Grow Rich Slowly シーゲル流米国株投資で億万長者になる!

米国株投資を通じて資本主義社会を豊かに楽しく生きる

*

配当落ちから考える事業資産と非事業資産

   

人事部がアレンジしている長期研修プログラムに参加しています。メンバーは全部で10人ほど。楽しいと思うのが、普段なかなか関わりを持てない部署の人と知り合いになれることです。営業、マーケティング、経営企画、研究開発など様々な部門の方がいて、それぞれ自分の専門性を持っているので興味深い話がたくさん聞けます。私は会計ファイナンスしか知らないので・・。

研修は経営的な内容が大半なのですが、先日は少しファイナンス・アカウンティングの講義がありました。私はさすがに基本的な前知識はありますが、他の部署の人たちは当然普段は会計なんてノータッチなわけで初めて聞く内容が多かったようです。

講師の先生が、結構説明をすっ飛ばす人でちょっと不親切だな~と思っていました。まあ限られた時間でボリューミーな内容をこなさなきゃいけないから大変だとは思うのですが、経理以外の人に説明する内容にしてはちょっと専門的過ぎる気もしてました。

その先生が「企業が配当を出すと株価が下がりますよね。それで・・・」って話を当然のようにしてました。

私は配当落ちで株価が下がることくらい当然知ってます。経理部だからっていうより、これだけ普段から投資のことばかり考えていますからw。でも、会計にも投資にも普段関わりない人にとっては「配当=株価下落」って急に言われても、??ですよね。

研修が終わった後、一つ年下の研究開発職の女性にこんな質問されました。

「ねえねえHiroさんちょい質問あるんやけど。そもそもなんで配当を払うと株価が下がるの??」

 

配当で株価が下がる理由(簡単説明版)

新入社員や経理以外の方に会計・ファイナンス関連の説明するときは、とても気を使います。あまり難しいことを言うと相手を混乱させてしまいます。なるべくテクニカルタームを使わずに、例えなどを使って分かりやすく説明するように心がけています。あと、もしあればホワイトボードで図を描いて説明します。ホワイトボードに色々書くの好きなんです。

研究開発職ってことはもろ理系です。実際、その女性は慶応の理学部出身の方でした。「会計とかアレルギー反応を起こすわ」くらいに言っていました。「色んなこと勉強したいけどアカウンティングだけはやる気が起きない」って言ってたくらいです。

そんな女性に、配当落ちの原理について小難しい理論的な説明をしてもきっと覚えてくれないと思いました。そこで、こういう説明をしました。

配当って僕らがATMからお金を引き出すのと一緒だよ。ATMからお金を引き出したら預金残高が減るでしょ。それと一緒で、配当として企業から現金を引き出されると企業の経済的価値つまり株価が落ちる。配当を出すと企業から現金が流出するから、流失した現金分の株価下落が起こるってこと。」

どうでしょ、そこそこ分かりやすいですか??
逆に分かりにくい?

これが一番シンプルな説明だと思って、こんな表現にしました。「配当=ATMからの預金引き出し」です。だから預金残高が減るのと同じように株価も下がります。企業から現金が出ていくんだから、その分企業価値は下がって然るべきですよね。

 

10億円の配当が10億円分の企業価値下落(株価下落)をもたらすわけ

さて、あなたは株式投資をやっている投資家ですよね。配当落ちという現象自体はすでにご存知のことかと思います。なのでここからは、せっかくですからもう少しファイナンス専門的に踏み込みたいと思います。

 

企業が配当を10億円払うとします。
そうすると理論的には企業の経済価値(株主価値)はいくら減少するでしょうか?

・・・

そう10億円です。あくまで理論値ですが。10億円の現金が会社外に流出するから、その分そのまま株価下落に繋がるということですね。

これはとても自然に聞こえます。現金が10億円減るから10億円企業価値が減少するというのは自然に思えるかもしれません。

でも、、本当にそれは当たり前のことでしょうか?
企業から10億円の現金が流出すれば企業価値が10億円減少するってのは当然ですか?

質問の仕方を変えます。

企業が持っている10億円の現預金の価値は、額面通り10億円でしょうか?

これ、違いますよね。

企業が持っている現預金10億円には10億円以上の価値があるはずです。その現金を事業投資に回せば、さらなる将来の収益拡大に寄与するはずです。今の10億円は1年後には11億円、10年後には100億円に増えてるかもしれません。将来のビジネス拡大のために保有している事業資産としての現預金には額面以上の価値があります。

ちょっとバランスシートを描きたいです。

バランスシートの左側は資産ですが、その資産を事業資産と非事業資産に分けました。

事業資産とはそのままですが、会社の事業に使われる資産です。非事業資産はそれ以外の資産です。自分でこんな図を描いておいてなんですが、「非事業資産」という言葉はやや矛盾してます。だって企業は事業を営むために存在しているんだから、企業に「非」事業資産なるものは普通は存在しません。

基本的に企業が持つ資産はすべて事業資産です。例外として、遊休ですでに売却が決まっている建物なんかは非事業資産と言えますかね。売掛金や在庫、現預金は事業資産です。事業を回すために持っている運転資本ですから。

現預金も事業資産なのですが、例外として将来配当に回ることが決まっている現預金は非事業資産と言えます。配当として株主に渡すことが決まっているってことは、そのお金は事業投資に使えない(使わない)ことは確実ですよね。

配当に回る現預金は非事業資産だからこそ、配当で資金が流出した分がそのまま企業価値の下落(株価の下落)に繋がります。

もしマーケットが事業資産として評価している現預金10億円が突然流出したら、企業価値の下落は10億円じゃ済みません。11億円くらい棄損する可能性もあります。なぜなら、事業資産としての現預金10億円には額面10億円以上の価値があるからです。

一方で、非事業資産としてマーケットに評価されている現預金が流出したら、それに伴う企業価値の減少は現金の額面通りです。10億円の現金(非事業資産)が社外に流出すれば、企業価値はそのまま10億円減少します。なぜなら、もともとマーケットがその現預金の価値を額面通り10億円としか評価していないからです。

 

できる範囲でいいので、なるべく事業資産を持つように心がけよう。

貨幣の時間価値という概念があります。今の1万円と将来の1万円の価値は違うということです。今の1万円を7%で運用できれば1年後には1万700円になります。今の1万円と1年後の1万700円が等価ということになります。でも、これはお金を運用するということが大前提です。もし、1万円札をタンスに入れっぱなしだとしたら、1年後の価値も変わらず1万円にしかなりません。インフレを加味すれば購買力は減っているくらいです。

あなたが稼いだお給料を株式に投下するということは、そのお金が事業資産に変わることを意味します。そして一通りビジネスを回り終わったお金が非事業資産(キャッシュ)として企業の手元に入り、それが株主であるあなたの財布に戻ってくるわけです。配当再投資は「非事業資産→事業資産→非事業資産→事業資産→非事業資産→・・・」というサイクルの繰り返しです。

株式でも何でもいいですが投資をしないと、あなたの貯金すべてが非事業資産になることを意味します。資産はなるべく事業資産で持っていた方が長期的には経済的メリットが大きいです。

多くの日本人のバランスシートはこんな感じです。

非事業資産(銀行預金)が多すぎます。これではどうしてもジリ貧になっていきます。経済を循環させないお金を持ち過ぎると損するようになっています。それがインフレです。黒田総裁は2%のインフレ目標を掲げていますし、実際にそういうインフレ経済が当たり前になっていくと思います。じゃないと財政が成り立ちません。

インフレ経済とは経済にお金を循環させないことに対して罰則を与えるようなものです。

こんなバランスシートを目指せるといいですね(あ、右側の負債と純資産の割合はテキトーです)。

なるべく事業資産をたくさん持つことで、その事業が生み出すリターンを享受することができます。別にこれは家計資産の大半を株式に突っ込めと言いたいわけではありません。リスク許容度は人それぞれで、株式と現預金で半々って人もいるでしょう。それはそれで全然OKです。誰もあなたのポートフォリオに文句を言う人はいません。あなたが安心して過ごせる範囲で資金を投資に回せばいいです(=資金を事業資産にすればいいです)。

ただマインドとして持っておいて損はないと思います。なるべくお金を事業資産として経済に循環させることが、経済的な豊かさをもたらすというマインドです。

 - 投資理論・哲学