最近、何でも楽しくやろう病が蔓延している気がするのですが気のせいでしょうか。スポーツでもビジネスでも。子どもも大人も。「楽しまないと上手くいかないぞ!」という強迫観念すらあるんじゃないかと思うくらいです。

フジパンCUPという小学生の関東サッカー大会が昨年末にありまして、今日のお昼にテレビで放送されていました。それを見ていると、選手(子ども達)も監督も「もっと楽しもうよ!」、「サッカーは楽しまないと勝てないぞ!」と言ってるんですね。

仕事もそうです。うちの会社は比較的ホワイトな環境なのですが(労働時間がやや長いのがネックだが)、「仕事は楽しくやろう!」という社風というか組織風土の醸成が推進されています。社長も人事部もそういうメッセージを定期的に発信しています。

しんどいより楽しい方がいいのは間違いないので、悪いことではないと思うのですが、違和感を覚える時もあります。

それは楽観と能天気を混同している時があるという点です。

一流のサッカーチームの試合前の様子を見ていると、選手はみんな笑顔でパス回しをしたり、リフティングをしてたりします。緊張した様子はなく、明るい雰囲気を感じることが多いです。

欧州リーグやJリーグといった一流のプロの世界はもちろんのこと、高校サッカーでも強豪校ほど試合前のアップの時に余裕感というか、楽しくサッカーをやってる感が伝わってきます。

そういうシーンを大勢の人が見るので、「ああ、やっぱり一流になるには楽しむことが大事なんだな」という理解が広まっているのでは、という気がします。

ただ、そういう一流達は見えないところで、血のにじむような努力をやっています。やることはやって準備万端だからこそ、本番前に笑顔で楽しそうにやれるわけです。

誰にも負けないくらい練習をしてきた自負があるからこそ楽観的でいられます。自分に自信があるということです。

一方で、大した準備、努力もせずにヘラヘラ笑っている人もいます。これを楽観的とは言いません。ただの能天気です。

どちらも楽しそうに見えるので、楽観的な人と能天気な人の違いは分かりづらいのですが、勝負をしたら結果がどうなるかは火を見るよりも明らかです。

経験豊富で成果を出していて、自分の能力に自信があって周囲からの人望も厚い人。こういう人がTeamsのWebミーティングで気の抜けた一言で笑いを取って場を和ませてくれると安心します。敢えてなのか知らないけど、ちょっとポンコツな一面を見せてくれるとむしろ安心します。

でも、明らかに知識、スキルがなくて頼りないなあと感じている人が、同じく気の抜けたことを言ったらむしろ不安が募ります。この仕事、本当にスケジュール通りに上手く進むんだろうかと。

スポーツやビジネスの真剣勝負を楽しくやろうとはどういうことなのか?

それは、楽しくやれるだけの余裕を持てるくらい練習しろ勉強しろ努力しろ、ということです。この裏の真のメッセージを理解せずに、ただ楽しくやっていても何の成果も出ません。

サッカーの大会本番、0-2で負けている時のハーフタイムで「みんなもっとサッカーを楽しもうよ!」と言うのは時すでに遅しです。バリバリ練習を積んできたチームだけが、そんなこと言われなくても楽しく試合ができるのです。

スポーツや仕事を楽しくやるというのは、プロやCEOになるくらい努力を重ねてきた人だから言える言葉であって、一般ピーポーが安易に真似できることではありません。

仕事が楽しくなくてもそれは至って普通のことであって、それを無理に楽しくしようと気張る必要もないと思います。

たくさん失敗して苦労して人間関係で悩んで勉強して、色々あってキャリア後半で「仕事が楽しい」と思うことができれば十分成功ではないでしょうか。

20代30代の若い頃に「楽しく仕事しよう!」を誤って解釈して、踏ん張りどころでサボってしまうと後々苦労するんじゃないかって思います。