金融に関する記憶は短い、だからバブルは繰り返される。ITバブル崩壊、リーマンショックのようなクラッシュは遅かれ早かれ起こるだろう。このように言われることが多いです。確かに、資本主義は構造的にバブル生成を内包している面があります。

ただ、私はどうも10年前のような金融危機が再発するとは思えません。というのも、みんなそれなりに警戒心を持っているからです。

強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、陶酔で消えていく。

ジョン・M・テンプルトン

現在の株式相場を楽観的に見ている人っているのでしょうか。WSJなどのニュース媒体も投資家に警告を鳴らす記事の方が目に付きます。今が「楽観」ましてや「陶酔」の中にあるとはとても思えません。「懐疑」という言葉がしっくりきます。

景気低迷や債務危機に対する警戒心はそんなに緩んでないように思います。みな警戒している。イケイケドンドンで資金が株式市場に流れているようには思えないです。米株のPERは確かに高めですが、法外なバリュエーションではありません。2019年予想EPSに基づくPERで17倍~18倍。

金融に関する記憶は短いとはいえ、10年前の悪夢はまだ誰も忘れていないでしょう。米国の大手銀行のバランスシートは健全です。

じゃあリスクはどこにあるのか?

私はインフレだと思っています。インフレ率が高まって物価がグングン上昇するリスクを想定しておきたいです。

というのも、記憶にないからです。忘れたんじゃありません。そもそも記憶にないんです。

以下は1980年からの日本のインフレ率推移です。

(Source:世界経済のネタ帳

そりゃ記憶にないのもしゃーないか。この通り、全然物価上がってません。 データを見るまでもなく自分の経験としてもわかります。私は1987年生まれですが、インフレ経済なんて体感したことありません。お菓子の内容量が減ってて、気が付いたら実質値上げされてるなあと気付く程度です。この30年で。

アメリカのインフレ率は日本よりは高いですが、この30年は2%~3%程度です。ここ数年は特に低いですね。

(Source:世界経済のネタ帳

10年じゃ忘れない。でも30年だとさすがに忘れる。そもそも記憶にない人も多い。

みんなインフレなんか起こりっこないと思ってそうです。だから米国債始め債券にガンガン資金が流れている。私はいま債券を買うのは結構リスキーだと思っています。米10年債の利回りが3%くらいあった時に買っておければよかったけど、今から参入する気にはなれません。

債券への(長期)投資とは将来のインフレ率に対する賭けと言えます。いま債券を買うということは、これからも超低インフレ(ないしデフレ)が続くことに賭けることを意味します。短期的に安全資産としての役割を求めて買うのは話が別ですが。

インフレってどんな感じで起こるのでしょうか?
日本もかつてあったんですよね。敗戦直後や石油危機の時など。年間20%、30%も物価が上がる事態なんて想像できません。

知らないこと、想像すらできないことに対しては、強い警戒心を持ちづらいです。そこにリスクを感じる。

株式は長期的にはインフレに強いですが、短期的には弱いです。なので、もし急にインフレ期待が高まることがあれば、株価は大きく調整するでしょう。インフレ抑制のためにFRBが一転利上げしたら、景気は冷え込んで株価はさらに落ち込むでしょう。

インフレという点において投資家はすでに「楽観」状態にあるかもしれません。債券高の流れは当面は続きそうな気はします。しかし、低金利は「陶酔」で消えていくかもしれません。