何となく気になったので、主要米国銘柄(時価総額上位100社あたり)と自分の保有銘柄について現時点(2019年3月4日)の、2020年予想EPSに基づくPERをざっと調べてみました。
高PER銘柄にはどんなものがあるのか?
低PER銘柄にはどんなものがあるのか?
を把握したいと思いまして。
いくつかpickしてみます。S&P500平均の16倍よりPERが高い銘柄を「高PER銘柄」、PER16倍未満の銘柄を「低PER銘柄」とします。
()内は予想PERです。
高PER銘柄の具体例
マイクロソフト(22.6)
アマゾン(42.1)
アルファベット(21.0)
フェイスブック(18.3)
プロクター&ギャンブル(20.7)
ウォルマート(19.5)
ビザ(24.3)
ボーイング(18.1)
コカ・コーラ(20.1)
ペプシコ(19.5)
ネクステラ・エナジー(20.7)
ネットフリックス(55.6)
コルゲート・パルモリーブ(21.8)
低PER銘柄の具体例
アップル(13.7)
AT&T(8.5)
ゼネラル・エレクトリック(11.3)
バンク・オブ・アメリカ(9.1)
ウェルズ・ファーゴ(8.8)
ベライゾンコミュニケーションズ(11.9)
アルトリア・グループ(11.8)
CVSヘルス(7.8)
IBM(9.8)
アッヴィ(8.5)
それぞれの特徴
いかがでしょうか?
高PER銘柄、低PER銘柄それぞれの特徴が何となく見えてきませんか。
高PER銘柄には二つのパターンがあります。一つは高成長企業。具体的には、アマゾンやネットフリックス、アルファベット、フェイスブック、ビザなど。ハイテクセクターに多いです。二つ目は安定企業。具体的にはコカ・コーラ、ペプシコ、ネクステラエナジー、プロクター&ギャンブルなど。
PERが高いということは益回りが低いということです。現在の株価に対して期待利益が小さいということです。PER20倍ということは10円のEPS(一株当たり利益)に対して株価は200円(10円×20)です。200円投資して期待リターンは10円。つまり利回りは5%。5%とは30年物米国債の利回りに2%オンされた程度です。高いリターンとは言い難いです。
じゃあ、高PER銘柄はダメなのかと言えばそんなことはないです。今の利益は小さいかもしれませんが、将来の増益が期待できます。今の益回りが5%(PER20倍)でも、EPSが2倍に成長すれば利回りは10%になります。
PERが高くてもEPS成長率が高ければ株主は報われます。
では、コカ・コーラのような利益安定型の高PER銘柄はどう評価すべきなのでしょうか。アマゾンやフェイスブックのような高いEPS成長を望むのは厳しそうです。このような成熟企業にPER20倍もの価格を支払うことは、果たして合理的なのでしょうか。悩ましいところです。成熟企業に見えますが、実は長期的にはまだまだ成長余地が残っているかもしれません。僕はそう思っています。確信はありません。
低PER銘柄を見てみましょう。
こっちも二つのパターンがあると思いませんか。
一つが低成長企業です。具体的にはベライゾンコミュニケーションズ、AT&Tが挙げられます。米国内通信事業という成熟ビジネスで、この10年のDPS成長率は年3%程度しかありません。ギリギリインフレに勝てる程度です。
二つ目がハイリスク企業です。何らかの分かりやすいリスク要因を抱えている企業。具体的にはアルトリア・グループ、IBM、CVSヘルス、アッヴィなどです。アルトリアはメンソールタバコやアイコスに対するFDAの規制、電子タバコ業界への多額のM&A投資といったリスク要因を抱えています。IBMはクラウドやAIといった新ビジネス領域が成長軌道に乗るか不透明です。CVSヘルスは、アマゾンのドラッグストア業界参入という脅威に直面しています。アッヴィは抗リウマチ薬の「ヒュミラ」1製品に売上高の6割を依存しています。
あと銀行株は軒並み低PERです。これはなぜでしょうか。FRBの厳しい規制下にあることがバリュエーションを押し下げているのかもしれません。
低PER銘柄は投資額に対して高いリターンを提供してくれます。PER9倍の銘柄に100万円投資したら11万円の利益が期待できます。益回り11%です。ただし、これは決してフリーランチではありません。11%のリターンは確かに大きいですが、将来のEPSはほとんど成長しないかもしれません。FDAの規制が施行されて、EPSが急減するかもしれません。低PER銘柄はそんな「問題」を抱えています。低PERだから期待リターンが高い、だから儲かる、という単純な論理は成り立ちません。
目先の期待リターンだけ考えれば低PER銘柄>高PER銘柄です。でも、低PER銘柄は諸々のリスクを抱えていることが多いです。ハイリスク・ハイリターンと言えるでしょう。これら低PER銘柄に資本を投じ辛抱強く保有し、将来「問題」が解消してEPS成長路線に戻れば(戻るとマーケットが確信すれば)、PERが押し上げられて多額のキャピタルゲインを得ることができます。
高PER銘柄は投資家期待が相対的に高く、目先のリターンは小さいです。しかし、長期保有することで高いPERをペイできるくらいEPSが成長する可能性もあります。高PER銘柄のリターンが低PER銘柄より高くなるケースだって当然あり得ます。
リスクを取って低PER銘柄を掴むのか。それとも多少割高でも安心して保有できる高PER銘柄を掴むのか。どっちがいいのか、悩みます。わからないので、私は両方ともポートフォリオに組み込んでいます。
改めて各銘柄のPERを見てみると、株価はそれなりに合理的な数字になってるな~と感じます。上記銘柄の中で、どれがもっとも割安に評価されているのか。どれがもっとも高い投資リターンをもたらすのか。それはわからん。いくら考えてもわからん。投資成果は神のみぞ知る世界ですが、こうやってきちんとPERを見て自分なりに考えて投資判断することは大切かなと思います。チャートだけ見て買わない。
主要銘柄の予想PER(2019年3月4日時点)
最後に当記事を書くためにまとめた、主要銘柄の予想PERを紹介しておきます。2019年3月4日時点です。
ティッカー | 会社名 | 予想PER |
MSFT | マイクロソフト | 22.6 |
AAPL | アップル | 13.7 |
AMZN | アマゾン・ドット・コム | 42.1 |
GOOGL | アルファベット | 21.0 |
FB | フェイスブック | 18.3 |
JNJ | ジョンソン&ジョンソン | 15.2 |
JPM | JPモルガン・チェース | 9.9 |
XOM | エクソンモービル | 14.6 |
WMT | ウォルマート | 19.5 |
BAC | バンク・オブ・アメリカ | 9.1 |
V | ビザ | 24.3 |
BRK-B | バークシャー・ハザウェイ | 18.6 |
RDS-B | ロイヤル・ダッチ・シェル | 9.6 |
PFE | ファイザー | 14.1 |
BA | ボーイング | 18.9 |
PG | プロクター&ギャンブル | 20.7 |
INTC | インテル | 11.3 |
UNH | ユナイテッドヘルス | 14.8 |
VZ | ベライゾンコミュニケーションズ | 11.9 |
CVX | シェブロン | 15.1 |
MA | マスターカード | 25.4 |
WFC | ウェルズファーゴ | 8.8 |
CSCO | シスコシステムズ | 15.2 |
T | AT&T | 8.5 |
MRK | メルク | 15.6 |
HD | ホームデポ | 16.7 |
KO | コカ・コーラ | 20.1 |
ORCL | オラクル | 14.4 |
CMCSA | コムキャスト | 12.5 |
DIS | ウォルトディズニー | 15.9 |
PEP | ペプシコ | 19.5 |
NFLX | ネットフリックス | 55.6 |
C | シティ・グループ | 9.6 |
MCD | マクドナルド | 21.0 |
ABT | アボットラボラトリーズ | 21.8 |
PM | フィリップモリス・インターナショナル | 15.0 |
LLY | イーライリリー | 19.9 |
SAP | SAP | 18.2 |
ADBE | アドビ・システムズ | 27.4 |
CRM | セールスフォース・ドットコム | 59.8 |
INTC | インテル | 11.3 |
MDT | メドトロニック | 16.9 |
ABBV | アッヴィ | 8.5 |
MMM | スリーエム | 18.0 |
UNP | ユニオンパシフィック | 16.3 |
AMGN | アムジェン | 12.8 |
HON | ハネウェル・インターナショナル | 17.9 |
NKE | ナイキ | 27.8 |
ACN | アクセンチュア | 20.8 |
UTX | ユナイテッド・テクノロジーズ | 14.5 |
AVGO | ブロードコム | 10.4 |
MO | アルトリア・グループ | 11.8 |
COST | コストコ・ホールセール | 26.2 |
NVDA | エヌヴィディア | 21.8 |
AXP | アメリカン・エキスプレス | 12.2 |
NEE | ネクステラ・エナジー | 20.7 |
GE | ゼネラル・エレクトリック | 11.3 |
SBUX | スターバックス | 23.4 |
LMT | ロッキード・マーチン | 12.9 |
BMY | ブリストルマイヤーズ・スクイブ | 12.0 |
GILD | ギリアド・サイエンシズ | 9.8 |
LOW | ロウズ・カンパニーズ | 14.9 |
CVS | CVSヘルス | 7.8 |
CL | コルゲート・パルモリーブ | 21.8 |
GIS | ゼネラル・ミルズ | 14.6 |
BLK | ブラックロック | 15.2 |
SLB | シュルンベルジェ | 19.7 |
IBM | IBM | 9.8 |
こんばんは。
以前HIROさんに株を購入するタイミングについてアドバイスを頂き、明らかな割高を避けること、そしてそのものさしとなるのがPERだと理解しているのですが、では割高かどうかはどう判断するのでしょうか?
例えば、今VISAとマクドナルドについて調べているのですが、どちらもS&P500平均より高いですよね。
これは今購入するのは避けるべきということになりますか?
PERという概念がなかなか腑に落ちて理解できず、悩んでいます。
こんばんは。
>では割高かどうかはどう判断するのでしょうか?
そこが難しいところですね。
どれだけPERや配当利回り、EPS推移を眺めても、バリュエーションを自信を持って判断できることはないですね。
以下の3点からPERの妥当性を検討します。
・今後のEPS成長力
・今後のEPS安定度
・長期金利
最初の2つは個別銘柄毎に違います。3つ目の金利はマクロ経済要因です。
ビザはこれまでのEPS成長と高い利益率を考慮すれば、今の多少高いPERはペイできると思います。
ただ割安とは言い難いかな。
マクドナルドはコカ・コーラ型の高PER銘柄という位置づけです。
EPSがそんなにグングン伸びているわけではないけど、安定したロイヤリティ収入で配当は守られています。
ハンバーガーが高くて手が届かない人が世界には大勢います。
ハンバーガー事業も長期的に見れば成長産業。そう考えると今のMCDの株価も妥当に見えてきます。
ビザもマクドナルドも割高でもなく割安でもない水準に見えます、個人的な考えですが。
後はすべての銘柄について言えることですが、今の低金利をどう解釈するかですね。
S&P500のPERは15倍で益回りは6%~7%あります。
一方で長期金利は10年債利回りで2.7%、30年債利回りでも3.1%弱です。
圧倒的に株式有利です。
低金利を考えれば、今のバリュエーションでも米国株は割安に見えます。
が、そう安易に捉えていいかは迷うところ。
というのも、今後金利が上がる可能性もあるからです。
今の低金利が今後10年、20年続く保証はないからです。今の低インフレが続く保証もありません。
ただ一般論から言えば、今の金利水準からして株式の益回りは高いと感じています。
長期投資なら債券ではなく株式かなと思います。
PERをどう判断すべきか、難しいですよね。。
この記事であーだこーだ書いてる通り、私も迷ったままで答えは出てません。
ご回答ありがとうございます。
お礼が遅くなってすみません。
>ビザはこれまでのEPS成長と高い利益率を考慮すれば、今の多少高いPERはペイできる
>ハンバーガー事業も長期的に見れば成長産業。そう考えると今のMCDの株価も妥当
ここらへんがいまいち判断つかないんですよね。
ですがHIROさんでも迷っていると言われるくらいなら自分なんかがすぐに理解しようというのも無理な話…
いつかは個別株にもチャレンジしてみたいと思っているので、今HIROさんの過去記事をしっかり読み返しているところです!
わざわざ、ご返信ありがとうございます。
ですよね、判断付かないですよね。
そういうもんだと思います。
どれだけ熟考しても不確実な未来に資金を投じる、という投資の本質は変わらないです。
個別株投資は楽しいのでぜひ!
と言っても、効率を考えればETFが一番とは今でも思っていますがw。
ビットコインの暴落、米中貿易戦争による中国の景気の後退、と様々な悪要因のために、NVDAやINTCといった半導体銘柄のperが低下しています。
日本でも、米中貿易戦争の煽りを受け、ルネサスエレクトロニクスが工場を停止すると発表しました。
Hiroさんは半導体銘柄は買いだと思いますか?
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2018年12月に、ミズホが半導体サイクルに関するレポートを出していました。
それによると、「下げのリスクは高いが、下げ幅は過去よりも小さい」とのことです。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/report/report18-1228.pdf
半導体銘柄は長期的な目線に立てば「買い」かなと思ってます。
すべての企業がテクノロジー化すると言われます。
コストが下がっていけば、いずれあらゆる業種にロボット、AIが普及すると思います。
私たちの日常生活も自動運転始め、様々なテクノロジーでより便利になっていくはず。
そこに半導体は必須です。頭脳ですから。
今は半導体企業は景気循環銘柄の筆頭ですけど、むしろ生活必需品銘柄のようになっていく気がします。
目先の株価変動はわかりませんが、長期的にはPERが押し上げられていくのではと予測します。
半導体製造装置も同じです。