高配当企業には二つのタイプがあります。
①利益の大半をがんばって配当に回して高配当を実現している企業
②利益の一部から余裕を持って配当を出しているが、株安によって高配当になっている企業

100の利益のうち80を配当に回していれば①と言えるし、20なら②と言えるでしょう。要は配当性向が高い企業が①、低い企業が②という事です。 ①と②を区分する明確な境界線はありません。そこはこの記事の主眼ではありません。

配当性向とは税引き後利益と配当の割合を示したものです。配当性向=配当 / 税引き後利益です。単純な話です。税引き後利益が100で配当が80なら配当性向は80%です。

この配当性向を確認するには、自分で配当/税引き後利益を計算して算出するのもいいし、外部サイトの公表データを見るのでも構わないです。たとえば、Dividend.comで銘柄を検索すれば配当性向(Payout Ratio)が表示されます。以下はアップルを検索した時の画面です。配当性向は25.9%とわかります。

配当利回りと益回りから配当性向を計算できる

便利な時代ですから、配当性向はこうやって外部サイトでチェックするのは一番手っ取り早いです。が、この記事では別に見方を紹介します。私が普段、配当性向を確認している方法を紹介します。きっと役に立つと思うので、参考になれば嬉しいです。

私は以下のように配当性向を見ることが多いです。
・配当利回りをチェック

・益回り(PER)をチェック

配当利回りと益回りの比率から配当性向を計算

配当利回り / 益回り=配当性向となります。

一応、算数として説明しておきます。

配当金 / 税引き後利益=配当性向
ですね。一般的な配当性向の算出式です。

これを一株当たりに直すと
DPS / EPS=配当性向
です。

これを利回りに直すと
配当利回り / 益回り=配当性向
となります。

まあ、要は税引き後利益と配当の関係を見ればいいわけです。それは一株当たりで見ても同じですし、一株当たりを利回りに直しても結果は同じです。

と、数式だけ見てもイメージが湧ないと思うので実例を見ていきましょう。以下は2019年末時点のNYダウ銘柄の配当利回りです。利回りが高い順に並べています。

ティッカー 銘柄名称 配当利回り
DOW ダウ 5.2%
XOM エクソン・モービル 5.0%
IBM IBM 4.8%
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 4.0%
CVX シェブロン 3.9%
PFE ファイザー 3.4%
MMM スリー・エム 3.2%
WBA ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス 3.0%
CSCO シスコシステムズ 3.0%
KO コカ・コーラ 2.8%
CAT キャタピラー 2.8%
MRK メルク 2.7%
JNJ ジョンソン&ジョンソン 2.7%
JPM JPモルガン・チェース 2.6%
MCD マクドナルド 2.5%
HD ホームデポ 2.5%
BA ボーイング 2.5%
TRV トラベラーズ 2.4%
PG プロクター&ギャンブル 2.4%
INTC インテル 2.2%
GS ゴールドマン・サックス 2.2%
UTX ユナイテッドテクノロジーズ 2.0%
WMT ウォルマート 1.8%
UNH ユナイテッド・ヘルス・グループ 1.5%
AXP アメリカ・エキスプレス 1.4%
MSFT マイクロソフト 1.3%
DIS ウォルトディズニー 1.2%
AAPL アップル 1.1%
NKE ナイキ 1.0%
V ビザ 0.7%

次に益回りを横に並べて配当性向を出します。

ティッカー ①配当利回り ②益回り 配当性向(①/②)
DOW 5.2% 7.6% 68%
XOM 5.0% 5.1% 97%
IBM 4.8% 9.9% 48%
VZ 4.0% 8.0% 50%
CVX 3.9% 5.8% 67%
PFE 3.4% 7.0% 48%
MMM 3.2% 5.5% 59%
WBA 3.0% 10.4% 29%
CSCO 3.0% 7.1% 42%
KO 2.8% 4.1% 69%
CAT 2.8% 7.3% 39%
MRK 2.7% 6.2% 44%
JNJ 2.7% 6.2% 43%
JPM 2.6% 7.6% 34%
MCD 2.5% 4.3% 59%
HD 2.5% 4.9% 52%
BA 2.5% 5.6% 44%
TRV 2.4% 7.9% 30%
PG 2.4% 4.2% 57%
INTC 2.2% 7.4% 30%
GS 2.2% 10.5% 21%
UTX 2.0% 5.8% 34%
WMT 1.8% 4.4% 40%
UNH 1.5% 5.6% 27%
AXP 1.4% 7.2% 19%
MSFT 1.3% 3.8% 34%
DIS 1.2% 4.3% 28%
AAPL 1.1% 5.1% 22%
NKE 1.0% 3.4% 28%
V 0.7% 3.8% 17%

こんな感じです。

たとえば、下から3番目のアップル(AAPL)を見てください。配当利回り1.1%で益回りが5.1%(PER19.8倍)で、そこから配当性向は22%と算出できます(1.1 / 5.1)。Dividend.comで表示されている25%と若干異なりますが、22%という計算は2020年予想ベースで計算されているからです。むしろ、こっちの方が有益な情報です。

配当性向をチェックする機会は少ないからこそ

なんで、わざわざこんな面倒な方法で配当性向を計算するのか?

それは、配当性向を単独で見る機会はあまりないからです。そう思いませんか。「マイクロソフトの配当利回りは何%だろうか?」って思うことはあっても、「マイクロソフトの配当性向は何%だろうか?」って思うことは少ないと思います。

キャッシュインに直結する配当利回りを気にすることは多いと思います。無配でなければ、個別株に投資する時は配当利回りは見ますよね。んで、PERも確認するかと思います。配当利回りでバリュエーションを測定するのは非合理です。株の値ごろ感はPER(益回り)で見るべきです。

つまり、個別株に投資をする時に普通は配当利回りと益回りは確認するから、その2つの指標から配当性向をついでに計算すればいいんじゃないかってことです。ついで、です。

配当性向って知っておく価値があると思うんです。ある銘柄が高配当であっても、それが高い配当性向によるものなのか(①パターン)、それとも配当性向は低いけど株価が安くて高配当になっているのか(②パターン)の2つは区分しておいた方が良いです。

一般的に言って①は「割安株」とは言えません。①は具体的にはコカ・コーラが挙げられます。配当性向は70%近いです。ただ①タイプには魅力もあります。ギリギリで配当を出しているから、経営者が資本を無駄遣いするリスクが低いです。ちょっと無駄な投資をしちゃうだけで減配の危機に陥ってしまうからです。米国企業の経営者、株主は減配を嫌います。私も嫌です。

一石二鳥的な発想で、配当利回りとPER(益回り)をチェックしたら、ついでに配当性向をさくっと計算してみてください。その癖を付けるだけで、意識しなくてもウォッチ銘柄の配当性向が頭に入りますよ。

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