ジェレミー・シーゲル教授は当初はインデックス投資が最強だと思っていたと、書籍で言っています。
それは無理なからぬことです。
市場全体で見れば一定の利益を必ず出しているのだから、その市場全体に投資することで安定して市場平均のリターンを得ることができる。株式マーケットは機関投資家のものになっており個人投資家が他者を出し抜くのはほぼ不可能。
であれば、市場全体に投資して市場平均のリターンを得続ければよいという理屈はとても説得力があります。
私は20代前半のころ書籍でインデックス投資の存在とその実績を知ってとても興奮しました。
インデックス投資をすれば絶対に将来お金持ちになれるんだ!とワクワクして浮かれて当時の高揚感は今でも覚えています。
貧乏育ちの私はお金に余裕がある生活にとても憧れていました。
『ウォール街のランダムウォーカー』の著者バートンマルキールや『インデックスファンドの時代』の著者でバンガード創設者のジョン・C・ボーグルなど偉人がインデックスファンドを推奨するからなおさらです。
このインデックス投資の有効性は今でも健在です。シーゲル教授もポートフォリオの半分は世界市場へのインデック投資でよいと言っているくらいです。
一方で、シーゲル教授は名著『株式投資の未来』の中でS&P500(市場平均)を超えるリターンが期待できる投資法があることを膨大なデータ解析で明らかにしました。
それは、成熟した高配当優良企業の株を長期で保有して配当再投資を繰り返す投資法です。
高収益な企業から低収益な企業、大企業から中小企業まで十把一絡げに保有するインデックス投資も合理的な戦略なのですが、その中でも特に高収益で高配当な大企業のみに投資したほうがより高いリターンが期待できるというわけです。
平たく言えば、高収益の優良企業だけに絞って投資した方が金持ちになれるということです。
これってよくよく考えたら当然だと思いませんか!?
利益とは社会への付加価値
お金とは何でしょうか?
それは仕事をして社会のお役に立てたことに対する、社会からの「ありがとう」の気持ちです。綺麗ごとではなく本当にそういうものだと私は思っています。
もちろん頑張って仕事で稼いだ1万円札も、偶然道端で拾った1万円札も同じ経済的効用があるでしょうが、それは仕方ないこと。
あなたが社会から「ありがとう」の気持ちを受け取った事実、あなたが社会に価値を提供した事実は何らかの客観的証拠で示す必要があるからです。
そうでないと、「俺は確かに1万円分の価値を他人に提供したぞ!だから1万円分のステーキコースを準備しろ!」とか言えてしまうから。口達者が得をする世の中になってしまう。
社会に価値を提供した証としてお金を介す必要があるんです。
あなたが社会に価値を提供していなくても、運よく道端で1万円札を拾うことも人生で一度くらいあるかもしれませんが、それは別の誰かが社会に価値を提供して受け取った「ありがとう」なわけです。
誰も何も価値を生んでいないのにお金が落ちていることはあり得ません。国立印刷局から紙幣が盗まれた時くらいでしょう。
ところで、企業の売上高とは何でしょうか?
米国を代表する優良企業の一つであるマイクロソフト社の年間売上高は約900億ドル(9兆円)です。
売上高が9兆円あるとはどういうことか?
それはマイクロソフトが年間で9兆円の価値を社会に与えているということです。マイクロソフト社のエクセルやワード、パワーポイントのお世話になっている方も多いことでしょう。
マイクロソフト社の主な収益源はそれらソフトのライセンス収入です。
私のような内勤の方には特に分かりやすいはずですが、マイクロソフトが生んでいる社会価値ってもの凄いと実感しませんか!?
エクセルがなければ私は仕事になりません。エクセル等のOfficeソフトがあらゆる仕事の生産性をどれだけ上げていることか。
誰もが当たり前のように、アウトルックやエクセルを使用していることがマイクロソフトという企業の存在価値を証明しています。
そのマイクロソフト社が世界の社会に1年間で提供した価値を金額で表現すると9兆円になるのです。
企業の費用とは何でしょうか?
最終利益から単純に逆算で計算したマイクロソフト社の年間費用はざっくり言って700億ドル(7兆円)です。
この費用7兆円は何を示しているのか?
それはマイクロソフト社が(マイクロソフトの株主が)社会から提供を受けた価値を金額で示したものです。
マイクロソフトと言えども無から9兆円の価値(売上高)を生み出すことはできないのです。社会から7兆円分の資源を調達しての売上高だということです。
その7兆円の費用とは、従業員への給料、建物の賃借料、国家への税金、ライセンスフィーなど様々です。
マイクロソフト社が1年間で社会から提供を受けた経済価値が7兆円です。
で、企業の利益とは何でしょうか?
米国であれば10Kレポートを見ればあるいはモーニングスターのサイトを見れば、企業の利益がいくらだったかその金額を確認できます。
決算書を見れば、そこに並ぶ無機質な数字の羅列をあなたも見ることができるでしょう。
そして、ずっと見続けていると眠くなるでしょう(笑)。
その無機質に並ぶ数字の裏には膨大な企業活動があって、その一つ一つの企業活動がたくさんの仕訳になって最終的に決算書に集約されているわけです。
企業の利益は、すごく簡単に言えば「売上高 ー 費用」ですね。
売上高=社会に提供できた価値
費用=社会から提供を受けた価値
です。
ということは、企業の利益とは社会の助けを借りずに自らの力で社会に価値を提供できた分を金額で表したものだと言えます。
いくら頑張って売上高を10兆円まで伸ばしても、その為に11兆円の社会資源を消費してしまってはダメなわけです。赤字とはそういうことです。
売上高が10兆円あるということは10兆円相当の価値を他人に提供できて素晴らしいことだと言えるのですが、そのために別の誰かから11兆円もの価値を貰っていてはビジネスとしては失格です。
企業の利益とは、自らの力で社会に価値を提供できた経済的価値です。
利益が多いとは、それだけ社会に価値を提供できている証です。
マイクロソフト社は粗利率約70%!、営業利益率約30%!、純利益率約20%の超高収益企業です。多くの米国優良企業の数字を見てきましたが、マイクロソフト社の収益性はその中でもトップクラスです。
そのマイクロソフト社のPLを見て「こいつらボロ儲けし過ぎだろ!ふざけんな!」って思うのは心が卑屈というか、世間知らずです。
そんな世間知らず君も知らず知らずのうちにマイクロソフト社から恩恵を受けているのではないでしょうか。
高収益ということは、それだけ高い付加価値を社会に提供できているということであり、社会から強く必要とされているということであり、世の中の人々の生活になくてはならない製品やサービスを提供しているといことであり、世の中の生活水準を向上させているということです。
継続して高収益を上げているトラックレコードのある優良企業は、それだけ社会に価値を提供しているのです。
当然の帰結
世の中にフリーランチはありません。
社会の誰の生活にも貢献していないのに、お金を継続して稼げることはあり得ません。厳しいかもしれませんが、社会から必要とされていない企業は市場で淘汰されるだけです。
詐欺行為で一時的にお金をゲットできても、その行為にサスティナビリティはありません。
社会に価値を生んでいないのにお金を稼げないのとは逆に、社会に価値を提供できているのに相応の対価を貰えないこともないのです。
社会に価値を提供し続けていれば、必ずその人の手元にはその価値を提供した証としての「お金」が舞い込むことになるのです。嫌でもお金を手に入れることになるのです。それが資本主義のルールだからです。
だから、シーゲル教授が言っていることは普通のことであり、極めて説得力があると私は思うのです。
高収益な優良企業の株を保有し続けるということは、社会に高い価値を提供し続けるということです。
優良企業の株を保有し続ければ、億万長者に”なってしまう”のは当然の帰結です。
社会に強く必要とされてる優良企業の株を保有し続ければ、120%お金持ちになれるわけです。
深く考えずに、利益率の高い株主還元をしっかり継続しているブルーチップを保有し続ければいいのです。
そういう原理原則を考えれば、長期保有は日本株ではなく米国株にすべき理由も見えてくるはずです。
優良米国株を長期保有することで億万長者を目指す私の投資戦略の合理性が理解できるはずです。
買値は常に大切
ただし、たとえ社会に高付加価値を提供している超優良企業の株を買うにしても、やはり買値は常に重要です。
なぜ買値が重要か?
え、そんなの当然?
割高な価格で買えば株式投資では損をするなんて、素人でもわかりますよって。
うん、そりゃそうなんですけどね。
バブル崩壊直前などに優良株を高値掴みしてしまって損をした人も、その企業の株を保有し続けてリスクを取り続けるということは社会に貢献している行為だと私は思います。
社会に貢献した人は相応の対価を得る権利があるはずなのに、高値掴みをしてしまった人は優良企業株であっても下手したら10年くらい元を取れないかもしれない。社会に価値を提供したのにその対価を受け取れないという資本主義に反することが投資では起こり得ます。
でもそれは仕方ない。なぜなら、それは投資家間の富の移転だからです。
株を本源的価値より高く売り抜けることができた投資家Aは、株式保有で社会に提供してきた価値以上の金銭的対価を得ることができる。逆に、株を本源的価値より高い値段で買ってしまった投資家Bは株式保有で社会に提供する価値未満の金銭的対価しか得ることができない。
投資家Aと投資家Bの利益を合算すれば、トントンなわけです。資本家全体で見れば獲得した富というのは投資先企業が稼いだ利益額と一致するはずです。
でも投資家Aと投資家Bは別に家族でも何でもない他人同士なんだから、やっぱり投資家Bにはなりたくないですよね。だから、あなたは投資家Aになれなくても、せめて投資家Bにはならないよう細心の注意を払う必要があります。
買値は常に重要です。
株式という金融商品は本源的価値(将来配当の割引現在価値)を算定するのがとても困難で、アナリストや投資家によって考えは千差万別です。
その時のマクロ経済環境によるので一概には言えませんが、例えば超優良企業の株であってもPERが30~40倍を超えていれば危ないと警戒すべきです。過去配当利回りが継続して3%以上あったのに、株価が上昇を続けて配当利回りが2%台前半になったら警戒すべきです。
高値で株を買ったとしても株式投資という名のビジネスを通じて社会の利益に貢献していることは間違いないのですが、高値で買った分その利益は株の売り手に移転してしまうのです。
株式投資をして社会に貢献している!という満足感を得たいだけの方は、どうぞニフティフィフティのような状況でも好きなだけ株を買ってください。
株式投資をする目的が自分がお金持ちになって経済的自由を得たいからだ!という方は、常にバリュエーションには気を付けて慎重に優良企業の株を買うべきです。
「投資家間の富の移転」とは「フィナンシャルリテラシーがない者からフィナンシャルリテラシーがある者への移転」ですね。
Hiroさんのブログ記事を繰り返し読んでいるうちに、こんな私でも少しずつフィナンシャルリテラシーが高くなっていっている気がします(笑)
よくHiroさんが例で上げているジョンソン&ジョンソンの右肩上がりの株価の推移のように、今の時点では割高だが、将来のある時点から見れば割安状態になるので、そういう企業であればドルコスト平均法で積み立てでよいのかなと思います。
(もちろん買う時点であまりに過熱状態の時は落ち着いてから買う)
そういう「右肩上がり」ということで「米国株」なのですね。
以前はバフェットが暴落で株を大量に買うということを見習って、暴落で安くなるのを待っていたら株価がどんどん上がって買えないことがありました。
もちろんマーケットが悲観的な時に購入するのが高いリターンを生むとは思いますが、米国株のように右肩上がりであればさほどこだわらなくてもいいのかなと思っています。
現にトランプラリーで上昇している中でもバフェットが株式を大量に購入しているみたいですね。(アップル株かな?)
でも定期的に購入する日が暴落日であれば嬉しいですよね。
>「フィナンシャルリテラシーがない者からフィナンシャルリテラシーがある者への移転」
それはおっしゃるとおりですね。
厳しいかもしれませんが、情報弱者がカモられるのが資本主義社会です。
先ずは資本主義社会のルールを理解して、各人が競争しればいいだけです。
特に日本では、資本主義のルールを知るだけでもうアドバンテージありです。
大多数が理解できていないからです。
別に他者と比べることが正しいわけではないですし、人生勝ち負けで測るものでは決してありませんが、敢えて言いますがちょっと勉強すれば勝てる土壌がありますね。
>Hiroさんのブログ記事を繰り返し読んでいるうちに、こんな私でも少しずつフィナンシャルリテラシーが高くなっていっている気がします(笑)
そう言って頂けて大変光栄です。
チェルシーさんは、企業価値調査で会社に問い合わせをされるくらいですから、その時点ですでにファイナンシャルリテラシーは高いと思いました!
あれは驚きました。
おっしゃるとおり、いつか暴落が来るかもって思って資金を待機しておいても結局株価が上がっていくのが米国株ですよね。
ディフェンシブ株はどうせ良いか悪いか暴落でもそんなに下落しないわけですし、コツコツ日々買い増すしかないと思いますね。
そういう意味で米国株投資はサラリーマンに最適だと思います。
いつも思うのですが、早いうちに米国株投資に気付くか気付かないかで30年後の経済力は雲泥の差です。
そりゃそうですよね、労働者だけでいくよりも資本家の立場になった方が資本主義社会では有利に決まっています。
バフェット驚きました。
アップル株ですね。
それにしても2016年のバークシャーのアップル株購入は底値買いでした。お見事。
>でも定期的に購入する日が暴落日であれば嬉しいですよね。
それは都合が良すぎかもしれませんww。
私もそう願いますが。