決算シーズンですね。調子はどうですか。幸い、僕はまあまあ好調です。今日はコカ・コーラの決算が良かったみたいです。ベライゾンはまちまち。

米国株投資を続けていると段々わかってきますが、決算で真っ先に注目されるのは売上高とEPS(一株当たり純利益)です。この2つが市場予想を超えたかどうか、また前年比でどれくらい成長したかによって、決算開示後のマーケットが左右されます。米国株は決算結果に素直に反応することが多くて分かりやすいです。まれにCEOのネガティブ発言などのせいで、決算は良いのに株価が急落することもありますけどね。

売上高もEPSもどちらも重要な指標に違いないのですが、こと四半期決算に限って言えば売上高の方が注目に値すると思います。

EPSって多少は操作できるんですよ。そりゃ、目標EPS100なのに、決算締めてふたを開けたらEPS60しかなかったらどうしようもないです。さすがに40の差を無理矢理埋めたら粉飾です。

でも実際は、業績が安定している成熟企業の場合、EPSは市場予想とほぼニアリーな位置に落ち着くことが多いです。会社もアナリストも適当に予想しているわけじゃありませんから。たとえば、目標EPS100に対して決算締めた結果EPSが99だったとか。これくらいなら、どうにでも調整できます。粉飾じゃないですよ。「調整」です。

伝票を精査すれば、今期に費用計上されているけど、本来は前払費用として翌期に繰り延べるべき案件って結構あります。そういうのを「調整」すれば、99.0のEPSを100.3とかにできます。実際、今まで何度もそういう場面がありました。

たった0.1円であっても業績予想を達成したかしてないかで、投資家に与える印象はだいぶ変わります。CEO、CFO、他経営幹部はその辺かなりセンシティブです。

逆に、CEOが利益を少し低く見せたがる時もあります。たとえば、来年から新中期経営計画が始まる時など。そういう時は、敢えて今年の利益を低くして、翌年からの好調っぷりをアピールしたがります(つまり新中計が上手く進んでいるアピールをしたい)。

経理部はそういうCEOの要請にはなるべく応えます。決算書を作成するのは経理部ですが、決算数字自体は経営者が決めるものですから。会計数字は「経営者の主張」と言われます。ただし、粉飾は絶対にしませんよ。「30億円の純利益を100億円にしろ!」なんて言われても、そりゃさすがに無理です。そんなこと言われたら辞表を提出します。あくまで「調整」の範囲です。100億円の純利益を99億円にする程度です。監査法人に自信を持って見せれる伝票しか切りません。やましいことはしない。

とまあ、とにかくEPSってある程度は操作可能です。EPSが市場予想をギリギリで超えていたら、「まあ色々やってんだろうな」と僕は職業柄思っちゃいます。ましてや、四半期決算における3ヵ月間のEPSなんて・・。

一方で、売上高は操作不可能です。ここはあまり解釈の余地がありません。市場予想が売上高100.0億円で、会計システムから出てきた売上高が99.6億円だった。目標にあと0.4億円足りない!

どうするか・・
どうもできません。
このまま正直に目標未達で開示します。

売上高は費用と違って見積もり計上はしません。きちんと法的な債権が確定したものだけを売上処理します。一部の業界を除けば、売上高の計上基準は明確です。製造業ならお客さんに商品を出荷した時点で売上計上が一般的です。小売りなら、レジでお会計を済ませた時点で売上計上です。

売上高には数字を操作する余地がほぼないと見てよいです。

なので、私は保有企業の四半期決算をウォッチする時は、先ず売上高(Sales revenue)を見るようにしています。もちろん、EPSも見ますよ。ただEPSは市場予想を大きく下回っていない限りは参考程度です。たった3か月間のEPSを見たってしゃーないやろって思います。

たとえば、先日のIBMの2019年度第1四半期決算。調整後EPSは2.25ドルで市場予想を0.01ドル上回ったけど、売上高180.2億ドルで市場予想を3.3億ドルショート、前年比でも▲4.7%でした。こういう決算を見ると「ああ不調だったけど、EPSは無理矢理捻り出したんだろうな~」という風に見ちゃいます。売上高は嘘つけないから(経営陣と監査法人がともに誠実なら)、期待以下の結果でもそのまま開示するしかありません。

長期ではむしろEPSを重視します。投資する銘柄を検討する時、過去10年分以上のPLを必ず見ますが、その時はEPSの方が重要です。長期的にEPSを増やしてきたかどうかは、株主として気になるところですから。売上高、営業CFが横ばいでも、自社株買いを行って発行済み株式数を減らすことでEPSを増やすことはできます。自社株買いに批判的な人(某政治家とか)もいますが、自社株買いでEPSを増やすのだって立派な資本政策です。

売上高もEPSもどちらもウォッチした方がいいですが、四半期決算では売上高の方が注目に値します。EPSがほんの0.1ドル良くても悪くても、あまり気にする必要はないと思います。EPSはもうちょっと長い目線でみないと何とも言えませんね。売上高はたとえ3ヵ月間の結果であっても、ビジネスの好不調を教えてくれる重要指標だと思います。