信用格付けとは企業の債務返済能力を評価したものです。S&P、ムーディーズ、フィッチ・レーティングスなどが有名です。幣ブログの米国株銘柄分析では各社のS&P信用格付けを紹介しています。四季報に載っているので、そこから取っています。

毎回、銘柄分析を更新する中でなんでこんな格付けになってるんだろう?と疑問に思う時があります。「マクドナルドってあんなにボロ儲けしてるのに、格付けはBBBなんだ~」とか。

そこでちょっと調べてみました。
興味心で。

信用格付けにもっとも影響を与えている指標はインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)だと思います。細かい定義はありますが、簡単に言うと「ICR=営業利益 / 支払利息」です。1年間の営業利益で何年分の利息を賄えるかを指しています。たとえば、営業利益が100億円で支払利息が10億円ならIRCは10.0です。10年分の支払利息に相当する利益を1年間で稼いでいるということ。

財務安全性と言うと自己資本比率や流動比率などバランスシートに注目が集まりがちです。確かにBS分析も大切なのですが、より重視されるのはPLとキャッシュフローです。なぜなら、企業はBSの余剰資金から債務を返済するのではなくビジネスで稼いだ営業利益(営業キャッシュフロー)から債務を返済するからです。

強いビジネスと少ない負債が高い信用格付けに繋がっていると推測されます。その二つが加味された指標がインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)です。

任意の米国主要企業のICRを取得してみました。データソースはMorningstarです。自分で計算はしていません。

企業名 格付け ICR
ジョンソン&ジョンソン AAA 18.9
マイクロソフト AAA 17.3
アルファベット AA+ 307.2
ファイザー AA 10
メルク AA 12.3
ウォルマート AA 5.9
オラクル AA 6.9
シスコシステムズ AA- 14.8
コルゲート・パルモリーブ AA- 18.9
アマゾン AA- 8.9
プロクター&ギャンブル AA- 27.1
コカ・コーラ AA- 10.1
ウォルトディズニー A+ 22.6
IBM A+ 16.7
ホームデポ A 14.9
ボーイング A 25.4
ペプシコ A 7
フィリップモリス A 13.5
コストコホールセール A 28.9
アムジェン A 7.9
ネクステラ・エナジー A- 5.9
AT&T BBB 4.1
ベライゾン・コミュニケーションズ BBB 5.1
マクドナルド BBB 8.9
アボットラボラトリーズ BBB 4.5
メドトロニック BBB 4.6
ロッキードマーティン BBB 9.7

どうでしょうか。基本的には格付けが高いほどICRも高い傾向にありますね。ただ、一概にそうとも言えない面もあります。

AAA格付けのジョンソン&ジョンソンとマイクロソフトのICRはともに20弱ありますが、それよりICRが高い企業は他にもあります。たとえば、アルファベット。アルファベットのICRは何と307もあります。これは同社の有利子負債が極めて少ないからです。が、信用格付けAAAではなく、その一つ下のAA+です。なぜだろう。有配企業の方が評価が高いのか。まあICRだけで格付けが決まっているではないということですね。

AAを取得していますが、オラクルとウォルマートのICRは10未満と低いです。有利子負債が多いという事です。両者とも営業利益はしっかりあるので。アマゾンもICR8.9と低めですがAA-格付けです。ICRが低くてもビジネスの競争優位性などを評価してAAなのでしょうか。

投機級一歩手前のBBBになると、やはり全社ICRは10未満です。タイムワーナーを買収したAT&Tは4.1しかありません。ベライゾンも同じく低い。

アボットラボラトリーズとメドトロニックの格付けがBBBなのを以前疑問に思ったことがありましたが、両社ともICRがかなり低いからですね。数年前にアボットはセントジュードをメドトロニックはコヴィディエンを買収し、巨額の有利子負債を抱えています。

ICRと信用格付けにはある程度相関関係が見られるけど、ICRはあくまで一要素という印象です。ビジネスの持続的競争優位性、バランスシート、他諸々の要素を総合的に評価しているのでしょう。詳細はブラックボックスです。

信用格付けは株式投資家としても参考になります。なぜなら、BSの安全性よりもPLの持続的な強さを評価して格付けが付与されているからです。信用格付けが高い企業は安心して長期保有しやすいです。あくまで一つの参考指標ですが。

(参考記事)
S&P信用格付けで銘柄スクリーニング