株式分割の意義について同僚に質問されたので、簡単に説明しました。せっかくなのでブログ記事にしようと思いPCを立ち上げています。
同僚との会話形式で記事にしようと思ったのですが、昨年読者さんから株式分割についてメールでご質問頂いた事を思い出しました。そこで、読者さんとのメールやり取りを紹介しつつ、株式分割の意味を簡単に解説することにしました。
結論から言うと、
株式分割は長期的な株主利益には中立だけど、短期的にはキャピタルゲインを増やす効果があります。
読者さんよりご質問
Hiroさん、こんばんは。
久方ぶりの質問となりますが、日々ブログを拝読し、自らの投資の参考とさせていただいています。キャンベルスープの株価急落の際には、食品株についての考察記事が大変参考になりました。ありがとうございました。
今回は、株式分割をどのように捉えるべきかご意見を伺いたくメールさせていただきます。
私は、高配当銘柄ばかりを現在まで多く保有しています。その結果、保有銘柄のセクターに偏りが生じているため、数か月前にADR銘柄でインド企業のインフォシス・リミッテッド(INFY)をわずかばかり購入しました。
そのINFYが先日株式分割を行ったのですが、企業が株式分割をするという事は財務的に苦境にあると理解すべきなのでしょうか?
株式分割後に同社の株価が急落することもなく推移している事から、市場は株式分割自体を不安視していないと思います。ですが、自社株買いとは逆の、既存株主に不利な方策に思え、このまま保有すべきか売却すべきかどうかを思案しているところです。
そこで、株式分割がもたらす好影響・悪影響について、企業側・投資家側の双方の視点からご解説いただけますでしょうか?
わずかばかりの投資額ですので、焦りはありません。お時間のある時にご回答いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
Hiro回答
〇〇さん、こんばんは。
インフォシスはこれまでも数回、株式分割をしていますよね。株式分割=財務的苦境というのは全く逆ですのでご安心ください。
普通は、業績が好調で株価が上昇するからこそ株式を分割します。というのも、株式を分割する理由は株価が高くなり過ぎて、株の流動性が落ちることを避けるためだからです。株式を分割しても本質的な企業価値は変わりません。
100円×500株=50,000円(分割前)
50円×1000株=50,000円(分割後)
どちらも同じです。
分割後の方が、株価が低いため買いやすいです。
ところで、株式分割をしたなら理論的には株価は下がるはずです。株価が落ちずに推移しているというのは不思議です。まだ株式分割を発表しただけで、実際の効力発行は先だからですかね。
株式分割は企業側には悪影響も好影響もありません。投資家側からすると好影響があります。単価が安くなって買いやすくなるという点です。
以上です。株式分割で株主価値は何ら変わりません。ご安心ください。私は株式分割のニュースを聞くと「ああ、業績良いんだな」ってポジティブに受け止めます。
【補足】
細かいことを言うと、株式分割は時価総額を押し上げる効果がある(既存株主のキャピタルゲインを増やす効果がある)。
以上が、読者さんとのやり取りです。
メールで「株式分割で株主価値は何ら変わりません」と申し上げました。それは間違いではありませんが、実は株式分割は短期的には株主価値を押し上げます。株式時価総額を(少しだけ)上昇させます。既存株主はキャピタルゲインの恩恵を(少しだけ)受けることができます。あくまで理論的には、ですが。
発行済み株式数500株、株価100円
この会社が1株を2株にする株式分割を行えば
発行済み株式数1000株、株価50円
となります。
どちらも株式時価総額(株価×発行済み株式数)は50,000円で同じです。ただ株式を分割するだけなので、株主は損も得もしません。保有株が2倍になる代わりに、株価は半値になります。
ただ、株式分割は短期的な株主利益にはプラスです。なぜなら、株の流動性が高まることで流動性プレミアムが小さくなるからです。
株式分割で株の購入単価が下がると、投資しやすくなりますよね。今まで単価が高くて投資を敬遠していた投資家も、単価が下がったことで食指を伸ばすかもしれません。そうやって買いやすくなることで株の需要が上がります。株価はマーケットの需要と供給の一致点で決まります。需要が高まれば株価は上がります。高い流動性には価値があるということです。
株価100円の時に1株を2株に分割すれば理論株価は50円ですが、実際には51円や52円くらいになる可能性があります。つまり既存株主はキャピタルゲインを得ることができます。
ただ分割しただけなのに、利益が増えるなんてラッキーですよね。もちろんこれは短期的なキャピタルゲインに過ぎず、株式分割が長期的な株主利益にプラスに作用することはありません。長期的には、株式分割は株主利益にプラスもマイナスもありません。
毎日ブログを楽しく読ませてもらっています。このブログに触発されて、ETFだけじゃなく個別株も触ろうかな~と思ってきている一読者です。
昔、監査法人に勤めていたということでHiroさんに質問があるのですが、監査法人の株式保有に関する規定はどれほど厳しいものなのでしょうか?
もちろん厳しいところ・緩いところで違いはあると思いますが、特に外国株・ETFの保有にどれほど制限があるのか気になります。
今、私は公認会計士を目指しているのですが、趣味としての投資に大きな制約がかかるのが少しだけ嫌だな~と思っているので、質問させていただきました。
Hiroさんの経験談だけでもいいので、教えてくださると幸いです。
いつもありがとうございます。
監査法人に所属している場合、国内株式(個別株)の売買はかなり厳しいです。
自分の監査クライアントの株式売買は当然ですがどんな理由があっても不可能です。
自分が監査してなくても、自分が所属する事務所の監査クライアントの株を買うのは原則不可だったはずです。
仮に可能でも買わない方が無難です。
他の監査法人のクライアントであっても、国内株の売買は控えた方が無難かもしれません。
会計士同士のネットワークで情報入手は比較的簡単ですから、疑われるリスクがあります。
法人として国内株はすべて禁止していたかもしれません(あるいは申請制か)。
投資信託やETFについては国内株、外国株ともに制限はなかったはず。
外国株なら個別株でも問題ないと思います。
米国株投資なら個別株でもETFでも恐らく大丈夫だと思います。
(一応コンプライアンス部門に確認してから取引した方が安全です。)