ビジネスというのは他人の役に立つ仕事をして、その対価としてお金を受け取ることが原則です。しかし、世の中には、人の役に立ちたいなんて理念の欠片もなく、いかに金を巻き上げるかということしか頭にない人もいます。

律義に返済してくる優良債務者に不必要な追加融資をして利息をむしり取るサラ金業者。ねずみ講で金を巻き上げて逃げようとする人。家賃保証と嘘を言って高額なアパート投資に誘い込む不動産業者。99%損するとわかっておきながら、顧客が無知なことを言いことに高コストなファンドを売り込む金融業者。

こういったちょっとグレーな仕事でお金を稼ぐことは悪いことなのでしょうか。確かに、褒められたことではありません。しかし、私は敢えて言いますが、騙されてお金を取られた方が悪いですよ。うん、そう思うくらいが丁度いい。

なぜ価値のないものに大金を投じてしまうのか。その原因を一言で表すと思考停止です。相手がなぜ自分に売ろうとしているのか、なんで見ず知らずの自分に親身になってくれるのか。そういうことを考えないからです。頭が良い悪いではない。最低限の知識、常識と冷静になって考える力があれば、お金をだまし取られることはありません。

とこんなことを言っている私ですが、過去に中洲で1万円、歌舞伎町で8万円ぼったくられたことがあります。20代前半の頃ですが。知識、常識、思考力すべてが欠如していました。もう同じ過ちを繰り返すことはないです。2回もやられたので。

人を黙すのは良くないことですよ。それはそうです。倫理に反する行為です。しかし、弱肉強食の動物の世界ではそんな悠長なことも言ってられません。草原のど真ん中でエサ食べて昼から熟睡していたシマウマが、ライオンに襲われて殺されたら、それはライオンが卑怯ということになるのでしょうか。ライオンは自分が生き延びるためにやったまでです。油断したシマウマが悪いと、周りのシマウマ達は思うことでしょう。

と、こんな野生動物界のルールがそのまま人間社会に適用されるわけではありませんが、言いたいことは動物は本質的に厳しいゼロサムゲームの中で勝負して生き抜いてきたということです。社会に価値を生んで顧客も自分もwin-winで豊かになろうというプラスサムの発想が生まれたのは、産業革命が起こった19世紀以降です。つい最近の話です。

資本主義社会では顧客に満足してもらう商品、サービスを提供してお金を稼ぐことで社会全体が豊かになっていきます。しかし一方で、マネーゲームの要素もあります。つまり、手段は問わず金さえ手に入れれば飯は食えるのです。大半のお金は「ありがとう」の証ですが、「クソ!騙された!!」という怨念が込められた汚いお金もあります。

でも、それを見分ける術はありません。お金を持っているという形式だけで判断されます。だから、この社会はビジネスという真剣勝負に勝って豊かになる道もあれば、弱者から金を巻き上げて豊かになる方法もあるのです。それが現実です。

現代は知識社会。学ぶことを怠れば、より知能の高いものに搾取される可能性があります。マネーゲームの獲物にされるかもしれないという懐疑心が必要です。何でもかんでも疑ってばかりだと人生つまらなくなるので、バランスは必要だと思いますが。

最初に例に挙げたサラ金、不動産、金融だけでなく、情報弱者の立場にある者は気付かぬ内にお金を巻き上げられていることがあります。

うちの会社は、最近保険契約の見直しを行っています。災害に備えた火災保険、地震保険、訴訟に備えたPL保険など。こちらも粘って交渉しますが、基本的には大手保険会社の言いなりですよ。「高いですね~、何とかならないですか?」くらいは言いますけど、それ以上の反論はできません。だって、保険会社の専門的な統計数理計算なんて誰もわかりませんもん。反証するだけの理論的な材料を揃えることは不可能。結局、高いなあと思いつつ掛け捨てでウン億円の保険料を払い続けるしかありません。

普通の保険契約の締結であっても、情報弱者であることに付け込まれて不要なお金を納めているかもしれません。保険という分野で情報弱者である私たちは、知らぬうちに不必要な保険料を取られている可能性があります。

結局程度の問題であって、知識で劣る側というのは常に交渉で不利な状況に置かれ、結果としてマネーゲームに負けてしまうのです。ビジネスはどうしてもそういう側面があります。取れるだけ取った方が、そりゃ利益が上がって得ですから。利益は顧客満足度で決まるのではなく、稼いだお金で決まります。

情報強者は情報弱者からお金を吸い上げる。詐欺的な行為ではっきり見える場合もあれば、通常のビジネスの中に紛れ込んではっきり見えない時もあります。後者はなかなかやっかいです。お金儲けには真っ当なビジネスとマネーゲームが混在しているということです。

ちょっと暗い話ですみません。資本主義というゲームに参戦する以上、警戒心を持つことも必要だと思うので。「相手にどんなメリットがあるのか?」を考えるのは特に重要なことだと思います。