多少PERが高くとも強い企業の株を買った方が報われることが多いです。特に長期ではそうです。

バフェットはそういう企業の特徴を「広い堀(ワイドモート)」なんて言葉で表現しています。

堀が広いと敵はなかなか攻め入ることができません。競合の脅威にさらされることなく、自社のビジネスに集中でき、結果として株主の財産も増えます。

そんな「広い堀」のある企業の株を買いたいところ。

どうやって見分けるか?

一つの方法として企業の利益率推移を見るという方法があげられます。

粗利率は業種によってまちまちなので、営業利益率を見るのがいいかな。できれば一時要因を除いた調整後営業利益率を見たいところですが、外部サイトで推移を確認出来ないことが多いです。とりあえずは普通の営業利益率でいいでしょう。

過去10年の営業利益率推移を見て、平均して20%を超えていれば「広い堀」がある優良企業と言える可能性が高いです。

20%とはかなり高いハードルですね。日本企業ではほとんどないかも。15%をハードルにしてもいいところですが、あらゆる企業に自由に投資できる環境がせっかくあるのですから、ハードルは高く設定しても問題ないと思い20%と言いました。

なぜ利益率が継続して高いと「広い堀」があると言えるのか。

利益率が高いということは儲かるビジネスということです。たくさん儲かるなら、普通に考えれば大勢の競合が押し寄せてきます。そして価格競争が起こり、段々と超過利潤は減っていき、利益率も下がっています。

儲かるビジネスが目の前にあるにもかかわらず、競合が出現せず価格競争が起きないということは、参入したくても参入できない何か(=「広い堀」)があるということです。

その参入障壁が何のか自分なりに分析して言語化できるに越したことはないけれど、別にそこまでできなくても数字が証明しているのであれば、それで結構ではないでしょうか。

たとえば、大手格付け会社のムーディーズ(MCO)を考えてみます。バフェットが20年間保有し続けている銘柄です。

MCOの過去10年の平均営業利益率は42%。調整後営業利益率は推移は取れなかったですが、直近FY20決算では50%を超えていました。

べらぼうに高い利益率から、MCOには「広い堀」があると判断できます。

MCOの主要ビジネスは企業や公的機関の信用リスクを評価して格付けを付与することです。Aaa、Aa1とかですね。

私は一応会計士です。財務知識はあります。企業の信用リスク評価くらいやろうと思えばできそうなものです。信用格付けというのはそれほど参入障壁が高いビジネスなのでしょうか?

わからんけど、MCOの決算データを見る限りそうなのでしょう。信用リスク評価のノウハウもあるでしょうが、「信用格付けと言えばムーディーズないしS&Pだよな」という社会のコンセンサスが肝かもしれません。

社債を発行するにはムーディーズやS&Pの格付けがないと投資家が信用してくれない。であれば、他機関を検討している余地はない。とりあえずムーディーズの格付けを取っておかないと。そう企業のCFOは判断するでしょう。

だから、利益率50%を超えるくらい儲かるにもかかわらず、信用格付けビジネスには競合が押し寄せてきません。よって、ムーディーズは超過利潤を享受し続けることができ、バフェットを始め同社の株主は市場平均を超えるリターンを獲得することができました。

私の説明が正しいかどうかはわかりませんが、とにもかくにもムーディーズの利益率がずっと高位安定しているという客観的な事実があります。それだけでも「広い堀」がある証明として十分だと思います。

(参考記事)
ムーディーズ(MCO)銘柄分析