年末ということで、普段お世話になっている監査法人の方々とお食事に行ってきました(接待ではありません。費用は分担)。

監査法人側の参加者
・パートナーA
・パートナーB
・シニアマネージャー
・インチャージ(現場責任者)

弊社の参加者
・CFO
・経理部長
・課長(連結決算チーム)
・Hiro

まあメンツを見ればわかる通り、若者同士でワイワイ楽しむ会ではない。はっきり言って面倒くさい。めっちゃ気使います。仕事の一部と思って参加しました。

いやいや参加したのですが、結果として行って良かったです。普段はなかなか聞けない業界裏話を色々聞けましたし。

パートナーBさんがこんなことを言ってて印象に残りました。

私たちの会計監査の目的は、御社の財務諸表が誤った状態でキャピタル・マーケットに出ないようにすることです。われわれ監査法人は御社のビジネスパートナーです。決して敵ではありません(笑)。それを経理部門の皆さんに理解して欲しいですね。

すごくいい言葉だなって思いました。

経理部の責務は、財務諸表(有価証券報告書など)を誤りなく誠実に投資家に開示することです。監査法人の目的も一緒。監査法人は、クライアントの決算書が正しく証券市場に開示されることに責任を負っています。

監査法人は会社のビジネスパートナーである、という発想はとても大切だと思います。というもの、往々にして監査法人と経理部門は対立しがちだからです。対立の原因になっているのが、経理部側の監査制度に対する理解不足です。ネチネチ指摘してくる監査人を自分達の敵だと思いがち。

例えば、監査人は「米国子会社Fの在庫が大きく増えている理由を教えて下さい。」と経理側に質問します。これに対して、「ったくめんどくせーな。いちいち海外にメールせなあかんやん。あいつらに多額の監査報酬を払って俺らにどんなメリットあるんだよ!」ってイライラする人が経理側でたまにいます。

ここでイライラしちゃうのは、監査法人の質問に答えること自体が目的になっているからだと思います。「正しい財務諸表をキャピタルマーケット(証券市場)に開示すること」が、本当の目的のはずなのに・・。その思いは監査法人側も一緒です。別に経理担当者をいじめたくて質問しているわけじゃないです。

監査法人は専門的な分析をしたうえで、必要だから質問しています。つまり、そこに財務諸表の重大なミスに繋がるリスクがあると判断したから、わざわざ経理担当者に質問しているわけです。

もしこの監査の質問がきっかけで、子会社Fの在庫数字に誤りが見つかったら、それは喜ばしいことです。キャピタルマーケットに財務諸表を開示する前に、ミスが見つかって事前に訂正できるならセーフです。投資家に間違った情報は見せていないわけですから。不幸中の幸いです。経理部側は監査法人に感謝しなくちゃいけません。監査法人の指摘がなければ、誤りがある状態で財務諸表が投資家の手元に行っちゃってたわけですから。

監査報酬ってあんま削り過ぎるべきではないと思います。もちろん、企業は常にコスト削減の努力をしていますし、他部門の模範になるべき経理部門は自分達の経費コントロールに厳しいです。でも、会計監査の費用はガツガツ削るべきではないと思います。

正しい財務諸表って空気や水、電気みたいなもんです。あって当然。急になくなったら投資家はめっちゃ困ります。アップルの財務諸表を見ると「営業利益率30%なんてめっちゃ儲かってるな~」って分かるわけですが、そう言えるのはアップルのPLが正しいことが大前提です。

本当のリスクは何か大事が起こった時に初めて明らかになります。平時は、なかなかリスクは見えません。淡々と決算をこなして大きな監査の指摘もない時は、監査法人に数億円のフィーを払うのはアホらしく思うかもしれません。

でもその平時を保つことがすっごく大切なことです。そのコストを数百万円ケチることで、いつか数百億円の損害を被るかもしれません。そうなってからでは遅いです。

まあ別にお金の問題じゃないですけどね。監査制度に対する理解の問題です。監査法人=敵って思ってる人があまりに多いと感じます。監査法人はビジネスパートナーです。仲良く付き合って、お互い上手くコミュニケーション取って、正しい財務諸表をキャピタルマーケットに出すという共通の目的に向かって協働していきたいもんです。

正しい財務諸表を開示するというのは、コーポレートガバナンスの基本中の基本であって、かつもっとも大切なことです。そのためにも監査法人と経理部門はもっと仲良くならないと(馴れ合いはダメだけど)。敵対心を抱いてイライラしたところで、誰も得しないです。