長期投資で大きな利益を得るために大切な発想は「線ではなく面で考えること」だと思います。

線=益回り、配当利回り
面=益回り+増益率、配当利回り+増配率

高い益回り、高い配当利回りを追い求めるのではなく、これから10年、20年、30年先をイメージして高い増益を続けられる企業こそ長期投資に相応しい銘柄です。

線だけを書いてみます。

急に味気ない図をすみません。現在の上に一つ黒点があります。これは、現時点で投資家が得られる利益または配当を意味しています。つまり、株式益回りないし配当利回りです。

益回りか配当利回りか、これは利益で考えるか配当で考えるかの違いです。どちらでもイメージしてもよいです。個人的には財務方針に左右されない利益で考えた方が思考がスッキリするかな~と思います。

この益回り、配当利回りは高い方が望ましいです。その分投資家はたくさんの配当(利益)を得られるということですから。

しかし、それはあくまで単年でみた場合です。1年間の投資額当たりの利益、配当を大きくしたいなら益回り(配当利回り)が高い銘柄を選べばいい。たとえば、通信大手AT&T(T)の現在の予想益回りは11.9%もあります。100万円投資したら12万円もの利益が見込めます。

逆に益回りが低い(PERが高い)銘柄を選べば、翌1年間の投資額当たりの利益、配当は小さくなります。たとえば、アマゾン(AMZN)の予想益回りは1.7%しかありません。100万円投資しても1.7万円の利益しかありません。米国債より小さな利益です。

AT&Tの利益はアマゾンの7倍もあります。

じゃあ、AT&Tを買うべきなのかと言えばそれは違いますよね。あくまでこの先1年間の利益だけみれば、AT&Tの方が多いだけです。つまりAT&Tの方がAMZNより益回りが高い(PERが低い)だけです。

AT&T予想PER:8.4倍
アマゾン予想PER:59.8倍

AT&Tの方が低PER(高益回り)ですが、だからってAT&Tへの長期投資が有利とは限らないですよね。当たり前のこと言ってますが・・。

大事なのはこれからの増益力です。益回り(配当利回り)というのは単なるスタート地点に過ぎません。そりゃね、スタート地点はなるべく高い方がいいですよ。だから益回り(配当利回り)は高い方が株主にとっては嬉しいです。でも、いくら益回り(配当利回り)が高いからって、以降の増益率(増配率)が小さければ意味はありません。

投資期間が長期になればなるほどスタート地点の高低よりも、これからの増益幅の方が重要になってきます。100メートル走を10メートル先からスタートできればかなり有利です。大きなハンディをもらっている状況です。でも10,000メートル走を10メートル先からスタートしたところで、大して有利にはなりません。

長期投資とは10,000メートル走です。大事なのは長期的な走力であって、スタート地点を前にしようと躍起になる意味はあまりありません。

最初のスタート地点がどこなのかよりも、長期的な増益力の方が重要です。上の図のように益回りからスタートしてどれくらい増益できるのかをイメージする。線ではなく面を考える。この面を大きくしてくれる銘柄が、長期投資であなたをお金持ちにしてくれる銘柄です。

面=益回り+増益率

益回りより増益率が肝

もちろん、実際はこんな線形で成長するわけではないです。途中で線がポキっと折れちゃうこともあるかもしれません。それは避けたい。だから、景気安定株は長期で有利だと思います。

投資期間が長期になればなるほど、高いPER(低い益回り)でも問題ないと言えます。スタート地点が低くても、長い時間を掛けて増益を続ければ将来は大きな面になります。

どれだけ増益力があるとしても、買い値は重要ではありますよ。いくらスタート地点が重要じゃないとは言え、PER50倍(益回り2%)ともなると警戒心を持たないといけません。アマゾンのような利益成長著しい企業であれば、益回り2%とスタート地点が極端に低くても増益力でカバーできます。でも、コカ・コーラやペプシコのような成熟企業の益回りが2%だといくら長期でも厳しいです。

だから、益回りがあまりに低過ぎないか(PERがあまりに高過ぎないか)チェックすることは大切です。より高い益回り(低いPER)で投資できるに越したことはありません。ただ、それは二の次です。まあまあのバリュエーションで買えればそれでOK。スタート地点をちょっと前にすることにこだわる意味は薄いです。それよりも、10,000メートルを尻上がりに速く走れる走力、体力の方が重要です。

ハンディなんて要らん!むしろ後ろからのスタートでいい。俺の走力があれば余裕で全員ごぼう抜きできるぜ!

こんな威勢のいい銘柄が心強いです(ただし成長の罠には気を付ける)。

ちなみに、凄まじい走力があるにもかかわらず前方からスタートして、余裕で1位フィニッシュを決めたのがかつてのフィリップモリスでした。こんな銘柄に投資できれば理想ですけどね。これは難しい・・。なかなか出てこない逸材。