米株を始めてから連続増配年数なるものが注目されていると知りました。配当王(連続増配50年超)、配当貴族(連続増配25年超)なる言葉もあります。

銘柄選びでこの連続増配年数を気にするべきかどうか悩むかもしれません。

私は、連続増配年数は理論的には投資リターンに無関係だけど、実際はそこそこ関連があるかもなあと思っています。もちろん、増配記録が長い銘柄の方が有望という意味で。

そもそも、利益のうちいくらを配当に回すかつまり配当性向をいくらいにするかは経営者の裁量次第です。アップルみたいに配当性向20%台の企業もあれば、アルトリアグループのように80%を超える企業もあります。1セントずつチビチビ増配するのか、一気に30%配当を引き上げるのか、それも経営者の判断次第です。チビチビ増配していけば、結果として増配年数は伸ばすことができます。

利益の多寡は企業の実力を示すと言えるけど、配当の多寡は必ずしも企業の実力と連動はしません。敢えて配当を抑えて自社株買いを重視する場合もあるし、そもそも無配の企業もたくさんあります。

そんなわけで、理論的に考えると、配当関連の指標は投資判断においてそれほど重要視する必要はないと言えます。具体的には配当利回りや連続増配年数などです。

ただ、私は連続増配年数が40年、50年と長い企業は長期投資対象として有望かもなあとよく思います。というのも、経営者も私たち同じ人間だからです。過去のCEOが40年間も増配を続けてきたのに、自分の代でその記録を止めるわけにはいかないと現CEOは思うはずです。そんなカッコ悪い実績を残せば自分のキャリアの汚点になると思うでしょう。簡単に配当を停止する日本企業とは文化が違います。

配当を無理に維持することが株主利益に貢献するとは限りません。一時的に減配して事業を立て直した方がいいケースもあるでしょう。しかし、意地でも配当を減らさないという守銭奴のような姿勢が、株主リターンを高めることも多いと思います。

原油価格が20ドルまで暴落して石油会社は苦境に立たされています。そんな環境にあってもシェブロン(CVX)CEOは減配しないと言っています。同社の連続増配年数は34年です。エクソンモービル(XOM)も、恐らく借金をしてでも配当を維持すると思います。エクソンの連続増配記録は37年です。各社、設備投資を削減しています。

アメリカの会社ってこの辺のコスト管理ってめちゃくちゃ凄いんですよ。私は実務を通じてそれをヒシヒシと感じています。うちの米国子会社は利益目標が未達になりそうになると、意地でも販管費を削減して利益をひねり出してきます。もはや手品です。

コスト削減って言うは易し行うは難しです。なぜなら、大半のコストは固定費だからです。人件費とか。嫌でも垂れ流れていく費用が多く、短期間で削れるコストはそう多くないです。研究開発プロジェクトを停止したとしても、研究員の人件費は固定費として発生し続けます。

でも、米国子会社は思い切ったコスト削減をやってのけるんです。容赦なく人を切りますし、トップダウンでの絞り上げがきついです。ちなみに、うちの米国トップは元GEです。GE式の経営スタイルでしょうか、知りませんが。

日本では先ずやれないくらいに販管費を減らしてきます。5%くらいすぐにカットしてきますよ。販管費を短期間で5%も減らすって尋常じゃないです。それでしっかり利益を出すから、本社CEOはまあ一応満足するわけです。売上未達でも利益が達成していれば、とりあえず合格です。

とまあ、今のエネルギー会社もこれくらいの厳しさでコスト管理をやってるんだろうなあと推測します。そして、私たち株主への配当を守り抜いてくれるんだろうと期待しています。

何が何でも増配記録を守るというファイナンス理論にそぐわない目的が、結果として株主の富が守っているように感じます。

株主と経営者の利害は対立しがちです。経営者は株主の富を壊すようなお金を使い方をすることが往々にしてあります。不必要なプライベートジェットでの出張とか、1年後に減損しちゃうような下手くそなM&Aとか。

配当を維持しなくてはという強いプレッシャーに晒されていると、そういう株主価値をぶち壊すような支出にお金を回している余裕はなくなります。一つ一つの投資案件が精査にチェックされます。そのプレッシャーが経営に規律をもたらして、高い株主リターンを実現する要因の一つになるのではと思います。

連続増配記録が長くかつ配当性向が高い企業は、特にそのプレッシャーが強いと言えます。少し収益が減るだけで減配になる可能性がありますから。具体的な銘柄で言えば、コカ・コーラやアルトリアグループなどですね。

私たち投資家はともすると株を単なるデジタルなデータと思いがちです。しかし、株=企業の所有権であり、企業を動かしているのは従業や経営者といった感情ある人間です。株に投資するとは人に投資するとも言えます。特に経営者です。経営者に自分の大切なお金を預けているという感覚を持った方がいいです。気付かぬところで無駄遣いされたら、損するのは株主である我々です。

連続増配年数を銘柄選びの条件にまではしてませんが、長い方心強いなあとは思っています。少しは気にしています。米国株銘柄分析の記事に連続増配年数を載せているのはそういう自分の考えがあるからです。

ちなみに、私の保有銘柄の連続増配年数はこんな感じです。

アルトリアグループ:50年
フィリップモリス:12年
コカ・コーラ:57年
ペプシコ:47年
ジョンソンエンドジョンソン:57年
メドトロニック:42年
アボットラボラトリーズ:47年
アッヴィ:47年
ベライゾンコミュニケーションズ:15年
アップル:7年
マイクロソフト:16年
シスコシステムズ:9年
マクドナルド:43年
ユニオンパシフィック:10年
エクソンモービル:37年
ウェルズファーゴ:8年
ブラックロック:10年

特に意識してるわけじゃないですが、連続増配年数が長い企業が多いです。コカ・コーラとJ&Jは50年超です。ハイテクは有配になってからの歴史が浅いので、まだ短いです。と言ってもマイクロソフトはもう16年にもなるのか。