せっかく都内に住んでるわけだしと新宿、渋谷、東京駅辺りに出かけることも多いです。それはそれで楽しいのですが、やっぱカフェでゆっくり読書が一番幸せです。

人から勧められた本は大体買ってますが、最近はNewsPicksで紹介された本を毎週買っている状態です。見事にマーケティング戦略に嵌っていますw。

この土日はNewsPicksで紹介されていたこの本を読んでました。

著者の長沼氏は早稲田の応用物理学科出身で要は理系の方です。バリバリ理系専門の方が書いた経済書というところが面白かったです。

長沼氏は現在の一部のハイテク大手が富を独占する状態を「縮退」と定義し、社会的には劣化だと警鐘を鳴らします。人々が短期的な欲望を追求し過ぎているあまり、長期的な人間としての目的を軽視していると。

その理論が正しいかどうかは置いておくとして、そう結論付ける背景、ロジックが独特だなと思いました。詳細は省きますが、天文学や物理学と紐づけているんですね。

こういう本を読んでいつも思うのは、同じ世界でも人によって見え方は千差万別だなということです。視点があまりに違います。視点が高い低いではなく、見ている方角が全く違う感じ。上から見るのか下から見るのか。あるいは右か左か。

長沼氏が経済を見る視点は、文系の知識しかない私とは明らかに異なります。今のDX時代の経済を見ていても、それを物理学と紐づけて考えることは私にはできません。なぜなら、その分野の専門知識がないからです。

複数の専門性を持つメリットがここなのかなと思います。人とは違う視点を持てる。それがビジネスに繋がることもあるし、単純に思考の幅が広がって楽しそうだなと感じます。

全くの異分野の専門知を深めるってハードルが高いんですよね。とっつきにくいし、短期的な報酬がないから。会計職なら簿記の勉強は当然ですが、幅を広げるとしてもファイナンスや経営理論とかになりがち。天文学の勉強をしようとはなかなか思わないです。

「知の探索」と「知の深化」という経営理論として確立している概念があります。

前者が未知の領域の知識獲得で、経理マンが物理学を勉強するようなもの。後者が既に持っている知識の専門性を深めることで、経理マンが簿記1級を取るようなものでしょうか。

組織も個人も「知の探索」には積極的になれず、どうしても「知の深化」に偏りがちです。それは感覚としてわかりますよね。新しい領域に足を踏み入れるのは精神的なコストが高いです。企業経営としては短期的な金銭コストも発生します。

ふらっと書店に行くとだいたい投資本に目が行きます。他に行くとしてもせいぜい経済系のコーナーくらいですかね。あとは新書が好きで、そこでは色んなジャンルの本を目にします。ただ、薄い新書を読んだくらいでは専門性は身に着かないです。新たな視点を手に入れるのは無理。

「知の探索」という困難な事業を成し遂げた人にしか見えない世界があるんだなあと感じました。理系専門家が書いた経済解説書というのは珍しいです。面白かったです。良い休日を過ごせました。

現代経済学の直観的方法