投資家として、いや資本主義社会に生きる社会人として、「お金とは何か」というのは真剣に考える価値のある命題だと思います。

お金に一切触れずに一日を過ごすことなんてあるでしょうか。よほど風邪で寝込んで倒れている時以外は、お金を使わない日はありませんよね。

にもかかわらず、私たちは子どもの頃学校でお金についてはほとんど教わりません。親もなるべく子どもにお金の話はしないでおこうとします。学校でも家庭でも学べない。でも、いざ社会に出るとお金と関わっていかざるを得ません。

お金を知ることは資本主義のルールを知ることに繋がります。資本主義のルールを知らなくても、何となく生き延びることはできます。でも、ルールを知っているだけで圧倒的に有利に人生をサバイブできます。お金の本質を理解すると、貯金ばかりすることに罪悪感を覚えてきます。そして投資や消費に積極的になれます。

私が今まで読んできた本の中で、「お金とは何か」についてもっとも勉強になった本を2冊紹介します。読みやすい簡単めの本と、ちょっと難解だけと読む価値がある重厚な本の2冊を取り上げます。

 

サクッと読めってスッと理解できる。読後爽快感サイコー。

レオス・キャピタル代表の藤野英人さんの著作です。

この本を全国の高校生(ないし大学生)に配布したら、日本の投資環境は激変するんじゃないかって思います。それくらい分かりやすくて、かつインパクトがあります。藤野さんの情熱が文章からメラメラ出ています。読んでいると、脳裏に藤野さんの顔が浮かび上がってくるんですw。

日本人は「お金とは汚いもの」と考えがちです。

子どもの頃、千円札を取り出していじっていたら母親から「お金は汚いから、早く財布にしまいなさい!」的なことを言われたのを今でも覚えています。それは物理的に汚れているという意味もあったでしょうが、どちらかと言うと「お金は穢れているからなるべく触れてはいけない」というメッセージの方が強かったと思います。

そうやってお金を遠ざける素振りを見せながら、実はセコセコとお金を貯めまくっているのが日本人だと、藤野氏は喝破します。

なんで、日本人はお金に対してそんな振る舞いをするのか?

それは、お金とは何か、その本質を全く理解していないからです。

藤野氏はお金とはエネルギーの一つだと言っています。「投資とは、いまこの瞬間にエネルギーを投入して、未来からのお返しを頂くこと」だと。

この本と出会ったのは、ちょうど初めてインデックスファンドを買ったばかりの頃でした。もう5年くらい前になるかな。この本を読んで「よし!、絶対にこれから投資続けるぞ!」って決意を固くしました。投資のやる気をグイっと上げてくれた本です。

それとお金のことだけじゃなくって、働くってどういうことなのか、仕事をしてお給料をもらうとはどういうことなのか、といったことについても色々と考えさせられました。

大事なことは、
明日の自分が少しでも成長していること。
明日の社会が少しでも良くなっていること。
そのために、いかにエネルギーを使うのか。
エネルギーの一つがお金です。

投資家が「お金」よりも大切にしていること

 

ちょっと難解で読みずらい。でもめちゃ勉強になる。お金の本質がわかる。


通勤電車でサクッと読んで理解できる本ではないかもしれません。

あまり読みずらい本は紹介しない主義です。ですが、この本ほど「お金の本質とは何か」ということを教えてくれる本は他にありません。めっちゃ勉強になります。なので紹介します。

パン屋でパンを買うお金、ネット証券で株を買うお金、この2つのお金は違う種類のものだと著者は言います。

お金は本来は商品と商品を媒介するために存在するものです。しかし、お金には財産として機能もあります。貯金ですね。

なぜ、お金に財産としての機能があるのか?

それは、お金が腐らないからです。

「いや、そんなの当たり前じゃん」って思うかもしれません。

いやいやいや、これが当たり前なのがダメなんです。

米もパンも牛乳も肉も時間が経てば腐るし、漫画や雑誌などの情報もいずれ陳腐化しするものが大半です。でも、それらを媒介するお金は全く腐らない。いや、腐らないどころか、利子を得ることで増殖までする。

これが経済をおかしくするとエンデは言います。
(この本の著者はエンデではありません。)

本の中盤で、面白いエピソードが紹介されます。

オーストリアのとある小さな町で地域通貨が発行されました。「ヴェルグル労働証明書」という通貨です。この通貨にはある仕組みありました。それは、毎月1%ずつ価値が減るというものです。つまり、1年間「ヴェルグル労働証明書」を使わずに貯め込んでしまうと、12%も価値が失われるということです。

なぜ、こんなことをしたのでしょうか?

子どもの遊び?
いえいえ、真剣です。

お金がどこかに滞留すると経済が機能不全を起こすと考えたから、敢えてお金を腐らせる仕組みを作ったのです。

これは、別に珍しいことでも何でもありません。今でもこのオーストラリアの地域通貨と同じことをやっています。

そう、インフレです。中央銀行(FRBや日銀)は年2%程度のインフレを目標としていますが、これは年間2%のペースでお金を腐らせることに他なりません。「ヴェルグル労働証明書」のように、年12%というハイペースではありませんが、徐々にお金を腐らせるという発想は現代に引き継がれています。

お金の本質を理解すると、金融政策の理解が進みます。なぜ、FRBが2%のインフレを目標を設定しているのかスッと理解できます。そのような中央銀行の政策が株式に与える影響も理解できてきます。

「根源からお金を問うこと」という副題に恥じない名著です。

エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと