1999年後半、小売り最大手ウォルマート(WMT)のPERは60倍を超えており、一体誰がこんな高値で取引しているんだと不思議に思うくらい割高な株価でした。配当利回りは0.5%を下回っている時もありました。
案の定、1999年からのWMTの株価推移は鈍いです。2000年代に入るとITバブル崩壊と歩を合わせるように暴落し、そこから10年以上株価は35ドル~50ドルをウロチョロしてました(1999年末の高値は53ドルほど)。
1999年~2009年の10年間のWMTの株価推移。赤丸が1999年末の高値。
ウォルマートの株価が1999年末の高値を超えるには2012年まで待たねばなりませんでした。その頃には配当利回りも2%台とS&P500平均を超える水準になっていました。そこから途中上げ下げはあるものの、株価は上昇基調で2018年初には一時100ドルを超えました。現在(2018年7月3日)は84ドルで利回りは2.5%。
このウォルマートの話から教訓として学べることの一つは、買い値は常に大事ということです。いくらブルーチップとは言え、PER60倍で投資してしまえば10年間配当込みでもほとんどリターンはありませんでした。謙虚な姿勢を忘れずに、きちんとバリュエーションを確認することの重要性を教えてくれます。
もう一つ、このウォルマートの話から示唆をもらえることがあります。それは、きちんと優良株を選別しておけば万が一割高なタイミングで投資してしまっても、20年以上の長期間保有すればリターンはプラスに戻るということです。たとえPER60倍という超割高なタイミングでウォルマートに投資してしまっても、10年あれば損益はトントンだし、20年あれば余裕でプラスリターンになったのです。
さすがにS&P500平均のリターンを超えるまでには至っていないでしょうが、それでもリターンがプラスになるところまで戻って来れるのは並大抵なことではありません。PER60倍ってことは、益回りは1.7%しかありません。アマゾンやネットフリックスのような成長企業ならまだしも、1962年創業の世界最大のスーパーマーケットのバリュエーションとしては異常な高水準です。そんな高PERな小売り株に投資しても、長期で持てば株主は損失を取り戻し、さらにプラ転まで持っていけたのです。
長期で持てば回復するというのは、どの銘柄でも共通で言えることではありません。株式は長期で持てば報われるとしばしば言われますが、それは一部の優良銘柄や、優良銘柄が集まったS&P500やNYダウなどの優良指数に限られます。時間が味方になるのは優良株だけです。株主利益を平気でぶち壊すような企業の株主にとって時間はむしろ敵です。
ウォルマートは優良株なわけです。何を以って優良かと言っているかといえば、異常な高値だった1999年も含め、常に利益を上げ続け、そしてその利益を株主に還元し続けてきたことです。ウォルマートの過去30年の損益計算書、キャッシュフロー計算書を見たわけではありません。そこまで過去の財務データを取るのは難しいです。
財務諸表が見れなくても、ウォルマートが営業キャッシュを稼ぎ続けてきたことは明らかです。なぜなら、ウォルマートは連続増配年数が43年にもなるからです。利益なくして配当はありません。その場凌ぎなら、銀行から借金して配当を維持することもできますが、継続して43年も配当を増やし続けてきたということは、きちんと利益を出し続けてきたことの証です。
現金(配当)がすべてを物語ります。キャッシュを株主に見せることが最大のコーポレートガバナンスです。
別に連続増配数が長い企業=優良銘柄と一概に言えるわけではないかもしれません。連続増配企業に投資すればそれで万事OKと言うつもりはありません。しかし、40年50年と増配を続けてこれたということは、過去のリセッションや金融危機を跳ねのけて稼ぎ続けることができたという意味で、一定の信頼を示すベンチマークにはなります。
投資して、すぐに株価が下がっちゃうって投資家”あるある”ですよね。株価変動による含み損益に一喜一憂してしまうのは感情ある人間として自然なことです。
ただ、目先の株価変動に神経質になっても仕方ありません。株価はマーケットが決めることですし。それよりも、優良銘柄をきちんと選別することに神経質になった方がきっと将来報われます。世間で話題になっているイノベーティブなテクノロジーに目を奪われることなく、冷静に過去の財務データと配当実績を確認しましょう。目先の配当利回りの高さに誘惑されないようにしましょう(これは自分自身への戒めでもある・・、私は高配当好きなので)。
日々の株価変動が気になるにはわかる。わかるけど、きちんと優良銘柄さえ選んでおけば大丈夫大丈夫って言いたいです。世の中に絶対はありませんから、優良株に長期投資しても絶対儲かるとは言えません。言えないけど、言いたいですw、ちゃんと優良株を選別して分散投資もして長期保有できれば必ずや将来、大きな投資リターンで報われますよ。そう思いますよ。そう信じて、私はこれからも優良企業への長期投資を続けます。
当時は、WMTが何ゆえにPER60倍と思ってました。PER60倍だと、その当時の利益の60年分の価値で株式を購入する訳だから、「少なくとも今後毎年2桁の増益または売り上げが予想されているのか」と思ってました。
記憶が定かではないですが、当時のドットコムのブームで、ウォルマートがインターネット進出すれば、PER60倍の増益基調を望めるストーリだったのかもしれません。
72投資家さんは1990年末から株式投資をされていると以前仰っていましたね。
実際にハイテクバブル時の株式マーケットと対峙されていた方の生のご意見、とても参考になります。
やはり「WMTが何ゆえにPER60倍」と思われていたのですね。
それでもPER60倍でも妥当だと思われていたストーリーがあって、それを投資家が信じていたのか。
もしくは、いつかはじけるとわかった上で上昇相場に乗っかりたい投機家がわんさかいたのか。
どちらか今となってはわかりませんが。
一つ言えることは、どんな優良企業であれすでに配当を出している企業(ノンシクリカル銘柄)でPER60倍は割高だということです。
淡い夢物語はそう簡単に実現するもんじゃありません。
>当時のドットコムのブームで、ウォルマートがインターネット進出すれば、PER60倍の増益基調を望めるストーリだったのかもしれません。
なるほど、マーケットは20年も先を行ってたのですね。
アマゾンに対抗するため最近ようやくネット通販に力を入れているところですから。
今日の記事は中々興味深いタイトルでした。読んでて思ったのは以下の5点。
1.買い値は大事かもだが、割安かどうかの判断は難しい
2.優良企業かどうかの判別も、ぶっちゃけ難しい
3.仮に優良企業を判別しても、割高であれば10年持ち続けてトントン、20年以上でようやくプラ転
4.多くの人はそんなに気が長くない(早く金持ちになりたい)
5.何より個人投資家は銘柄変更を好むw
であるからこそ、やはり凡人はバフェットの言う通り、9割をインデックスに投資するのがド安定なんでしょうね……。
>2.優良企業かどうかの判別も、ぶっちゃけ難しい
そうぶっちゃけ難しいですよね。同感です。
過去の財務データや配当実績を見れば、これまでの活躍っぷりは確かにわかりますが、それが未来永劫続く保証はありません。
永久にキャッシュを生み続けるように見えるビジネスモデルであっても、外部環境が変われば衰退する可能性もあります。
特にこれからはより一層技術の進展が早いですから。
必ずしも一つの銘柄を無思考に保有し続けることが正しいわけじゃないし、ビジネスモデルが持続不能と判断すれば売却することも必要です。
ただ、過去何十年と繁栄してきた銘柄を売却するのはそう簡単にできそうにもありません。
個人投資家は衰退銘柄を保有し続けてしまうリスクもあって、その点ETFは安心です。
>5.何より個人投資家は銘柄変更を好むw
これはありますね。
個別銘柄を色々と調べるのは楽しいし、米国の優良企業は調べれば調べるほど魅力を感じて投資したくなりますから。