インターネットの発達によってよりニッチなニーズに応えるサービスが増えましたよね。人の好みなんて千差万別で当然なわけですが、これまでは供給側が追い付きませんでした。狭いマーケットにまで対応していたら、採算が取れませんから。

インターネットの誕生によって一部ビジネスの拡張コストが激減しました。特に恩恵を受けているのが、アニメや音楽、ゲームといったコンテンツ系です。かつてはテレビ放送を受動的に観るのが一般的でしたが、今ではYouTubeなどで自分が好きな動画を好きな時間に観ることができます。

需要が小さくても、その小さな需要を掴もうとするインセンティブが働きます。なぜなら、個人が事業主になり得るからです。たとえばYouTubeの動画配信者の多くは企業ではなく個人です。個人なら月10万円の収入でも大きなインパクトです。月収が10万円増えたら、生活が変わりますよね。また、営利企業じゃない個人は採算性無視でコンテンツを提供することもあり得ます。

ブログもそうですよね。米国株メインのコンテンツなんて先ず企業は運営しないでしょう。米国株投資に興味関心のある母数が少なすぎて、広告収入を得るにはマーケットが小さすぎます。

でも僕にとってはそうでもないです。個人だからそんな大きな収入なんて求めてないです。そもそも、ブログを始めた当初はアドセンス広告自体よくわかってなく、最初の一年くらいはブログ収入なんてゼロでした。今でもあまり収益性は考えず、好き放題情報を発信しているだけです。SEO対策とかブログマーケティングゼロ。ちょっとは勉強したい気持ちもあるけど、そこまで頑張るインセンティブがない。それやる時間があるなら、もっと記事を書きたい。

ニッチ・コンテンツの経済性が改善したことは(やはり採算が取れないとこれほどの発展は無理だったでしょう)、個人の余暇の幸福度を大きく高めたと思います。コンテンツほど個人によって好き嫌いが分かれる分野は他にありません。アイドル系が好きな人もいれば、ゲームオタクもいれば、車オタクもいます。昔はテレビ局が最大公約数的なコンテンツを提供して、それを(仕方なく)消費する他ありませんでした。しかし今は違います。インターネット上で様々なコンテンツが提供されています。しかも大半が無料。テレビはone of internetに過ぎない存在になりました。

コンテンツビジネスは成長産業だから参入企業は多いです。ネットフリックス、スポティファイ、AT&T(タイムワーナーを買収)、ウォルトディズニー、アップル、アマゾン、そして個人。個人が地味に大手からパイを奪っているのがこの業界の特徴だと思います。

コンテンツ業界は勝者総取りにはならないと思います。なぜなら、消費者の需要が千差万別だからです。すべての需要に1社が応えるのは不可能でしょう。コンテンツビジネスは、色んな企業が少しずつパイを奪い合う形が続くと予想します。

一方で、飲料や日用品といった生活必需品セクターはそうはならないと思います。この業界は昔からのブランド企業が今後も利益を吸い上げ続けると思います。日用品ならプロクター&ギャンブルやユニリーバ。清涼飲料水ならコカ・コーラ、ペプシコ。個人が参入するなんて絶対無理な業界。

生理的な欲求は人によって大きく異なることはないです。100人が100人とも共通して「あー、喉が渇いた」と思ってお茶を飲みます。「生茶」よりも「綾鷹」が好きとか、そういう好き嫌いはあるでしょうけど、「お茶を飲んでのどを潤したい」というニーズ自体は同じ。極論言えばお茶を飲めればそれでよく、個別商品に強いこだわりは生まれにくいです。

こういう人間生活の基盤となる商品・サービスは、これからも昔からの大企業が強いと思います。ここにニッチ・マーケットを侵食しようと個人や新興企業が参入してくる可能性は低いです。米国のヨーグルト業界のように新興メーカーが大手のシェアを奪うこともありますが、全体として見れば少ないはず。コンテンツ業界のように群雄割拠の事態はあまり想定できません。

あと、飲料や食品、日用品はインターネットによって拡張性が高まったわけではありません。実際に形あるモノを製造するわけだから、少なくとも変動費は常に発生します。ここに小規模な企業や個人が参入する意義は小さいです。採算が取れるまでが大変。そのリスクを背負いたい人は稀でしょう。

落合陽一さんは「限界費用がゼロになるビジネス領域を探すべき」という主旨のことを以前語っておられましたが、まさにコンテンツビジネスがそれに該当します。YouTubeで動画視聴者数が増えても、追加でコストは掛かりません。でも、コカ・コーラの生産数を100本から200本に増やすにはコストが掛かります。

生活必需品セクターは、
・人によってニーズが大きくは異ならない
(=ニッチなニーズが少なく、新規参入のインセンティブが小さい)
・追加生産のコストがIT時代になっても大きくは下がっていない

(=コストの掛かる領域にわざわざ新規参入しようというインセンティブは小さい)
という2点から、既存の大企業がこれからも優位な立場にあると思います。