昨日、「アップル時価総額1兆ドル達成の原動力は自社株買い」という記事を書きました。FY13からFY19までのアップルの自社株買い累計金額は3千億ドルを超えており、これが時価総額上昇(株価上昇)に大きく寄与しています。

アップルと言えばバフェットの(バークシャーの)筆頭銘柄ですね。現在のバークシャーの上場株ポートフォリオの主力は以下です。括弧内は構成比。
アップル(26.0%)
バンクオブアメリカ(12.6%)
コカ・コーラ(10.1%)
ウェルズファーゴ(8.9%)
アメリカンエキスプレス(8.4%)

アップル以外のバフェット銘柄も積極的に自社株を買い戻す企業として有名です。

たとえば、アメリカンエキスプレス(AXP)のFY13~FY18までの5年間の自社株買い総額は216億ドルです。これは同社の現在の時価総額987億ドルの22%に相当する規模です。ウェルズファーゴ(WFC)は同期間に626億ドルの自社株買いを実施しており、これは同社の現在の時価総額2,248億ドルの28%に相当します。

バフェット銘柄は自社株買いだけでなく、配当もしっかり払っている企業が多いです。コカ・コーラは100年以上継続して配当を支払っており、連続増配年数は56年にもなります。

バフェットが株主還元に積極的な銘柄を好むのは偶然ではないと思います。そういう銘柄の長期リターンが高くなると踏んでいるからでしょう。

私は高配当銘柄が有望だとは今は思ってませんが、高還元銘柄は有望だと今でも思っています。つまり、配当だけでなく自社株買いも加味した総還元利回りが高い銘柄ということです。なぜなら、いくら企業が利益を稼いでも、それを株主還元に回さないと株主利益とは言えないからです。稼いだ利益を株主還元に回して、初めて企業利益=株主利益となります。

自社株を買い戻すと発行済み株式数が減ります。株価は将来のEPS(一株当たり利益)を現在価値に割り引いた結果です。単純に言うと「株価=EPS / 割引率」です。EPSが上昇すると理論株価は高くなります。

「EPS=純利益 / 発行済み株式数」です。自社株買いを行って分母の発行済み株式数が減ればEPSは上昇しますね。だから、自社株買いは株価を押し上げます。企業の多額の買い注文が入って相場が過熱して株価が上がるではなく、将来の予想EPSが上昇して理論株価が上がるからそれに従って株価も上がると理解しておいた方がよいです。

自社株買いは将来のEPSを確実に押し上げます。EPS分子の純利益は、調子が良い年悪い年によって変動します。しかし、EPS分母の発行済み株式数は年によって予想外に増えたり減ったりしません。自社株買いによって株式数が減れば、その効果は新株を発行しない限り永続します。ここが自社株買いの好きなところです。確実に(理論)株価を押し上げる効果があります。

いや、実際には自社株買いを続けても株価が上がらないことはありますよ。たとえば、ウェルズファーゴは過去5年で時価総額の28%相当もの自社株買いを実施したと言いました。しかし、株価は以下の通りです。

ほっとんど横ばいですね。この5年のリターンは配当のみです。寂しいもんです。これが株式投資の厳しい現実です。

しかし、こんな株価チャートであっても、ウェルズ株主は自社株買いによって恩恵を受けています。FY13からFY18にかけてEPSは27%上昇しています。不正営業の問題もあって業績は芳しくはなく、純利益総額はこの5年ほぼ横ばいです。しかし、自社株買いによって発行済み株式が減ったためEPSは増えました。

EPSが上昇すれば株価も上がるはず? いや、それは違います。あくまで「理論」株価が上がるだけで、それと実際の株価がすぐに整合するわけではありません。でも、EPSが増えているということは、株主の儲けは確実に増えています。今はそれがまだ株価に反映されていないだけ。増配によっていくらかは還元されたでしょうが、まだまだ多額の自社株買いによる利益還元は株主利益として実現していません。

長く株を保有してれば、いつか自社株買いが株主利益に反映される時が訪れます。長期的には企業利益=株主利益です。自社株買いでEPSが増えるなら、株主リターンも増えます。

コツコツ自社株買いを続けてEPSを上げ続ける銘柄を長期保有すれば、高い投資リターンが期待できると思います。もちろん、自社株買いではなく配当として利益を受け取って、それを再投資するのも良いです。配当の場合、課税されちゃうのがネックですけどね。私は実際に入金される配当を好むところがありますが、自社株買い銘柄も好きですよ。株価上昇を期待している云々ではなく、「ああ、EPSが濃縮されるわ~」と感じられるのが良いです。んなの感じてるの私だけかもしれませんがw。

配当、自社株買いを合わせた総還元額が多い銘柄が長期投資では有望だと考えています。なので、無配でかつ自社株買いも少ないアルファベットよりもアップルの方が好きです。

株主還元ばかりに資金を回して成長投資を疎かにすると衰退するのでは、と不安になるかもしれません。確かにそのリスクはあります。だからこそ、多額の資本投資をせずとも事業を維持、繁栄できるごく一部のワイドモート企業を選ぶことが重要です。たとえば、決済大手のビザ(V)がそれに該当します。アップル(AAPL)もその域に達しています。コカ・コーラ(KO)やマクドナルド(MCD)も株主還元が多い優良銘柄だと思います。