バフェット流バリュー株投資の本質

ウォーレン・バフェットと言えばバリュー株投資で富を築いた投資家として有名です。

が、過去の投資歴を知れば知るほど、バフェットはバリュー株で財を成したのではなくグロース株で財を成したのだという理解に至ります。もっと正確に言うと「バリュー株っぽく見えるグロース株」で莫大な富を築いたんだなと。

ここで言うバリュー株とはPERや配当利回りといったバリュエーション指標が市場平均より割安な株のことを意味しています。PERで言うと10倍台前半、配当利回りで言うと2%以上。まあ、PERで考えるのが妥当でしょうか。グロース株とはEPSが成長軌道にあり、PERは市場平均以上で20倍台後半以上の銘柄を指しています。

具体的に言うとIBM、シスコシステムズはバリュー株。アマゾン、マイクロソフトはグロース株ですね。特に異論はないかと思います。アップルはどうでしょうか。数年前はバリュー株と思われていたけど、今はグロース株と見られていると思います。

バリュー株はPERが低く高い利回りが期待できますが、それは業績の低迷や成長触媒の欠如の裏返しです。

確かに投資家期待が低いなら業績がさほど成長しなくても株主はそれなりに報われます。IBMの予想PERは12倍です。益回り8.3%。今のEPSを維持し続けるだけでも、理論的には株主は8%強のリターンを享受できます(インフレ無視)。高いリターンではないけど、複利で10年で2倍超にはなります。悪くない。

バリュー株として低いPERで評価されていた企業が、新たな成長ドライバーを見つけてEPSが成長軌道に乗ると、投資家は大きなリターンを得ることができます。つまり、将来グロース株に変わるバリュー株を見つけて、PERが上がる前に仕込んでおけば儲かるということです。当たり前の話ですが。

バフェットがドカッと資金を投じるのはこういう銘柄です。1980年代のコカ・コーラ(KO)。2010年代のアップル(AAPL)。いずれもバフェットが買った時点ではPERは10倍台前半でしたが、その後程なくしてEPSは成長軌道に乗りました。そしてそれがマーケットに評価され、PER拡大に伴って株価は急上昇。

アップルのPERは現在30倍近いですね。数年前では信じられない高バリュエーションです。

今はバリュー株に思われているけど、数年後にグロース株にカテゴライズされるような銘柄を見つけて長期保有することが、バフェット流の「バリュー株」投資なんだと思います。

素人の私でも実践できる投資法を考える

2016年に米国株投資を始めましたが、当時は長期保有ならバリュー株>グロース株だと思っていました。なるべく低PER、高配当利回りの銘柄を選んで長期保有すれば(もちろん財務データはチェックする)、短期的なキャピタルゲインは期待できないけど配当再投資を通じて最終的には逆転するんだと。

それは理解誤りでした。バリュー株投資で儲けるのはそんな簡単シンプルな方法ではダメで、将来グロース株に変貌できる潜在力のある銘柄を選別できる眼が必要ですね。

それは普通の個人投資家、少なくとも私には難しいです。最悪なのはバリュー・トラップに嵌ってしまうこと。マーケットの低い期待すら超えられず、衰退して最悪倒産でもしたら株券は紙切れになります。

それでもバリュー株に長期投資してそれなりの結果を残すにはどうすればいいのか?

一案として、大型有名企業だけで構成される低PER系ないし高配当系のETFを買うという戦略があるかなと思います。大型有名企業とは解釈曖昧ですが、イメージとしてはS&P100構成銘柄です。誰もが知っている有名ブランドで、営業キャッシュフロー潤沢、バランスシートもしっかりしている企業。

ジェームズ・P・オショーネシーの『ウォール街で勝つ法則』はちょっと値段は高いですが、豊富なデータが掲載されている必読書です。以前、読者さんに紹介されて買いました。今でも自宅本棚の投資本コーナーに鎮座しております。

『ウォール街で勝つ法則』に面白いデータがあります。

全米国企業の中から低PER上位50銘柄を抽出すると、そのリターンは全米国企業平均より劣る結果となりました(年率12.7% vs 13.2%、測定期間1951年~1996年)。

しかし、大型株の中から低PER上位50種を抽出したポートフォリオのリターンは、大型株全平均のそれよりも優秀な結果だったのです(年率14.1% vs 11.9%、測定期間同上)。

配当利回りで見ても傾向は同じでした。つまり全銘柄から高配当銘柄を抽出する戦略はうまくいかないけど、大型株から高配当銘柄を抽出する戦略はうまくいくという結果です。

これが意味するところは、ある程度成熟した大企業のみに絞った方がバリュー株投資は成功しやすいということです。

投資家が利回りだけで銘柄選びをする場合には、有名大企業に限った方がいい。なぜなら、これらの企業は高配当を可能にするだけの長年にわたる事業活動と強固な財務基盤を持っているからである。

『ウォール街で勝つ法則』より

一番の理想は狙い撃ちで将来大きくグロースするバリュー株を掴むことです。しかし、それは難しい。2018年末にアップル株をPER10倍台前半で掴めたのは偶然でした。再現性はない。

そんなわけで、バリュー銘柄はVYMなどのETFでカバーするのがいいのかなあと思っています。高配当系として今はHDVを持っていますが。

んで、個別株は素直にグロース株を買うのがいいかなと。マーケットの後追いですね。すでにマーケットからグロース株と認識されている銘柄はPERもそれなりに高く目先の利回りは低くなります。

でもそれはしゃーない。将来グロースになるバリュー株を事前に仕込むのは至難の業。

仮にそれをやる時に大事なことは、ミスったと思ったらすぐに切ることです。「判断ミスは投資コストの内」とバフェットは言っています。ただ、個人的経験から言わせてもらうと、含み損がそこそこ大きくなるとなんか開き直ってしまって、損切りできなくなります。

・ETFでバリュー株
・個別株でグロース株

というのが今の私の基本スタンスになりつつあります。

実際のポートフォリオはその通りじゃないので言動不一致ではあるのですが・・。バリュー系の個別株持ってるし、グロース系のETFも持っています。もし今ゼロからポートフォリオ組むならそういう方針にするかなという話です。

(参考文献)
ジェームズ・P・オショーネシー著『ウォール街で勝つ法則 - 株式投資で最高の収益を上げるために』