金融商品代表が株なら、リアルアセット代表は不動産です。賃貸マンションを買って家賃収入を得るのも立派な投資です。インカムを生むものは何でも投資です。

あなたの手元に3000万円あるとします。
株と不動産どちらを買いますか?

私は利回りが同じなら迷わず株を選びます。自分が株式投資家だから言っているのではなく、客観的に分析して不動産よりも株の方が有利だと確信しています。現に株式ばっかり買ってます。あ、株と言ってもS&P500指数みたいに長期保有に耐えれる優良株に限りますけどね。財務ボロボロの低位株は対象外とします。

株式の有利な点

株式が不動産より優位な点は3つほどあるかなと思います。

①株式利益は長期的に複利で増えるが、家賃収入は固定的
②株式はメンテナンスが不要
③株式は途中で壊れることがなく半永久的にキャッシュを生む

①について、株式収入は長期的にドンドン増えていきます。以下はS&P500指数の1990年~2019年までのEPS(一株当たり利益)の推移です。

(ソース:multpl.com

1990年に40ドルだったEPSは2019年には133ドルにまで増えています。30年で3倍以上になりました。しかも、途中ITバブル崩壊とサブプライムローンによる金融危機を経た上でです。さすがに、2000年代初頭と2008年はEPSが激減していますね。でも、その後しっかり復活しているのがわかります。

家賃収入はこういう増え方をしません。家賃は上方にも下方にも硬直性があります。家賃6万円の1Rの物件は10年経っても家賃は6万円前後のままでしょう。せいぜい6万3千円とかちょっと上がるくらい。というか、建物の物理的な劣化に伴って少し家賃を落とさないと入居者が付かないことも多いです。

株式収入が時間とともに増えるのは、企業収益が全体として増えていくからです。毎年のフリーキャッシュフローや借金を元手に事業に再投資することで売上、利益は拡大します。また、自社株を買い戻すことによってEPSを増やすのも米国企業のお家芸です。

不動産の家賃収入は時間とともに増えていく性質ではありません。ただ、入居者がいる限り2008年のEPSのように、突然収入が半分以下になるようなこともありません。そこは家賃収入の良いところ。

株式はリセッションやバブル崩壊、金融危機でEPSが急落することもありますが、そのリスクを考慮しても長期的に収入が増えていくことのメリットの方が大きいと思います。

②について、株式はメンテナンスが不要でただ保有するだけで配当が貰えるし、株価が上がればキャピタルゲインを得ることができます。

一方で不動産は客付けのために仲介会社とのコミュニケーションが欠かせないし、定期的にリフォームが必要です。リフォームする時も適切に業者と交渉しないと足元見られて高値を請求されます。災害で建物が被害を受けたら、きちんと保険請求しないといけません。

株式投資はホントにノーメンテで問題ないです。決算ウォッチくらいです。インデックスに投資しているなら、個別企業の決算すら見なくても問題ありません。総じて株の方が不動産よりも管理が楽です。不動産のリアルアセットに対して、株はペーパーアセットと言われます。紙どころか現代は電子データですから、管理は楽ちんです。

③について、株は優良銘柄を選んでおけば、その価値は永続します。しかも上述の通りメンテなしで。不動産はそうはいきません。形ある建物なので風雨で劣化するし、最悪地震などの災害で倒壊する恐れがあります。次々と新しい競合物件が表れることで、設備の陳腐化も起こります。

鉄筋コンクリート造マンションの法人税上の耐用年数は47年です。まあ現実もそんなもんでしょう。株式はそれどころじゃありません。S&P500指数には創業100年を超える企業も普通に存在します。私の保有銘柄で言うと、ウェルズファーゴは1852年創業、ジョンソンエンドジョンソンは1887年創業です。

株式は
・長期で収入(EPS)が増えていく
・メンテナンスがほぼ不要
・価値が永続する(一部の優良株に限るが)

という点で不動産よりも価値が高いと思います。

不動産の有利な点

不動産投資にも魅力はあります。
大きく2つ思い付きます。

①株式では考えられないほどの高利回りが狙える
②銀行融資が付きやすくレバレッジを掛けられる

①が不動産投資最大の優位性です。物件の目利きができ、かつしっかり管理するやる気があれば利回り20%、30%を狙えるチャンスが不動産投資にはあります。ただし、ただ仲介会社から物件を買って賃貸に出すのではなく、ボロボロの物件を超安値で買って自分でリフォームするなどの努力が求められます。こうなると、もはや「投資」というより「ビジネス」ですね。

株にも利回り20%(つまりPER5倍)の銘柄はありますけど、そんな銘柄に安易に手を出したところで、その20%の利益は往々にして持続しません。固定的な家賃収入で投資額の20%超を稼ぐことができれば、それはかなり大きいです。3000万円投資して毎年600万円超の現金収入があるということですから。

②の借金も不動産投資の良いところです。銀行は実物資産である不動産が好きですよね。不動産が担保に入っており、かつサラリーマンとしての給与収入があれば大抵いくらかは銀行はお金を貸してくれるでしょう。

株式はなかなかそうはいきません。「株を買いたいから金を貸してくれ」と言っても銀行は低利では貸してくれないのが普通です。

なぜ不動産が好まれるのか?

不動産投資の強みとして、物件を適切に選別できれば株では不可能なほどの高利回りを狙えると言いました。が、そういう物件は一般には出回っていません。「都内 不動産投資」などでググると色々と物件が出てきますが、それらの期待利回りは5%~6%程度ですよ。

利回り5%ということはPERで言うと20倍です。最近のS&P500指数と変わりませんね。つまり、都内の一般的な賃貸不動産と米国株の利回りは同じということです。

この状況で、つまり利回りが同じ状況で、米国株ではなく不動産を投資対象に選ぶ理由って何かありますか?

私にはわかりません。これだけ優位性のある株式を差し置いて不動産を買う理由は見当たりません。

しかし、現実的にはこのような5%程度の利回りで不動産投資に手を出す人はいます。

なぜか?

S&P500指数やNYダウなどの優良株投資の存在を知らないからか、手元にキャッシュがないからレバレッジをかけれる不動産投資に目が行くのか。

それもあるでしょうが、より根本的には株式投資がギャンブルとしか思われていない点があると思います。株式収入の本質はEPS、つまり企業利益なわけですが、大半の人は株式収入の本質は株価だと思い込んでいます

株価は上がったり下がったりしてようわからんし不安定だと思っちゃうんです。思っちゃうというか、株価が不安定なのは事実ですけどね。でも見るべきはEPSです。株式投資家にとってのEPSとは、不動産投資の家賃収入みたいなものです。しかし、そのEPSは実際に投資家の口座に入金があるわけじゃないし、株価に素直に反映されるわけでもありません。株価は短期的にはEPSよりもPER変化によって動きます。

不動産の家賃収入は毎月同額のキャッシュインがあります。それが心理的に大きな安心感を与えるんだと思います。「ああ、不労収入を得ているな」と感じられます。株式投資は投資先企業が増益を達成しても、それが株価や配当に反映されないと儲かっている感じがしないです。

平たく言うと、株式より不動産の方が投資収入の性質が分かりやすいということです。

利回りが同じなら、不動産より株の方がいい!

利回りが同じ5%なら、S&P500指数ではなく賃貸マンションを選ぶ経済合理的な理由はあまり見つかりません。まあ、レバレッジを掛けやすいくらいかな。

もし不動産に手を出すなら、利回りは最低でも株式の2倍は求めたいです。いや、それでも足りないかな。やっぱ20%くらいないと、やる気にならないかな。20%の利回りとなると、相当自分の労働力を投入せねばならないでしょう。

株式投資のしんどいところは、配当という安定収入が少ないことが多く(無配株もある)、短期的な投資利益が株価に支配される点です。そして、ほとんど人が株価こそが株式利益の本質だと思っています。そうではなく、企業の利益を見なくてはなりません。

株式とは企業の持分を細分化したものです。株式を持つとは企業の所有者になることです。株式を持つとは企業の税引き後利益、残余財産に対する請求権を持つということです。株式を持つとは企業のバランスシートの純資産にアクセスすることです。こういう株式の本質を理解している人にとって、利回りが同じ株と不動産で選択に迷うことはないはずです。

S&P500指数やNYダウってホントに素晴らしい投資対象だと思いますよ。現在の米株の予想PERは19倍弱(利回り5%強)で割高と言われますが、長期投資なら問題ないと私は思っています。上に列挙した株式の優位性を理解できれば、利回り5%でもまあまあ満足だと思えませんか。インフレ率も低いし。