米株を始めてから、株主還元に注目するようになった

企業の財務分析と言えば損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書を見て収益性をチェックすることがメインでした。でした、というかそれは今でも重視していますが、米株を始めてからというもの株主還元への注目度が上がりました。

株式を持つとは企業の一部を所有することです。株主利益=企業利益です。いや、正確には株主利益≒企業利益です。イコールではない、”ニアリー”イコールです。なぜ完全イコールではないかと言うと、いくら企業が利益を上げてもそれを株主に還元しない限り、株主として利益確定とは言えないからです。

たくさん稼いでバランスシートにキャッシュを潤沢に持っていても、その資金で配当や自社株買いをしてくれるまでは企業利益は株主のお財布に入りません。これは理論的な話であって、実際は期待以上の利益を上げた時点で株価が上がることが多いから、その時点で売却すれば利益を手にすることはできます。でも長期投資では「理論」こそが重要です。投資期間が長期になればなるほど、理論的な投資利益が実際の株主リターンと近似します。

金融商品の理論価値とは、その商品が将来の生み出すキャッシュフローの割引現在価値の合計です。株式も例外ではありません。株式が生み出すキャッシュフローとは配当です。利益成長、株数減少どちらでもいいですが、一株当たり配当(DPS)を長期的に最大化できる企業の株に価値があります。

たとえ、無配企業であってもその原則は変わりません。株主に1円もお金を返していないアマゾンが1兆ドルで評価されるのは、同社がいつか莫大な配当を株主に還元してくれると期待されているからです。

財務がいかに優秀かだけでなく、株主還元に積極的かどうかも銘柄選びで重要な観点だなと思うようになりました。まあ、両者は不可分ではありますけどね。財務優秀でフリーキャッシュフローが潤沢でないと、たくさんの株主還元を続けるのは無理なわけだし。

でも、収益性の高いビジネスを持ってバランスシートに多額のキャッシュを抱えているのに、なかなか株主還元をしない企業もあります。そういう企業には投資したいと思わないです。しっかり配当、自社株買いで株主に利益を返還してくれる、株主想いの企業に資金を預けておきたいです。

株主還元に積極的な15銘柄

では、どうやって株主還元が多い企業を探すのか。連続増配年数や配当利回りなど、色んな観点がありますね。配当だけでなく自社株買いもチェックしたいところですが、自分で財務諸表を見るのは面倒くさいかもしれません。

そこで、一つ指数を紹介したいと思います。

Morningstar US Dividend and BuyBack indexです。

配当、自社株買いで株主に資本を還元することに注力している米国企業をカバーしています。具体的な銘柄抽出方法までは知らないのですが、株主想いの企業を選別する上で参考になると思います。

当該指数に連動する商品としてiShares U.S. Dividend and Buyback ETF(DIVB)というETFがあります。

DIVBの上位15銘柄を紹介します。

アップル(AAPL)
マイクロソフト(MSFT)
JPモルガンチェース(JPM)
シスコシステムズ(CSCO)
バンクオブアメリカ(BAC)
ウェルズファーゴ(WFC)
シティグループ(C)
オラクル(ORCL)
インテル(INTC)
ファイザー(PFE)
ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)
アムジェン(AMGN)
クアルコム(QCOM)
ホームデポ(HD)
AT&T(T)

トップ2はITセクターの雄アップルとマイクロソフトです。両者ともきちんと財務データを見た上で、長期投資に相応しい優良銘柄だと判断しています。それは営業利益率、ROEといった収益性が高いからなのもありますが、しっかり株主還元を行っているからという理由もあります。

過去5年平均の総還元性向はアップルが約120%、マイクロソフトが約130%です。低利で調達した負債を活用しながら、税引き後利益以上のキャッシュを株主に還元しています。その結果、株価も上昇しています。

JPモルガン、ウェルズファーゴ、シティ、バンカメといった銀行株が選ばれているのも注目に値します。バフェット銘柄と言えば今やアップルが有名ですが、実はバークシャーの上場株ポートフォリオのメインは銀行株です。バフェット先生はこれから銀行株が市場平均をアウトパフォームすると踏んでいるようですが、その根拠の一つが各行の積極的な株主還元姿勢だと思います。ハイテク企業と同じく自社株買いが非常に多いです。

上記15銘柄でポートフォリオを組んだらS&P500指数に勝ちそうな気もしますが、どうでしょうかね。DIVBは誕生してまだ2年ちょいなので過去の長期実績はトレースできません。ちなみに、直近1年のトータルリターンはS&P500指数に1%ほど負けています。

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