リスクという言葉は色んな意味で解釈をされます。一番わかりやすいなと思うのが、ハワード・マークス氏の説明です。
私に言わせると、リスクとは何よりも、取り返しのつかない損失を被る可能性である。
ハワード・マークス
わかりやすい。まあそうですよね。誰だって投資で損はしたくない。リスクとは大きな損失を被る可能性という解釈はしっくりきます。
株のリスクとは株価ボラティリティ(株価変動)と言われることもありますが、それは違うかなって思います。
ボラティリティはリスクの下位概念です。リスクが上位概念。ボラティリティを下げることは、リスクを下げるための一つの手段でしかありません。あくまでも目的はリスクを下げること。
こんなイメージを持っています。
最終目的はリスクを下げること。その手段として大きく二つあると思ってて、ボラティリティを下げることと、保有銘柄に対する理解を深めることです。
さらにそこから具体的に考えてみると、ボラティリティを下げるためには銘柄分散、セクター分散、ETFの活用などがあるかなと思います。保有銘柄の理解を深めるには、読書、経験、他の投資家から教わるなどが挙げられます。他にもあるかもしれませんが、ざっくりこんなイメージ。
どういう手段でリスクを下げるのか、これは人それぞれです。答えはありません。結果としてうまくリスクが下がればいいのであって、その手段は「ボラティリティを下げる」と「保有銘柄の理解を深める」のどちらでもOKです。他にも手段があるかもしれませんが、私はこの2つがメインだと考えています。
バフェットは「分散投資は無知な投資家がやることだ」という主旨の発言をしています。自分が確信を持てる銘柄に集中投資した方がリスクは下がると言っています。つまり、バフェットにとっては、ボラティリティを下げるよりも保有銘柄に対する理解を深めることの方がリスクを下げる上で有効ということです。
ジョン・メイナード・ケインズもバフェットと似た考えを持っていました。確信を持って保有できる少数の銘柄に集中投資すべき、というのがケインズの考えでした。
バフェットのような投資界の偉人たちの考えを知って思うことは、「僕はあなたのような投資の天才じゃない。投資にそんな時間をかけることもできない。」ってことです。
バフェット流のリスクの下げ方を真似する必要なんてないと思います。てか真似できない。
アニュアルレポートを何年分も読み込んで、経営者と会話してビジネスの内容をしっかり理解する。そうやって99%確信を持てた企業にのみ投資する。限られた少数の銘柄に集中投資する。そういうバフェット流のリスクの下げ方は、私のような普通の個人投資家にとって現実的じゃないです。
だって、、アニュアルレポートを過去10年分も読みたくないです(そんなの眠いしだるい)。米国企業のビジネスを日本に住んでいる自分が理解するのは限界があるし、ましてや経営者と話なんてできるはずもない。たとえ、投資先企業について時間かけて勉強したところで、将来が99%見通せるようになれるとはとても思えません。
「保有銘柄の理解を深める」という手段を用いてリスクを下げるのは無理だと判断しました。そんな能力もなければ、時間もない。平日は仕事しているわけだし。あと会計業界にいる私ですら、企業の年次報告書を読むのは正直言ってだるいです。投資本みたくワクワクしながら読めません。
「保有銘柄の理解を深める」ことでリスクを下げるというのは、僕にとっては限界があります。せいぜい、過去の財務データを見る、配当実績を見る、ビジネス内容を最低限理解する、日常生活で馴染みのある企業に投資するといった対策ができるくらいです。この程度で保有銘柄に対するリスク認識はそんなに下がりません。
だから、僕は銘柄分散、セクター分散、ETFの活用といった対策が必須なんです。そうやってボラティリティを下げることでしか自分のリスク認識を下げることができません。バフェットが言うところの「無知な投資家」なんです、私は。
自分が無知であることを認めて、分散投資するしかない。自信過剰になって特定銘柄に集中投資しちゃったら、いつか痛い目にあうだろうと思います。先日、セクター分散なんて不要かもなんて記事にしましたが、やっぱり最低限のセクター分散は必要かな。全銘柄を生活必需品セクターにはしません。
というわけで、
・銘柄分散
・セクター分散
・ETFの活用
の3つを使ってポートフォリオのボラティリティを下げます。そうやって、ポートフォリオに対するリスク認識を下げるしかない。他に手段がない。
自分が投資している企業についての勉強もしますが、メチャクチャ深く理解するのは多分難しい。少なくとも今の自分には厳しい。
世の中には、分散投資をせずに自信を持って長期運用できる人もいます。バフェットのような。でも人は人、自分は自分。無理して投資の偉人たちの真似をする必要なんてないと思います。
ちょっと勉強したくらいで全部わかった気になって、特定の銘柄に集中投資するのは危険な気がする。自分が思っているほど銘柄に対するリスク認識は下がっていない可能性があります。それが試されるのが、リーマンショックの時のような大暴落です。危機が訪れてから慌てても遅いです。
あと、現代はETFなんていう素晴らしい投資ツールもあります。ETFは心穏やかにマーケットに居続けるための手段としてかなり効果的です。ETFを使えば手軽に分散投資できます。わずかなコストしか掛からないのに、リスクを下げる効果は絶大です。
銘柄分析を通じてリスクを下げるのには限界を感じています。楽しいけどね。そう銘柄分析は楽しいんです。もはや企業のビジネスを理解して、それで自分のリスク認識が大きく下がるとは期待していません。投資を通じて世の中のことが少しでも分かるようになるのが楽しい。だから、企業分析は続けます。でも、それは趣味としてやるだけで投資効率の追求のためにやるわけではないかな。
そんなわけで、僕は分散投資を徹底します。
分散投資はフリーランチですから、やらない手はないですね。
銘柄分散はまだしも、セクター分散って意外と難しいですよね。
情報工学科卒なので、どうしてもよく知っているテクノロジーセクターがPFの大部分を占めてしまいます。
テクノロジーセクターとの相関係数の低い公共セクターの銘柄も持とうとは思うのですが、あまりにも馴染みが無く、逆に(自分にとっての)リスクが高まるような気がして持てずにいます。
せいぜい、テクノロジーセクター以外の銘柄で持てるのは、WMT・JNJ・MCD(・HDV)ぐらいです。
分散投資はフリーランチ。
中でも、S&P500は最強のフリーランチだと思います。
高級ステーキをタダで食べる感じです。
よく知ってるセクター内で分散投資するってとても効率的な戦略だと私は思います。
「ボラティリティを下げる」と「保有銘柄の理解を深める」を同時に実践できるからです。
私は詳しい業界があまりないがために、生活必需品セクターを中心に組まざるを得ないところがあります。
テクノロジーに詳しいというのは大きな強みだと思います。
テクノロジーセクターの比率が上がっても問題ない気がします。
ある程度はセクター分散があった方がいいとは思いますが。
公益セクターが馴染みが薄いのはおっしゃる通りで、それはどうしようもないですよね。
米国内に電力供給している会社を日本に住んでいる我々が知れるはずもないですし。
ただ電力供給というビジネスは日米で大きく変わるわけではないので、そこは理解しやすい点かもしれません。
面白いですね。HiroさんのBrain Dumpを読ませていただいた気がします。
私はHiroさんほど頑張りと情熱を持ってって投資の勉強をしていませんが、お金の勉強は常にしております。
その中で想うのが、数学的な意味での最大化と最小化をちゃんと理解すると、かなりの確率でリスクはおさえられるということです。
かなり抽象的な表現ですが、これが何を言っているのかを理解すると、また別の世界が見えてくると思います。
数学、統計学大切ですよ。これらの知識あると金融市場をまた違う角度で見れます。
ありがとうございます。
すごくタイムリーなコメントで心に刺さります。
というのも、最近タレブの『まぐれ』を再読し確率分布を把握することの重要性を改めて理解したからです。
確率大事ですね。学生時代の勉強が浅いところなので、時間とってじっくり勉強しようか悩んでいます。勉強する価値はあると思います。
最近ハワード・マークスが新著を出しているのですが、その中でも確率思考の重要性を訴えています。
人は自分が思っているほど確率を理解していないです。もちろん私も。
余談ですが厳密にいうと、確率と統計学は別物です。よく同列や同語で扱われたりしますが。
それは置いておいて、事象って大抵は動的(Dynamic)なのです。でも統計学や確率的な思考を持ってないとどうしても静的(Static)な物事のとらえ方しかできないのですよね。
そんな人ばかりの日本でAIは本当に浸透するのでしょうか?と思ったりします。
数学や統計学、楽しいですよ。もしご興味があればちょいかじりからでも。
ハワード・マークスさんが、短期的なサイクルに注目ばかりしないで、長期的なサイクルに目を向けることの重要性を本で語っています。
そのためには確率的な思考が欠かせないのでしょう。
将来起こり得る事象を確率分布で把握できて始めて、物事を動的に捉えることができる気がします。
確率を知らなくても直感で考えることもできますが、それは誤った考えに繋がります。
やっかいなのは、本人は間違っていると気が付きにくい点です。なんせ確率分布はイメージしづらいものですから。
だから勉強する価値があると思います。
こうやってコメント交換しながら自分の中でも言いたいことが整理できました。
動的というとちょっと抽象的過ぎでしたね。Hiroさんが言うところの分布という表現の方がしっくりきますね。事象によって分布の形は違いますが、まあ日常生活の事象なんぞは正規分布なんだなーと思って物事をみると面白いですよ。あと、動的というニュアンスには時系列という要素も考える必要があるという意味もありました。時は常に流れてますので。
「動的」という表現は時系列という意味で解釈していました。
もっと抽象的な意味合いがあったんですね。
将来起こり得る事象の確率分布を把握できれば、金融投資では有利に立てるんだろうなと思います。
投資の世界では往々にして正規分布になることがないのに、あたかも正規分布であるとマーケットは理解しがちでそこに富の源泉があるのかもしれません。
特に怖いのが数千分の1の確率で起こる異常な事象です。
そういうテールリスクに賭け続けるヘッジファンドもあるそうです。
確かに日常生活では正規分布な事象が多そうです。
いつもブログを拝見している同じ87年生まれの者です。
まだ投資を始めて2年ほどですがほとんどの個人投資家は理解してるつもりの無知な投資家なんじゃないかと思っています。
もちろん自分自身も無知な投資家です。
その中でも自分の生活に密着した商品などを販売してる企業(JNJ,
KO,PM,KHC,)などに分散投資することでリスクを抑えてるつもりでいます。
企業の未来なんてその業界に通じてる人でもわからないので自分の精神状態を保てるかどうかだけが重要なんじゃないかと考えています。
毎週行くスーパー、薬局などで該当商品をみると安心しますw
「予測家には2つのタイプがある。無知な予測家と、自らが無知であることを知らない予測家だ。」
というのはジョン・ケネス・ガルブレイスの言葉です。
世の中は偶然性で満ち溢れていますが、人は結果に対して特定の原因を求めて、それがわかると(わかったつもりになると)安心するところがあります。
相場が動く理由も本来そんな簡単にわかるものではないと思います。
「どうせ分からない」と良い意味での諦めが大切かもしれませんね。
分からない中で、少しでもリスクを下げるために勉強したり、身近な企業に投資したりすることが大切かなと思います。