株式投資の利益には配当とキャピタルゲイン(含み益)の2種類があります。業績が安定している優良企業の配当は、サラリーマンの給料ほどではないですが、かなり確度の高い収入源になります。急な減配も稀にありますが、大抵は頑張って払ってくれます。一方でキャピタルゲインは相場次第です。コントロールできません。

株主として確定できる利益は配当のみです。キャピタルゲインは売却すれば確定利益ですが、ホールドを続けている限りは未実現です。税金も発生しません。今年得た+50%の含み益が、翌年すべて吹っ飛ぶことだってあり得ます。

普通は、企業が稼ぐ純利益>配当です。配当性向は100%未満ということ。配当性向とは純利益に占める配当の割合です。純利益100で配当が40なら配当性向は40%です。

配当に回さなかった資金は何に使われるのか、、
・現金として持っておく
・事業に再投資する
・借金を返済する
・自社株を買い戻す
・企業買収に使う
などが考えられます。

どの選択肢にするかは経営者の判断次第ですが、基本的には株主利益に貢献する使途を選んでくれるはずです。経営者は株主利益を代表する立場ですから。

100の利益のうち40は配当として株主に戻り、残りの60は上記のいずれかに使われるとします。その配当としてもらえない60の利益も株主利益に違いありません。問題はその60という利益が素直に株価に反映されるわけではないということです。

配当は実際に証券口座に入金されるわけだから確定利益です。配当されず企業内部に残る利益があれば、その分株価が上がって欲しいものですが、実際は株価はそんな単純には動きません。今年稼いだ利益よりも、来年以降の業績見通しやその他不確実要素(訴訟、景気など)を反映して株価は大きく上下します。

もう少しわかりやすい例で示しましょう。S&P500指数の益回りは6%で配当利回りは2%です。S&P500指数に100万円投資すれば6万円の(理論)利益が得られるわけですが、実際に入金があるのは配当の2万円だけです。じゃあ、残りの4万円はキャピタルゲインなのかと言えば、そうではありません。益回り6%で配当利回りが2%だから、差額の4%相当の株価上昇があるというわけではありませんよね。感覚的にもわかることだと思います。

配当として払われていない4%相当の留保利益は間違ないなく株主に帰属します。しかし、株主はその4%をすぐに回収する手段がありません。運よく株価が上昇していれば売却することで回収できますが、それは相場次第です。

このことから、株式には強制貯蓄効果があると言えます。さっきのS&P500指数の例で言うと、投資額の6%が株主利益なわけですが、うち株主の口座に入金されるのは2%だけです。残りの4%は我慢(強制貯蓄)です。我慢を続ければ、いずれは配当ないし株価上昇として表れます。なぜなら、長期的には必ず企業利益=株主利益だからです。無から有は生まれませんし、有が無になることもありません。

企業の利益のうち配当として還元されない利益を確定させるためには、長期的に株を保有する必要があります。具体的に何年と言えるわけではありませんが、最低でも10年は見ておきたいところです。

投機ではなく投資目的で株を買うなら、長期保有を前提しなくてはいけない理由がここにあります。長期で株を保有しないと、企業がビジネスで稼いだキャッシュが株主のものになりません。だから、株式について言えば「短期」投資というのはあり得ません。「長期」投資という言葉すら違和感があります。株式投資は常に長期である必要があります。株式投機なら短期でOKですが。

債券なら短期間でも投資と呼べますけどね。債券はデフォルトしない限り契約利息が確実に振り込まれます。配当性向が常に100%で一切増配しない株式みたいなもんです。債券は毎年毎年、全額利益が確定されます。利益を留保するという概念はありません。

株を長期で持っていると気が付いたら資産が増えているのは、この強制貯蓄効果があるからです。 この効果を存分に活かして、ぜひ株式の長期保有にチャレンジしてもらえればと思います。 株式の弱いところは(強いところとも言えるが)、いつでも簡単に売却できることです。でも、その誘惑に駆られて短期間で売ると損する可能性があります。なぜなら、企業が稼いだ利益の一部が配当にも株価にも反映されていないからです。