僕はかなり情報音痴です。iPhoneなどのハイテクデバイスを十分には使いこなせていない上に、身近に情報提供してくれる友達もいない。フェイスブックもTwitterもやったことない。なので、読者さんからサイトやアプリを教えて頂けて、とても助かっています。有効活用してます。ありがとうございます。

先日こんな面白いサイトを紹介して頂きました。

DATAROMA

著名なファンドのポートフォリオを覗けます。最近オリンパスに投資して話題になった、ジェフリー・アッベン氏のバリューアクトキャピタル。物言う株主として有名なビル・アックマン氏のパーシング・スクウェア・キャピタルマネジメント。ビル&メリンダ・ゲイツ財団。クリアブリッジなどなど。

ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイのポートフォリオも見れます。以下が2018年12月末時点のバークシャー保有の上位15銘柄です。

グラフにしてみました。

IBMへの投資失敗(売却済み)、昨年末のアップル株の急落、クラフトハインツの業績低迷など、最近のバフェット先生の投資パフォーマンスはお世辞にも良いとは言えません。

しかし、バークシャーの上場株運用には他のヘッジファンドにはない圧倒的な優位性があります。この優位性を考えれば、バークシャーの運用成績は今後も長期では期待できると思います。高いコストでヘッジファンドに投資するくらいなら(投資できるのか知らないけど)、バークシャー株に投資したいです。

バークシャーがヘッジファンドよりも優位な点とは何か。

情報量?
マンガーのサポート?

いやいや、バークシャー最大の優位性は同社がエクイティで資金を調達している点です。バークシャー・ハサウェイは株式会社です。ファンドではありません。過去に株式を発行して投資家から資金を調達しています。上場株運用だけでなく、保険事業や鉄道事業を営んでいる事業会社です。

株式で調達した資金は返済義務がありません。あなたが投資先企業の業績に嫌気が差して株を売却したとしても、企業から資金が流出するわけではありませんよね。あくまで他の投資家に売るだけです。企業は自社株買いとして自発的に株主に資金を返還することはできますが、株主からの要請で資金を返済することはありません。

もちろん株式発行はタダで資本を調達しているわけではありません。株主に相応のリターン(配当、キャピタルゲイン)で報いる必要があります。株主資本は相対的に高コストですが、返済義務がないというのは運用マネージャーにとって、とてつもないメリットです。

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』はリーマンショックで大きな利益を上げたファンドマネージャー(トレーダー)の闘いを描いた作品です。「サブプライム・ローンは必ず破綻する!」、そう信じてポジションを取り続けた男たちのドラマです。おもろいです。

主人公のファンドマネージャー(トレーダー)はジレンマに陥ります。サブプライムローンは絶対に崩壊すると自分は信じているけど、資金を預けてくれている投資家が次々に解約請求をしてくるからです。金融危機で市場が混乱してるから、投資家がリスク資産を現金に変えたくなるのも当然です。

でもサブプライムローンの裏側、内情を知っているトレーダーは「このまま俺に資金を預けてくれたら、いずれ大きな利益を取れるんだ!」と確信しています。でも投資家から解約要請があれば、お金を返さなくてはいけません。それがルールです。ファンドを凍結するというのは奥の手、最終手段です。

ここがファンドマネージャーの辛いところ。このままホールドしたい、ホールドすれば最終的には投資家の期待に応えることができる。そう思っていても、投資家から解約を求められれば、泣く泣く運用資産を売却して返金のための流動性を確保しなくてはなりません。市場が暴落し株価が底値の時に大量の解約請求が来るものです。「今こそむしろ買い時だろ!」という時に、投資家の要請に応じて売らざるを得ない。

こういう事態がバークシャーには起こりません。なぜなら、バークシャーは返済義務のないエクイティで資本を調達しているからです。このメリットは計り知れないくらい大きいです。エクイティ資本だからこそ、バークシャーは株主利益のために長期目線で運用できます。

最近、クラフトハインツ(KHC)が150億ドル以上のブランド価値の減損損失を計上し、配当を36%もカットしました。結果論ですが、KHCの27%の持分を取得したバフェットの投資判断は不適切だったと言えます。バークシャーの業績にも当然悪影響で、バークシャー株主は相応の損失を負担することになります。

ただ、ここでバークシャー株主は「おいバフェット、マンガー、お前らの投資判断どうなってるんだ。もう信用しないぞ。投資資金を返せ!」とは言えません。もちろん、バークシャー株を売るのは自由です。B株なら流動性も豊富で簡単に売却できるでしょう。

でも、あなたがバークシャー株を売ってもバークシャーからは1ドルたりとも現金は流出しません。バークシャー株主が離れてしまっても、バフェットは無理に株を売却する必要はなく、改めてじっくり今後の投資戦略を練ることができます。自らの意思に反してクラフトハインツ株を投げ売りする必要もありません。

今、バークシャーには手元現金が1000億ドル以上もあります。この1000億ドルで買収をするか自社株買いをするか、悩んでいるようです。でも、もしバークシャーが株式会社ではなくファンドだったら、手元現金の一部は投資家からの解約請求に応じるために使われることでしょう。

いつどれくらい投資家から解約請求が来るか、ファンドマネージャーはわかりません。急な解約に備えるため、いくらかは現金を余分に持っておきたいという思いもあるかもしれません。

バークシャーはそういう心配事を抱えることなく、自分の意思で現金量をコントロールできます。自社株買いで資金を投資家に返還するかしないか、これはひとえにバフェットの判断次第です。

バフェットは2018年の株主向け書簡でこんなことを言っています。

Berkshire held $112 billion at yearend in U.S. Treasury bills・・・

(バークシャーは年末時点で1,120億ドル相当の財務省短期証券を保有し、、)

(中略)

At times, our stock will tumble as investors flee from equities. But I will never risk getting caught short of cash.

(投資家が株を売ってエクイティから逃げれば、バークシャーの株価は下落するでしょう。しかし、私たちは決して現金を失うことはありません。


まさにこの文章がエクイティ資本の強みを表現しています。投資家が株(エクイティ)を売っても、バークシャーから現金は流出しないのです。

返済義務のないエクイティで資本を調達している。これはヘッジファンドにはない、バークシャーだけの大きな優位性です。この優位性なくして、これまでの年率20%超の投資リターンは実現しなかったと思います。

(『マネー・ショート』について、昔記事にしました)
あー痺れる!! 映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』