バークシャーが銀行株を一部売却し、金鉱株のバリック・ゴールドへ投資したことが明らかになりました。バフェットはキャッシュを生まない金への投資には否定的だったので、今回の投資判断はサプライズです(実際にはバフェットの判断ではない可能性もあるが)。
銀行株を売って金を買うというのは、単に低金利の持続を予測している以上の深い意味があるのではと私は疑っています。それは信用貨幣から商品貨幣の時代への移行という意味です。
現代の経済に流通している紙幣(円やドル)はすべて信用貨幣です。銀行が企業や個人に融資した結果創出されたマネーが巡り巡って、あなたの財布や銀行口座に存在するわけです。
銀行は「この会社、人はちゃんと返済してくれる可能性が高い」と信用しないとお金を貸してくれません。ソフトバンクはいざという時は多額のアリババ株を売却して返済資金を用意できるから、みずほ銀行はあれだけ資金を融資できるわけです。
あなたの財布の1万円札も元をたどれば、みずほ銀行がソフトバンクに貸したお金かもしれません。お金に色はないのでわかりませんが。いずれにしても誰かの「信用」であることは確かです。
金や銀が貨幣としての役割を担うと、それは信用貨幣ではなく商品貨幣と言えます。採掘すればそれが貨幣になるわけで、誰かの信用に基づいて創出されるものではありませんから。
これからは信用貨幣が衰退して商品貨幣が大量に流通する時代になるのではと私は推測しています。
なぜなら、銀行からの借金によって大きな資本を調達してビジネスを行う機会が激減しているからです。20世紀は石油の時代、21世紀は情報の時代と言われます。石油の採掘には莫大な資本が必要ですが、情報の複製コストは限りなくゼロに近いです。
中国発の大手SNSであるTikTok米国事業の去就が話題を集めていますね。TikTokを運営するバイトダンスは、張一鳴(チャン・イーミン)が2012年にアパートの1室で創業した会社です。それが10年も経たずして時価総額10兆円を超えるまでに成長しました。
借金によるレバレッジではなく、情報の複製によるレバレッジで成長したのです。バイトダンスのバランスシートを見たことはありませんが、巨大な時価総額に見合うだけの有利子負債を抱えているとは思えません。
つまり10兆円を超える経済価値を生み出したにもかかわらず、それに見合うだけのマネーは創造されていないということ。
企業ないし家計が借金をしないと現代のマネー(信用貨幣)は減少する一方です。そこで商品貨幣にスポットライトが当たります。ビットコインなどの仮想通貨が出てきたのは偶然ではないと思います。
しかしながら、金やビットコインといった採掘する類の商品貨幣はやはり主要通貨の地位を得ることは不可能だと思います。なぜなら、発行量を柔軟にコントロールできないからです。
経済規模に応じて通貨流通量を(間接的ではあるが)コントロールできるのが現代の管理通貨制度の基本です。かつての金本位制、つまり貨幣の流通量が金の埋蔵量やビットコインのマイニング量に左右される世界に戻ることは不可能だと思います。
信用貨幣は成り立たないから商品貨幣が必要。でも商品貨幣は信用貨幣のように流通量を柔軟にコントロールできない。
そこで登場するのが財政政策です。
民間の銀行が信用を供与する機会が減り、世の中に出回るお金の量が減ってしまうのであれば、政府が紙幣を刷りましょうというわけです。今回のコロナ禍で日本政府が国民一人に10万円ずつ配ったように。
政府が特定の事業目的を持たずに紙幣を刷る場合、それは形式的には信用貨幣だけど実質的には商品貨幣だと言えます。政府のバランスシートの負債に計上されるので、会計的には信用貨幣と同じ性質があります。しかし、特定の個人や企業の返済能力を見極めてお金を融通するわけではないので、そういう意味では信用貨幣とは言えません。商品貨幣です。
世の中にお金がなかったら、どれだけ事業者が頑張っても経済は回らないわけです。多少無理矢理にでもマネーの量を維持する必要性が出てくるんじゃないかと思います。今はまだそこまでの段階ではないと思いますが。将来的に。
勝手な空想ですが、そんな未来を想像してます。必然「働く」ことの意味も大きく変わります。私たちは色んな意味で激動の時代を生きているんだと思います。
自分もウェルズファーゴ損切りして、qqqを買い増しました!
先進国は需要を供給が満たしてインフレしにくくなっており、オーストラリアが29年間リセッションがなかったのは、財政を出しているからなのかなとなんとなく思っております。
中国も財政支出を昔に比べると激増させており、コロナ禍でアメリカも財政を出していますね。近年中央銀行の金融政策がスポットライトを浴びてましたが、財政が経済の主役になりつつあります。
ただ政府支出(赤字)の原資となる国債の買い入れは銀行の信用創造によって行われていると考えます。hiroさんの意見を否定するつもりではありませんが、自分がその部分の境がイマイチピンときません。
自分は(アメリカ)株式の潜在的リターンの考え方として、例えばアメリカ株式市場全体の時価総額が5000兆円とした場合、アメリカの財政赤字が500兆円増えたら、それら全てがアメリカ企業の消費へ回れば、10%の株式押し上げ効果があると考えます。現実には他の様々な要因が絡みますが。
逆に日本のように財政を出しても消費されずに、企業や家計にため込まれるだけならダメですが。
不況が株主リターンを加速させるとシーゲル教授は言ってたと思いますが、より本質的(失礼!)には上の理由で株主リターンを加速させると思います。
>政府支出(赤字)の原資となる国債の買い入れは銀行の信用創造によって行われている
考えていること同じです。
同感、おっしゃる通りだと思います。私もその理解です。
政府の国債発行も銀行を経由して資金が放出されます。
ただし、銀行がリスクを取って資本を融資するわけではないので、銀行収益への貢献は僅かです。
銀行というシステムの利用料は取れるとしても、信用創造が生み出す利息収入はないですかね。
つまり、実質的にこれは信用創造とは言えないと思っております。
理解違いだったらすみません。
>先進国は需要を供給が満たしてインフレしにくくなっており
ここも同じ認識です。
制約要因は供給だと思います。
特に日本でそうですか、供給を十分に生かせない程度のマネー創造しかやらないからデフレ時代があったと思っています。
あのことはマネー創出どころか緊縮財政だったので、デフレになるのは必然ですが。
いかに供給が追い付くギリギリまでお金を刷ることができるか。
あまりにやりすぎて限度を超えるとインフレが進行して、経済にダメージです。
コロナ禍での財政出動程度では今のところ大丈夫ということがわかっています。
ただ、お金はまだ米国民の口座に眠っていて、これが経済に一気に出ていく時にインフレ率、金利がどうなるかです。
MMT的政策の良い実験になっていると思います。
コメントありがとうございます。
最近このようなテーマの記事が増えてきましたね。
Hiroさんの「お金」とその今後についての見解には概ね同意です。
ただHiroさんほどにはディープなとこまで考えが及んでいないところもありますので、
持論の整理とレインフォースメントを行うことができますから、
もしよろしければこのような記事を今後とも期待しています。
金融セクターの取扱いに絡んでくることもありますでしょうし。
ところで、Hiroさんの電卓はシャープですか?カシオですか?
いま自分がWFC株を持っているから、余計にこういうことを考えちゃうのだと思います。
思考、勉強につながるのが個別株投資の一つの面白さかなと思っています。
「お金とは」という話題は今後もちょくちょく喋りたくなると思うので、良かったらお付き合いください。
電卓はシャープです!
今はもう生産中止してる非売品なので大切にしてます。
学生時代からもうかれこれ15年近く使ってます。