連続増配年数が50年以上の企業を配当王(Dividend Kings)と呼ぶことがあります。連続増配年数が長い順に配当王を並べてみます。

ティッカー 会社名 増配年数
AWR アメリカンステイツウォーター 65
DOV ドーバー 64
NWN ノースウェスト・ナチュラル・ガス 64
PG プロクター&ギャンブル 63
EMR エマソン・エレクトリック 63
PH パーカー・ハニフィン 63
GPC ジェニュイン・パーツ 63
MMM スリーエム 61
CINF シンシナティ・ファイナンシャル 59
JNJ ジョンソン&ジョンソン 57
KO コカ・コーラ 57
LOW ロウズ・カンパニーズ 57
LANC ランカスター・コロニー 57
FMCB ファーマーズ・アンド・マーチャンツ・バンコープ 57
CL コルゲート・パルモリーブ 56
NDSN ノードソン 56
HRL ホーメル・フーズ 53
TR トッツィロール 52
SWK スタンレー・ブラック&デッカー 52
SJW SJW 52
CWT カリフォルニア・ウォーター・サービス 52
SCL ステファン 52
TGT ターゲット 52
ABM エービーエム・インダストリーズ 52
CBSH コマース・バンクシェアーズ 51
SYY シスコ 50
MO アルトリアグループ 50

馴染みのある銘柄もある一方で、聞いたことない企業もあります。日本企業ではもっとも連続増配年数が長い花王ですら29年ですから、上記企業はいずれも優秀であることがわかりますね。

さて、投資アプリSeeking Alphaはこの有能な配当王を母集団として、もっとも質の高い株を選別しています。つまりキングオブキングを決めようというわけです。

評価基準は以下の5つ
・Value Lineの安全性ランク
・Value Lineの財務力
・モーニングスターの経済的堀
・S&Pの信用格付け
・配当安全スコア(SSD)

少し補足します。Value Lineとは米国の投資調査会社です。同社が設定している指標に安全性ランクというものがあり、1(最高)~5(最低)の5段階あります。ディフェンシブ性を評価しており、4,5の銘柄はボラティリティが激しい傾向にあります。また、同社の財務力(Financial Strength)とはBS、ビジネス環境、キャッシュフロー等から判断されます。信用格付けに近いものです。

上記5つの指標をもとに配当王を格付けしています。

では結果を見てみましょう。

最高品質の2社

ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)
プロクター&ギャンブル(PG)

この2社は5つの指標すべてで満点という結果でした。サプライズではないですね。世界的に名の知れた企業です。

特にJNJはバリュエーション的にもやや割安感があります。モルガンスタンレー、バークレイズは最近JNJを「オーバーウェイト」にしました。バークレイズのアナリストはJNJの目標株価を173ドルに設定しています。まあ、目標株価はあまり気にしてませんが、JNJが買い場に見えるのは同感です。アスベスト関連の訴訟リスクがあるので、それをどれくらい織り込むかが人によって様々だろうとは思いますが。

一方で、PGは株価はかなり高い様に見えます。2020年の予想PERは25倍を超えています。

どっちか一つ選べと言われれば、今ならJNJかな。

高品質の4社

一つないし二つの指標で満点ではなかったけど、他すべての指標で満点を獲得した高品質銘柄が以下の4企業です。

コルゲート・パルモリーブ(CL)
スリーエム(MMM)
コカ・コーラ(KO)
エマソン・エレクトリック(EMR)

これまたどれも大型株ですね。

口腔ケア大手のコルゲートは以前保有していた銘柄です。今は売却済み。この5年ほど株価は横ばいが続いていますが、そろそろ切り上がってくるでしょうか。

化学・電気素材メーカーのスリーエムは2018年1月に高値の260ドル付近に達しましたが、以降は軟調で現在は170ドル前後です。配当利回りは3.4%まで上がっており、なかなか投資妙味がありそうに見えますが、マーケットが株を売っているということはそれなりの理由があるはずで楽観はできません。ただ、連続増配61年という実績があり、Value Lineやモーニングスターの格付けも素晴らしいとなれば、長期的に見れば買い場の可能性が高いんだろうなって思えます。

最近、資本財セクターを1つ追加しようかなと思い銘柄を検討中です。財務データを見る限りはユニオンパシフィック(UNP)が好みなのですが、ちとPER高いなあと感じています。スリーエムももちろん財務データ優秀ですけどね。割安度を考えれば、ここはスリーエムの方がいいんだろうか。

コカ・コーラ(KO)は言わずと知れた清涼飲料大手です。表面的にPERを見るとちょい割高に見えます。持続的な利益成長なしには正当化できない水準です。今のKOやPGみたいに、オールドエコノミーの優良株がS&P500指数のPERを大きく超えている時、買うべきかどうか非常に悩ましいです。長期で見れば恐らく「買い」なのでしょうが、短期的にはバリュエーションが剥がれ落ちて株価が下落するリスクが怖いです。。

バリュエーションを気にしつつ優良銘柄を厳選する

いつの時代も銘柄選別は大切ですが、2020年代は特にそれが言える10年になりそうです。というのも、主要ベンチマークであるS&P500指数のPERはかなり高いからです。2020年予想ベースで18倍です。緩和的な金融政策に支えられて、この10年株価が上がり続けました。インデックス投資人気も指数押し上げにいくらか貢献しているでしょう。

高利回りの割安感ばかりに誘惑されて、品質の低い銘柄を掴んでしまうと長期投資では負ける可能性が高いです。バリュエーションの高低よりも、先ずはビジネス、財務力の強い銘柄を選ぶことが重要です。でもバリュエーションも大事。ジレンマです。。

銘柄選別にあたって、連続増配年数というのも一つの視点として使えます。50年もあれば景気が何度か循環します。2000年代だけを考えても、ITバブル崩壊とサブプライムローン危機を乗り越えて増配を続けれるということは、かなり事業基盤が強いことの証です。

もちろん連続増配年数が長けりゃ即OKってわけでもないですけどね。あくまで一つの視点です。株主還元歴が短いIT企業は配当王には選ばれませんが、マイクロソフトやビザ、フェイスブック、アップルなど検討に値する銘柄が多くありますし。

ただ安心感という点では、技術変化の早いテクノロジー株よりも今回紹介したオールドエコノミー企業の方が上だなと感じます。バランスよくポートフォリオを組めるといいですね。今回、高品質 or 最高品質に選ばれた6銘柄でPERがほどほどであれば、買っておいて大きな問題はないだろうとは思ってます。目先の株価は読めませんが。