経済計算をするとき、お金のことを考えるときは、上下・左右を意識することが大切かなと思います。

上下とは損益計算書。左右とはバランスシートのことです。

年商と年収、言葉は似ているが意味は大違い

上下というのは、損益計算書のどこの部分の話をしているのかを意識するという意味です。

一番上の売上高なのか、はたまた一番下の税引き後利益なのか。あるいは税引き前利益なのか。

先日、テレビ局のアナウンサーを退職して独立し、自分で事務所を構えてゲーム実況などのビジネスに挑戦している方が某番組で紹介されているのを拝見しました。

「独立してどうですか。ぶっちゃけ年収は上がりましたか?」というタレントさんの質問に対して、その独立したアナウンサーさんはこんな回答をしていました。

「そうですね、年商は会社員時代の5倍にはなりました!」

独立して収入が5倍になれば普通に考えれば成功でしょう。キー局のアナなんて年収1000万円はあったでしょうから、5倍なら5000万円です。

でも、年収と年商は似て非なるもの。言葉は似ていますが、意味は全く違います。

年収は損益計算書で言えば、税引き前利益に相当します。年収は額面を指すのが一般的ですから、税後ではなく税前ですね。

一方で、自営業の人がよく使う年商という言葉は通常は売上高を指します。

利益と売上高を比較しても意味はありません。

売上が5000万円ということは、そこから人件費や家賃など諸々の費用を引けば、もしかしたら1000万くらいしか残らないかもしれません。下手したら赤字かもしれません。人も何人か雇っていると言ってましたし。

もし税引き前利益で1000万円程度ならば、お金だけを考えるなら会社員で固定給として1000万もらった方が遥かにコスパがいいです。コスパというかリスクに対するリターンが高いです。

家計では企業会計ほど複雑なPL構造にはなりません。ここで紹介した売上高、税引き前利益、税引き後利益くらいを意識できればOKかなと思います。

PLの上(売上高)の話をしているのか、それとも下(利益)の話をしているのか。下の場合は最下部の税後なのか、一つ上段の税前なのか。それくらい意識できればいいですかね。

バランスシートの右側を意識する癖

次に左右の話です。左右とはバランスシートを意味しています。左は資産、右は負債純資産ですね。

特に意識したいのが右側(負債、純資産)です。

簿記の勉強をしたことがある方はご存知と思いますが、どんな経済取引も必ず借方(左)と貸方(右)があり、貸借は一致しています。だから”バランス”シートといいます。

預金、株式、不動産、高級時計、絵画などどれくらいの資産を持っているかという、BSの左側ばかりに目が行きがちですが、右側も忘れないでください。

「5千万円のマンションを持っている」と聞くと、どんなマンションなのかよりも、BSの右側がどうなっているのかがまず気になります。借金しているのか、完全自己資金なのか。

どれだけたくさんの資産を持っていても、それに見合うくらい大きな負債があれば、資産と負債の差額たる純資産は小さくなります。家計の経済改善とは資産を大きくすることではなく、純資産を大きくすることです。

特に大きなお金の話をするときは、視野を広げて左右をしっかり確認することが大切です。

他人のお金の話を追求するのは野暮ではあるが、ここぞという時は重要になる

お金の上下・左右を意識しようという話をしました。

が、友人や同僚との何気ない会話の中で、ここまでお金の話を追求するのは野暮です。お金の使い方は結局は人それぞれなわけですし。

「年商5000万円ってことは利益はなんぼなん?」
「マンション持ってるって言うけど、ローンはどれくらいあんの?」
みたいな話を敢えて振る必要はないかなと。よほど仲が良くてなんでも話せる間柄でないと。

ただ、自分の利害に大きな影響を及ぼすここぞという時はしっかり追求することも重要になってきます。

たとえば、婚活で相手の経済状況を把握したい時など。

お相手が年商1億円と聞いて舞い上がらない方がいいです。どういうビジネスをやってて、どれくらい儲かっているのか知っておくべきでしょう。年収が1億円なら舞い上がっていいと思いますがw。

港区に1億円のマンションを持っていると聞いて舞い上がらない方がいいです。オーバーローンで下手したら純資産はマイナスかもしれません。BSの左側はわかったから、右側はどうなってるんだと機を見て追求した方が身のためです。