わからなことがあったら大抵のことはググったら答えが返ってきます。求めている100%の情報ではないにしても、何らかヒントくらいは掴めます。今時ググって一切情報が出てこないことなんてほとんどありませんよね。
便利な時代ですよね。会計士と言えば昔は難しい会計基準を知っているが故にクライアントから「先生!」なんて言われて接待されていたわけですが、今では会計基準なんてググればすぐに調べれます。別にだからって会計知識が廃れるわけではありませんけどね。情報、知識、知恵は違いますから。
グーグル先生に質問すれば色んな回答が返ってくるわけですが、その情報をすべて無条件に信用するわけにはいきません。グーグルは信頼性の高い情報を検索上位に表示させるようアルゴリズムを組んでいるはずですが、それでも記載内容に間違いがあることは想定しておく必要があります。私もブログで間違ったことを書いてしまったことあります。誤った財務データを公開してしまって、読者さんに指摘されて気付いたこともありました。
先日、某メディアの記者さんとお話させて頂く機会があったのですが、新聞や経済誌でも事実と異なる情報が載ることは普通にありますよ~って仰っていました。まあ記者やライターも普通の人間だしそりゃミスくらいあるわな。面白かったのが、記者とは言え普通のサラリーマンで3年おきくらいに異動があるそうで、仕事に慣れて良質な記事を書けるようになったくらいで別の部署に異動になっちゃうそうです。これ日本企業あるあるですよね。教育してノウハウ教え込んでこれからって時に別の部署へ異動ってありませんか。
権威あるメディアですら誤った情報を載せてしまう可能性があるわけです。ネットに漂う数多くの情報をどれくらい信用してよいかは悩みどころ。事実なのか意見なのか、読み手がきちんと区分けすることも重要だと思います。事実は正誤をはっきり区分できるけど、主観的意見は正しい誤りという議論はできず反感ないし共感があるだけ。事実と意見が混在しているケースはよりやっかいです。
とまあ、こんな混沌とした環境で私たちは日々情報に接しているわけですが、キラリと光る情報があります。この世でもっとも信頼が置けると言っても過言ではないデータがあります。それが(法定)財務諸表です。日本で言えば有価証券報告書や四半期報告書、アメリカで言えばForm 10-KやForm 10-Qなどです。
これら財務諸表の信頼性は非常に高いです。なぜなら、いくつもの厳重な確認プロセス(これを内部統制と呼ぶ)を経ているからです。数字や注記に間違いがないか、毎四半期何時間もかけて開示直前まで大勢でチェックしています。
また、高額な報酬を払って外部監査まで受けています。米国の大手企業であればEY、PwC、KPMG、Delloiteといった大手会計事務所が監査を担当しているのが通例です。多数の優秀な会計士が在籍しておりチャージ料金も高額です。アップルの監査報酬は10億円超、エクソンモービルのそれは30億円超です。特殊な専門知識が必要な金融機関の監査報酬はもっと高額です。バンクオブアメリカの監査報酬なんて100億円近いです。これだけのコストを払って財務諸表の正確性を担保しています。
これはすごいことです。ここまで情報の精度、信頼性向上に金をかけているアウトプットは他にないのではないでしょうか。毎日何億というコンテンツがネット世界に投下されていますが、財務諸表ほど信頼性の高い情報は他にないと思います。財務諸表なんて無機質なつまらないデータで見たいと思うことは少ないと思いますが(その気持ちわかります・・)、投資家ならぜひ一度は目を通す価値があります。
財務諸表は無料で見れます。企業のIRサイトに行けば誰でも自由に閲覧できます。人はお金を払わないで見れる情報を軽んじる傾向にあります。逆に、お金を払っている情報は元を取るためにしっかり読み込もうとします。私はウォールストリートジャーナルに月5,000円も払っているので、すべての記事を読み込もうと毎日食らいついています。ビュッフェ食べ放題で元を取るために、満腹を超えても食べ続けるのに似ていますw。
しかし、よく考えて欲しいのですが、財務諸表が無料というのは大きな勘違いです。財務諸表は有料コンテンツです。しかも、めちゃくちゃ高額です。なぜなら、財務諸表を作るために膨大な経理部門の人件費、会計システムの導入・運用保守費用、そして前述の外部監査コストなどが掛かっているからです。
言うまでもないですが、経理マンへの給料もKPMGなど監査法人へのフィーもすべて株主負担です。会社の費用はすべて株主のお財布から払われているものです。(そう考えると、株主以外の人が財務諸表を見るのはフリーランチと言えるかも。)
株主にもかかわらず財務諸表を見ないというのは、お金だけ払って飲み会を欠席するようなものです。もったいないもったいない。5千円払ったなら、せめてビール1杯と焼き鳥3本くらいは頂きましょう。権利を放棄するのは自由ですけど、貴重なお金を払ったなら少しでもいいから参加した方がいいですよ。
せっかく大金を投じて作ったものですから、ぜひ株主として財務諸表を見てみて下さい。
言われてみれば、そうですね。財務諸表は当たり前のような存在ですが莫大なコストをかけて作られているんですね。
財務諸表の作り手かつ読み手でもある、Hiroさんしか気付かない視点だと思いました。
読めない人には単なる数字の羅列ですが、読める人には値千金の情報ですね。
会計知識は能動的にならないと得られない知識なので、非常に貴重なものだと思います。
一方で、金融知識、会計知識、種銭を貯める能力、投資する勇気、投資を継続する忍耐力、そもそもこれらを持っている人はそれぞれ1つの要素だけ取っても世の中では実は少数派なんですよね。最近そう思うようになりました。誰でも簡単には出来ないんじゃないかと。
ジレンマがあります。
全部読む人なんてほとんどいない膨大な有価証券報告書を作るのをこんなに頑張る意味はあるのか、いや公正な法定開示は資本主義の根幹だからこの仕事に意義はあるんだ、というジレンマです。たぶん、アナリストですら開示書類はすべて読んでないと思います。
内部統制の費用なども考えれば、財務報告にかけるコストは億単位の会社が大半です。
まあ、やはり公正なディスクロージャーには金をかける価値はあると思います。エンロン事件みたいなことが起こってからでは遅いですから。
おっしゃる通り、金融投資ってやっていることは単純でも正しく実行する知識とマインドは高度です。
「種銭を貯める能力」って盲点かもしれませんが大事なところですね。
種銭を貯めれる人じゃないと資産運用という発想にすら至らないと思います。
若い内からせっせと貯金することが良い行動かどうかは人それぞれですが、やはりこの世の中は「資本」を持つのが有利には違いないです。
金融資本でなくとも「資本」を作れる人は稀にいますが、それは特殊解だと思います。
有価証券報告書はその企業に関する辞書みたいなもので、確かに普段は読みませんが、調べたい事がある時には役立つ情報ですね。
小売店の品揃えと同じですね。普段はほとんど自分にとって不要な品揃えですが、ある時必要になる時が来るものです。
確かに有報は辞書的な使い方が一般的ですね。
舐めるように上から下まで読む人はいないと思います。「読む」という動詞が不適切ですかね。
もうそろそろ2019年3月期の有報提出日です。
ようやく決算終わるー、、と思ったらすぐにQ1決算です。。
Hiroさんと同じく、上場経理マン投資家の犬次郎さんのブログ見てると、本当に大変なんだなと思いますね。
http://kabuinujiro.blog.fc2.com/blog-entry-183.html
うちの会社は新リース基準の適用で大変です。
いつかテクノロジーの進化で有報作成がすべて自動化される時が来るのだろうか・・