金融投資と自己投資ってよく比べられますよね。「若いうちは金融投資なんかにうつつを抜かさずに、自己投資にお金を使うべきだ」という主張をよく見かけます。

私は特に20代半ばの頃は、旅行も外食もなるべく控えて貯金ばかりしていました。サラリーマンが経済的な自由を得る唯一の方法が株式投資なんだと胸を踊らせてました。だから苦痛ではなかったです。投資の種銭を貯めるのが楽しかったです。週末にカフェで投資本を読むのは至福のひとときでした。 

今振り返ると、ちょっと株式投資に盲目に恋をし過ぎていたなあと思うところがあります。経済的自由が欲しいとしても、自分でビジネスをするなど他にも検討すべき選択肢はありますし。株式投資以外見えてなかったです、当時は。

その頃の「過酷」な節約もあって現在そこそこの金融資産を持っています。投資リターンはクソですがw、給料と配当から入金を続けてきた結果です。計算したことはありませんが、累計投資額は2000万円弱はあると思います。

この10年、2000万円を投資以外に使っていたら何ができただろうか? 2000万円を金融投資ではなく自己投資に使っていたら、今頃どんな人生になってただろうか?ってたまに考えます。

とまあ、こんな感じで自己投資は金融投資と対比されることが多いです。ちきりんさんもこんなことをおっしゃっています。

若い内に自己投資に金を突っ込んだおかげで経済的に豊かになれた。ちきりんさんが言うと説得力がありますね。

私は投資ブロガーだから金融投資を推奨すると思われるかもしれませんが、正直どっち派でもないです。これまで米国の資本市場にお金を投げ続けてきたことに後悔はしてません。でもだからって今の20代、30代の若い人に「節約して投資すべきだ!」って言うつもりはないです。まあ経済金融の勉強のために少しは投資した方がいいとは思いますけどね。

ただ、一つ言いたいことがあります。それは金融投資に金銭リターンを求めるのは当然としても、自己投資にまで金銭リターンは求めるのは止めた方がいいのではということです。「投資」という言葉がダメですね。投資と言うとどうしても金銭的なリターンを想像しちゃいます。

生きる目的は、、なんて言い出すと大袈裟ですが、金を稼ぐこと自体が人生の目的ではないはずです。お金は目的ではなく手段。何の手段かと言えば、楽しい時間を過ごすための手段ですかね。

経済学の基礎概念に「効用」というものがあります。「効用」とは財やサービスを消費することで得られる満足感のことです。強いて理屈っぽく言うなら、自己投資の目的は「効用」を高めることにした方がいいと思うのです。金銭リターンではなく。

「効用」は数値化できません。死ぬ間際に「俺の人生の効用は13,667だったか。確か日本人平均効用は10,500くらいだから、俺は平均以上の人生を送れたってことか。良かった、悔いはない。」なんて思うことはありませんよね。効用なんて数字で表そうとすべきじゃないです。せいぜい5段階評価くらいでいいでしょ。大変満足、まあまあ満足、普通、ちょっと不満、かなり不満といった感じで。

お金は数字で表現できます。社会の取引で使われるものですから、客観的に数字で測定できないと困りますから。でも、ここまで正確に数字で示すことができるお金(現預金、株など金融資産全般)はむしろ特殊な存在です。目に見えて分かりやすい数字で結果を突き付けられるから、私たちはどうしてもお金の成果に執着してしまいがちです。

金融投資の目的が金銭リターンなのは、それは当然というか言うまでもないことですよね。ここは異論なしでしょ。儲からなかったけど暴落が刺激的で楽しかったから満足!という人がいるとは思えません。金融投資は儲けてなんぼ。儲けた金でどう人生を豊かにするかですね。

一方で、自己投資は別に金銭リターンを目的にする必要はないと思います。してもいいけど、必ずしも金にこだわる必要はない。金儲けにこだわり過ぎると窮屈になって、自分にお金を使うことを楽しめなくなります。

たとえば英語の勉強。株を買うんじゃなくて英会話教室に50万円を使うのは全然良いとして、その勉強に金銭リターンを求める必要はないと思います。株式に50万円投資したら利回り7%、30年複利で400万円になります。名目リターンは350万円。「この株のリターンを超えないと英会話教室に金を払った意味がない!」とか考え出すとしんどくなります。

そもそも、サラリーマンという枠組みから出ない限り、どれだけ勉強しても給料はそんなに上がらないでしょう。たくさん勉強して仕事で成果を上げても、そのリターンは資本家が吸い上げちゃいます。出世して役員になって投資を回収できることもあるかもしれませんが、英語スキルがどれだけ出世に貢献しているかはわかりません。

たとえ金銭的に報われなくても英語を勉強する意味はあると思います。ネット上にはたくさんの情報が溢れていますが大半は英語です。ウォールストリートジャーナル日本語版を購読していますが、日本語に訳される記事は限定されます。できれば本家の英語版を読みたいですが、私の英語力だと厳しいです。英語ができるようになれば、アクセスできる情報量が格段に上がります。より楽しい、面白い、勉強になるコンテンツに出会える可能性が高くなります。

そこそこ英語が話せれば仕事も楽しくなります。月一で海外役員と1時間の電話会議があるんですが、もう苦痛でしかないです。Any question?と言われても沈黙を通しています。議論で発言しない人は参加する意味はないと言われますね。はい、私のことです。

自己投資って何なのでしょうか?
「投資」って表現を使うから仰々しくなります。

自分のためにお金を使うことは何でも自己投資ってことでいいんじゃないでしょうか。消極的に定義すると、貯蓄と投資以外はすべて自己投資。つまり自己投資=消費。飲みに行くのもデートも海外旅行もすべて自己投資。

自己投資に求めるべきは金銭リターンではなく効用。つまり、楽しけりゃいいってこと。満足できればそれでOK。お金の成果は気にしない。投資を回収するという発想を持たない。人生の時間は有限。自分が楽しいと思えることにお金を使い続けることが幸せな人生かなって思います。

私は金融投資を続けてきて後悔してないと言いましたが、それは私が一定の不労所得に守られている状態に大きな「快」を感じる性格だからです。でも、そろそろいいかなあと思ってきました。米国株投資はこれからも続けるけど、少しずつ金融投資から自己投資に切り替えるタイミングかなと思ってきました。