WSJに興味深いグラフがあったので共有します。グーグルの親会社であるアルファベットのセグメント別売上構成比です。ただし、これはアルファベットが開示している資料ではなくモルガンスタンレーの予測数字です。
↑
これ、個人的にすっごい興味深い資料で、電車の中で「へ~」と思って「ブログで紹介しよう!」って思いました。貴重な情報だと思います。
というのも、アルファベットはここまで詳細にセグメント別売上を公開していません。以下は、直近2017年12月期決算のアルファベットの10-Kレポートのセグメント注記の抜粋です。10K-レポートって日本でいうところの有価証券報告書のことです。
↑
ちょっと小さいし英語だしで見にくいですよね、ごめんなさい。日本語で簡単にグラフ化することこうなります。
広告収入がアルファベットの売上高の86%を占めます。このブログにもアドセンス広告を載せていますが、こういったデジタル広告の出稿料です。あとは、YouTubeでの広告収入もこの「広告部門」に含まれています。
このアルファベットのセグメント開示から分かることは、広告収入が全体の9割弱だということだけです。あとはすべて「その他」と表現しているだけで具体的な内容は開示していません。これについて一部の投資家やアナリストから不満が出ています。「もう少し細かくセグメント別売上を開示してくれよ」という不満です。具体的には、規模が大きいと推測されるYouTubeの情報を開示してくれという要求です。
そこで、モルスタがアルファベットのセグメント別売上割合を予測したものを作成し公開しています。YouTubeの部分が赤で強調されているのが分かると思います。YouTubeの広告収入は毎年伸びて事業規模も大きくなっているはずだから別途開示して欲しいという投資家のニーズが強いのですが、今のところアルファベット側は開示する気はないようです。
別に情報を隠したいわけではなく、YouTubeの収支情報を競合(フェイスブック等)に知られたくないという背景があるようです。投資家への情報提供を優先するのか、競合への情報秘匿を優先するのか、アルファベット幹部は前者を優先したということです。
ちょっと経理のウラ話
こうやって「その他」と一括りにして、具体的に情報を開示しないって珍しいことではありません。私は上場企業の経理部で6年ほど勤務してきて、有価証券報告書の作成にも携わってきましたがよくやってました。
たとえば、売上高1兆円の企業があって、その子会社で1億円程度の減損損失が発生したとします。その1億円の費用を損益計算書で「減損損失」として開示する選択肢もあるのですが、大抵は「その他営業外費用」の中に突っ込んでごちゃ混ぜにします。そうすると、投資家には1億円の減損損失があったことはもはや分かりません。
見方によっては、これは投資家に減損損失があったことを隠しているように見えなくもないです。
でも私たち経理部は投資家を欺く意思は全くありません。経理部にとっての顧客は株主、投資家です。株主、投資家に正しい決算情報を提供して安心して株式取引してもらいたいと思っています。逆説的ですが、だからこそ敢えて隠します。減損損失があったことを隠します。なぜかと言えば、あまりに細かい情報まで開示するとむしろ投資家を混乱させてしまうと考えるからです。
「減損損失」とPLで開示してしまうと別途注記で詳細な開示まで必要です。なぜ、どの資産をいくら減損したのか開示することになります。でも売上高1兆円の企業にとって1億円の減損なんて金額的影響はめっちゃ小さいです。年収500万円のサラリーマンにとっての吉野家の牛丼代くらいです。
そんな小さな費用を大げさに「減損がありました!!」って投資家に報告しても、逆に不安を煽るだけです。なんでもかんでも細かい数字まで公開することが必ずしも投資家フレンドリーなIRかと言えばそれは違います。隠すべきところは敢えて隠します。大事なのはストーリーだと思っています。今期の業績はなぜ良かったのか、今後はどうなるのか、大枠のストーリーを投資家の皆様に理解してもらうことが大事なことだと個人的には考えています。
「その他」の中にはいろんなものがごちゃごちゃ詰まっています。それは「大したことないから、あまり気にしなくていいよ」という会社から投資家(株主)へのメッセージです。
YouTubeの話に戻ります
アルファベットはYouTubeの情報を「その他」にぶち込んで、独立開示はしていません。SECも特に文句は言ってません。YouTubeも広告事業には違いないから広告部門に含めて開示すればOKで、特に別途開示を強制することはないというのがSEC見解のようです。
アルファベットはYouTubeの情報を公開しないことが株主利益にプラスだと考えています。YouTubeの収益情報を競合のフェイスブック等に見られるのは得策ではないと考えています。
本音ではアルファベット経営陣は、自社の投資家にYouTubeの情報を開示したいと思っているはずです。株を買ってくれる投資家にはきちんと情報公開したいと思っているはずです。でも、YouTubeの情報を開示するのは広告ビジネスでの競争上不利になる可能性もあって、そこにジレンマがあります。
アルファベット経営陣は投資家を欺きたくてYouTubeの情報を非公開にしているわけでは決してありません。経営陣は常に株主ファーストです。株主利益にプラスだと考えて敢えてYouTubeの収支情報は隠しています。
しかし、どうでしょうね。モルガンスタンレーの予測グラフを再度掲載します。
この情報がどこまで正しいか分かりませんが、仮にYouTubeの売上高が全体の10%を超えるなら、そろそろ開示しないと投資家に不親切なディスクローズだと言われても不思議じゃありません。YouTubeの売上高を開示するくらいだったらビジネス上もそこまで不利益はないのでは、と素人的には思いますがどうでしょうかね。
どこまで詳細に情報開示することが真に投資家フレンドリーなIRなのか、難しい問題です。。
アルファベットは、議決権の無い株式を発行したり、あまり投資家の方を向いていない印象。
議決権の無い株式は、最近ハイテク業界を中心に流行っているみたいですね。
グーグルの他、フェイスブックやスポティファイ、スナップも発行しています。
これはどうなんですかね~。
議決権なしでも問題ないと思う投資家がいるから発行することができわけですが、議決権がない株式の価値ってどう判断すべきかよくわかりません。
あまり健全なことではないと思います。
ただそれでもなお、グーグルやフェイスブックには投資妙味を感じています。
Hiroさんお疲れ様です。
私はアルファベット株を持っているため、youtube単独の業績はかなり気になっていました。
バロンズでもアルファベットはまだ割安だと取り上げられていましたね。
確かにアルファベット経営陣が言うように、検索広告もyoutube動画広告も広く捉えれば、インターネット広告ですから、個別の開示は必要ないとも考えられます。
クラウド事業の業績を開示したように、あと二年くらいしたらyoutubeの個別業績も開示してくれるかな~と淡く期待しています。
インターネット広告で稼いでいる10年くらいの間に、うまくAI分野(自動運転車、研究用等)を収益化できれば良いのですが。
尾形さん、こんばんは。
アルファベット株は利益成長率の割に株価は割安に感じますよね。
広告ビジネスの寡占体制は変わらないと思いますし、今後も収入は安定していると思います。
30年後のIT業界がどうなっているか分かりませんが、グーグルとアマゾンが相変わらずビジネスを牛耳っているかなと想像してます。
YouTubeの収支を開示して投資家の情報量を増やすメリットと、競合にその情報が渡ってしまうデメリットとの比較衡量になると思います。
YouTubeの売上高を開示すると広告出稿量を推測されるとかあるのですかね、、分かりませんが。
自動運転にも多額の投資をしていますが、広告収入が莫大過ぎて隠れてしまいますね。
長期的には大きな収入源に育ってくれるかもしません。
20年後の自動車販売の付加価値の大半をIT業界が吸い上げているのではと、自動車業界は危惧していると思います。
だから早い内から、IT企業と提携しています。
議決権って、株式の根幹ですよね。
経営者が、自分の権限を薄めずに資金だけは集めたいという行為です。
褒められたことではありません。
最近IT業界で発行されている議決権のない株式(デュアルクラス株式)って、金融機関がよく発行する優先株と何が違うんだろうと素朴な疑問も持っています。
法律的なことは疎くて分かりませんが。
まあ、いずれにしても普通株とは異なる商品として取引されるはずです。
個人的には優先株に長期投資するのは得策ではないと思っていまして、この議決権のない株式にも同じく投資はしないつもりです。