サラリーマン、労働者というのは多かれ少なかれ資本家に搾取されています。例外はありません。「搾取」という言葉はちょっときつい表現かもしれませんが、雇う側からしたら給料以上の利益をもたらしくれないと社員を雇う意味がありません。売上よりも原価が低いのはビジネスの常識。搾取は当然です。

ブラック企業という言葉があります。幸い私は経験ありません。前職の監査法人は今よりしんどかったけどブラック企業ではなかったです。恫喝されたり、椅子を投げられたりはしなかったですし。社員の教育にはそこそこ熱心でした。正真正銘のブラック企業は社員を使い捨てます。長期雇用なんて鼻から考えてない。消耗したら捨てて、また新しい駒を見つければいいくらいに思っている。そういう企業も世の中にはあります。

ホワイト企業という言葉もあります。きついストレスはなく従業員は優しい人ばかり。会社の業績は堅調でボーナスも満額出る。給料も平均以上。そんな企業です。私が今勤務している会社はかなりホワイトな方だと自覚しています。だからこそ危機感を忘れずに、今の内にしっかり資本を蓄積せねばと思っています。現代の企業の寿命は長くない。今の好業績がいつまで続くかわかりません。有名企業のリストラのニュースは他人事とは思えません。

傍から見ると深夜までサビ残させられているブラック企業の社員の方が、資本家に搾取されているように見えます。ぬくぬく日々のルーティンをこなして、そこそこ高い給料をもらっているホワイト企業の社員は搾取されていないように見えます。しかし、往々にして高い給料をもらっている労働者の方が資本家に搾取されているものです。

労働者とは言えませんが、うちのCEOなんてめちゃくちゃ株主に搾取されてるなってよく思いますよ。年収は1億円あるかないかです。あまり具体的には言えませんが、時価総額は兆円単位あります。そんな大企業のかじ取りを担って、好調な業績を維持して時価総額を伸ばしているのに年間報酬はたったの1億円です。

好調な業績を公表して株価が上がると株式時価総額は1日で数百億円、時には1000億円くらい上がる時もあります。それが全部CEOのおかげというわけではありませんが、やはり企業はトップがすべてです。トップの正しい方針があったからこその業績です。時価総額を1000億円もアップさせたのに、CEO報酬が1億円って少なすぎます。1000億円のうち999億円は株主に搾取されているように見えます。搾取率99.9%。

日本企業のサラリーマン社長の報酬はこんなもんですね。年収1億円程度でよくあんな重責を担えるなあっていつも思います。お金以外の仕事のやりがい、地位、権力とかに興味がないとやれないと思います。ちなみに、米国子会社のトップの方が報酬が高いという逆転現象まで起きています。

シリコンバレーのグーグルやフェイスブックで働く一流大卒のエンジニアは、年収1500万円とか2000万円もらっていると聞きます。トップクラスはもっと貰っているのかな。詳しくは知りません。カフェテリアも無料で利用できるそうです。

資本家は彼ら彼女らになぜそんな厚遇を与えているのか。それは、それだけの報酬を与えてもなお十分な富を搾取できるからです。テクノロジー企業は少数精鋭です。フェイスブックの従業員数は3万5千人。総合電機メーカーのゼネラル・エレクトリックの従業員数は28万3千人です。

一部の超優秀なエンジニアが生み出すアルゴリズムが世界中で莫大な富を生みます。フェイスブックの時価総額は約50兆円です。従業員一人当たりの時価総額は世界トップかもしれません。フェイスブックの一人のエンジニアが生み出す付加価値を考えたら、年収1500万円でも激安です。めちゃくちゃ搾取されています。

そういうもんです。高給で恵まれた待遇を得ている労働者ほど資本家に富を奪われています。だからホワイトな環境になります。資本家からしたら、それだけ富を搾取できる労働者は宝物です。手放すわけにはいきません。だから食事や住宅を提供したり、自由な休暇を与えたりして労働環境の改善に努めます。

労働者として好待遇を得たいと思ったら、とにかく資本家に搾取されまくることです。逆説的ですがそれが答えです。資本家に花を持たせることができれば、ご機嫌よろしくあなたは厚遇されます。自分がどれだけ雇用主にメリットをもたらしているのか。給料が安いと不満を言う前に、一度それを冷静に考えた方がいいのかもしれません。あらゆる人間関係はギブアンドテイクです。

ブラック企業が労働者を無慈悲に扱うのは、その労働者がそれほど富をもたらしくれる存在じゃないからです。大した富を搾取できないからです。だからって人は機械ではありませんから、人権を無視するような待遇は許されるべきではありません。ただ、企業文化や経営者の性格という問題だけがブラック企業を生む根源ではないということです。

仕事を頑張れば頑張るほど、少しずつとは言え給料は上がっていきます。でも、それに伴って搾取率も上がっていきます。労働者は常に搾取される立場です。そういうもんです。

それがこの社会のルールです。ルールを理解した上でどう振る舞うべきか考えることです。答えはありません。別に出世レースを目指すのも悪くないです。ただ、繰り返しですがどれだけ仕事を頑張っても、その仕事が生み出す富の大部分は搾取されます。私は労働はほどほど頑張りつつ、搾取する側に回ることに力を入れようと決めました。

あなたが搾取する側、つまり資本家(株主)になりたいなら一つアドバイスがあります。従業員に優しい高給ホワイト企業に投資した方が良いと思いますよ。決してESG投資を勧めているわけではありません。