WSJに「賃金上がる米国、上がらない日豪 何が違うのか」という記事が上がっていて興味深く読ませてもらいました。

ただ結論はよく言われている話で真新しいことはなかったです。日本は雇用が安定していることと引き換えに給料が低く抑えられているというものです。

少し長いですが引用します。

日本の失業率は、コロナ禍に見舞われた2020年、前年の2.4%から2.8%に上昇した。だが米国に比べれば、この水準は低く、変化の幅もはるかに小さい。米国は流行の初期段階で失業率が10%超まで急上昇し、2020年10-12月期にまだ6.7%の水準にあった。

日本では賃上げより雇用の安定が重視されるが、それは30年前の経済バブル崩壊後に労使両方に植えつけられた考え方だと、日本総合研究所のエコノミスト、石川智久氏は述べている。

ウォールストリートジャーナルより

賃上げに対して税制優遇するという案が出ていますが、そうやって中央から無理やり給料を上げさせようとしてもなかなか厳しいのではと思います。もちろん、インセンティブを与えるのは一定の効果があるとは思いますが。

アメリカで賃金が上昇しているのは、経営者が従業員の頑張りに報いたいと思っているからではありません。んな綺麗ごとではありません。賃上げをしないと人材が取れないからです。必要に迫られて給料を上げているに過ぎません。

うちの米国子会社の工場は人が思うように採用できず稼働率が落ち、多額の工場原価不利差異(操業度差異)が発生しています。人手不足がPLに表れるまでになってきました。以前より高い給料を提示しても他社がもっと良い条件を提示しているので、採用はスムーズには進んでいないようです。

ちなみに余談ですが、半導体不足や海上輸送費高騰も目に見えて業績に表れてきました。WSJで読んでいる経済ニュースはもはや他人事ではありません(私は所詮雇われ労働者なので他人事とも言えますが)。

以下は直近5年の米国の失業率推移です。

TRADING ECONOMICS

コロナ禍で失業率は一時15%ほどまで急上昇しました。コロナで解雇された人、自ら退職した人が大勢いたということです。

アメリカでは雇用が日本ほどは安定していないことがデータからはっきりわかります。でも、だからこそ今見たいな経済回復時、人手不足の際に転職が活発になり、労働者は経営者に対して強気に賃金交渉することができます。

アメリカでは労働者という立場はミドルリスク・ミドルリターンだと言えます。一方で、日本のそれはローリスク・ローリターンと言えます。

だからアメリカが良くて日本が悪いとかそういうことを言いたいわけではありません。どっちがいいか悪いかは個人の価値観によるでしょう。私はアメリカをよく知らないから何とも言えないところもありますが、雇用が安定している日本で正社員の地位にしがみついておくのも悪くはないと感じています。

必要なのは日本での労働債権は極めてローリスクという認識を持つことです。そうすれば、株式や不動産などへの投資を通じて収入源全体のリスクを引き上げる行動を真剣に考えるようになります。

そうしないと、どうしても豊かな生活を維持するのは難しくなります。リスクを取らずに金だけもらうなんて美味い話は世の中ないのです。

労働だけでそこそこリスクを取っているアメリカ人はむしろ無理して株式投資なんてやる必要ないのかもしれません。でも、日本人は株式投資が必須だと思います。「やった方がいい」ではなく「やらないとヤバい」というレベルだと思います。

なぜなら、繰り返しですが人的資本のリスクがあまりに低いからです。

不動産を持つのも悪くはないですが、借金が必要だし集中投資になるので、基本は株式(特に米株)が良いでしょう。まずはiDeCoやつみたてNISAでインデックス投資(S&P500など)が鉄板です。これくらいやらないと先進国標準の豊かさも手に入れることは難しいです。