も債券も売られて、株式益回りと債券利回りを上昇させようとします。

インフレ率が2%なら国債利回り3%でもプラスリターンですよね。3%-2%で1%のリターンです。でも、インフレ率が5%に上がったら、国債利回り3%じゃ赤字になっちゃいますね。インフレ率が5%もある中で、利回り3%の国債を買う人はほとんどいません。だからインフレ率が上がると、それまでに発行された利率の低い国債は売られます。最終的にはインフレ率+αのリターンが得られる程度まで国債は売られます。こんな感じで、(期待)インフレ率が上がると債券が売られて債券投資家は損失を被ります。

同じロジックでインフレ率が上がると株も売られます。インフレ率が2%なら株式益回り5%(PER20倍)でも相応のリターンが期待できますが、インフレ率が5%に上がったら益回り5%では株はリスクに見合ったリターンを提供しているとは言えませんよね。インフレ率が上がると高いPER(低い益回り)は正当化されなくなります。(期待)インフレ率が上がると、高いインフレ率でも実質リターンが得られる水準まで株は売られます。

インフレ率が上がると株も債券も売られます。マーケットは常に未来を織り込むので実際にインフレ率が上昇するより前に、期待インフレ率が上昇した時点で反応します。期待インフレ率が上がると、株価も債券価格も短期的には下落します。

 

長期:債券はインフレに弱いけど株はインフレに強い

短期では株も債券もインフレに弱いことがわかりましたが、長期では耐性が違います。長期で見れば、債券は依然としてインフレに弱いままですが、株はインフレに強いです。

債券が長期でもインフレに負け続けるのは、債券のリターンが確定利息だからです。柔軟性がありません。クーポン年率2%の債券に投資して、その後不幸なことにインフレ率がグングン上昇してもその2%というクーポンは不変です。契約で決まった利息を貰い続けるのが債券ですよね。

債券投資による確定利息収入は、安定リターンというメリットがある一方で、リターンに柔軟性がないというデメリットがあります。債券に長期投資するのは「インフレ率に賭けることと同義だ」と言われることがあります。それは債券のクーポン利率は、将来インフレ率が変動してもそれに応じて変動しないからです。

 

株式が長期ではインフレに勝つのは、株式会社の利益がインフレに連動して増加するからです。企業の利益が増加すれば株式の価値も上がりますよね。株式のリターンは債券と違って確定していません。だからこそ、株式の方がリスクがあって期待リターンも高いです。

その業績変動リスクは悪いことばかりではありません。企業収益がインフレ率に応じて柔軟に変動するおかげで、株は長期ではインフレに負けない仕組みになっています。インフレ率の上昇に伴って徐々に企業収益の名目額も増えていき、それがきちんと株価に反映されます。また、より高い増配率が期待できます。

 

長期投資は株式がオススメです!

インフレ率が将来どうなるかなんて誰にもわかりません。景気循環が読めないこともありますが、何よりも中央銀行の金融政策が読めません。FRBは2%のインフレ目標を掲げているのでそれは目安にはなりますが、歴史を振り返れば金融政策の誤りでインフレ率が高騰したことは何度もあります。誰がFRB議長になるかによって、将来のインフレ率も変わるでしょう。

長期で債券を持つと大きな利益を得られるチャンスもあります。それは、思ったほどインフレ率が上がらなかった場合です。30年以上、債券の強気相場が続いていますがそれが今後も継続する可能性もゼロじゃないです。今の低いインフレ率が今後さらに下落する可能性もあるかもしれません。

しかし、それはもはや将来のインフレ率を巡ったギャンブル判断です。賭けに近いです。賭け事が悪いことだと言うつもりは全くありませんが、長期で債券を保有することの本質的な意味は理解した方がいいかなって思います。

株式はインフレに対して中立です。将来インフレ率が上がろうと下がろうと、実質的な株式リターンに影響はありません。ただし、日本の失われた20年のように過度な低インフレ(てかデフレ)になると経済がシュリンクするので、株式リターンが下がる恐れはあります。ただ、超優秀なFRBがそんな失策をする可能性は小さいので心配は不要だと思います。

あなたが投機ではなく投資をしたいなら、長期では債券よりも株式を選ぶことをオススメしますよ。