新聞やネットニュース、書籍等でよく「企業価値」という言葉を見かけます。この「企業価値」という言葉、正確に使えてないな~と思うときがあります。正しく企業価値を指していることもあれば、株主価値を意味して使われているときもあります。企業価値と株主価値は違います。細かいことかもしれませんが、簡単に説明します。
文章だけでうまく説明できる自信ないので、図で示します。
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企業価値とは、その会社の全資産(が生み出す将来キャッシュフローの割引現在価値)のことです。株主価値とは企業価値から負債価値を控除したものです。企業価値が増加すれば株主価値も増加しますが、両者は同じ概念ではありません。
借金すれば企業価値は増えますが株主価値は増えません。なぜなら、100の借金をしたら資産価値が100増えると同時に負債価値も100増えて、結果として株主価値はトントンになるからです。借金するだけで株主の財産が増えることはありません。その借金をうまく運用してリターンを生んで初めて株主価値は向上します。
注目して欲しいのは右下の株主価値です。なぜなら、このブログを読んでいるあなたはきっと株主だからです。株主の請求権は、企業価値から負債価値を差し引いた残りだけです。
100の預金があっても、借金が70あるなら株主の取り分は30しかありませんよね。100は株主価値ではありません、企業価値です。株主価値は30です。
株価とは株主価値を一株当たりに切り刻んだものです。
株価とは一株当たりの株主価値です。
株価とは一株当たりの”時価”純資産です。
株式時価総額(株価×発行済み株式数)とは純資産を時価評価したものに他なりません。
Hiroさんに質問です。
投資する時、株主の構成や顔ぶれは、どの程度考慮しますか?
バフェット銘柄などは、何となく分かりやすいですが、その他大多数の株主に関しては、全くわからないのが実感です。
経営者の人柄など、インタビューや製品発表会、米国だと難しいけど株主総会などで観察できますよね。
企業の業績は決算や四季報で伝わるますよね。
社員の質も、投資先の社員と顔を合わす事もあるし……でも、株主達、特に会社経営に物申す地位になる株主が何を考えているのか……株主同士の皆が長期的成長など思惑が意見対立しないのは経営陣の優れた采配なんでしょうか?
どうも個別株は、株主の人柄や野心などが分からず……結局はリスク分散でETFでS&P500に無難に投資しています。
主要株主の質を見極める方法など有ったら教えてください。
こんばんは。
株主構成で気にするのは、創業オーナーが経営に多大な影響を与えれるほどの議決割合を持っているか否かです。
過半数を持っていなくとも個人で10%を超えていればちょっと気になります。
というのも、そのようなオーナー経営者はともすると他の株主の利益を無視して投資判断する可能性があるからです。
表面的にはすべての意思決定が株主利益にプラスのはずですが、実は自分のロマンを追い求めた独りよがりな投資行動の恐れがあります。(そして本人にその自覚はないかもしれない)
苦しい思いをして一から事業を立ち上げて成功した経営者というのは、自分以外の株主の利益よりもいかに社会にインパクトを与え続けるかに焦点を当てがちだ思います。
たとえば、先日記事にした楽天のイニエスタへの投資など。
アマゾンCEOのジェフベゾスはかつて「株価を上げるための仕事はしない。そんなのバカげている」と発言したことがあります。2015年くらいのことです。
そんなこと言っておきながらアマゾンの株価をここまでガンガン上げ続けているのは本当に凄いことだと思います。
ちなみにジェフベゾスはアマゾン発行済み株式数の15%くらいを保持しているはずです。
あと株主で気になる点があるとすれば、アクティビストが出資している時くらいですかね。
サードポイントやパーシング・スクエア、カール・アイカーン、3Gキャピタルなど。
大きな事業再編や積極的な自社株買いを要求することが多いです。
クラフトフーズとHJハインツの合併は、3Gの推進力なくしては無理でしたし。
(3GはアクティビストではなくPEと言うべきかもしれませんが)
アクティビストがいると、短期的な株価値上がりは望めそうですが、長期的な成長を考えてくれているかちょっと不安になります。
これら以外は、あまり株主構成は気にせず投資判断しているのが正直なところです。
機関投資家の比率が高い方が好ましいと言われますが、その割合まで調べてはいないですね。
丁寧な回答、有難うございます。
企業の株主になるのは、企業のリスクを背負うのと同時に複雑な利害を持つ株主同士の仲間に入ると言う意識を忘れちゃいけないんですよね。
どんなに成長していても、利害が異なる株主の存在が大きくなった時点で投資を継続するか、将来に決断する覚悟もいるかなぁ。
まぁ、まずはコツコツと投資しながら世界のニュースや投資先の情報を刺激にして資産運用の面白さを楽しみたいと思います。
いつも、ためになる記事やコメント、有難うございます。
>株主になるのは、企業のリスクを背負うのと同時に複雑な利害を持つ株主同士の仲間に入る
おっしゃる通りですね。
株式を買うとは企業の所有者になることです。
株式投資はバーチャルなゲームではなく、その先には企業のビジネスがあり、経営陣、従業員とその家族がいます。
当たり前のことかもしれませんが、これをきちんと意識するのとしないのとでは投資家として大違いだと思います。
短期トレードはバーチャルゲームな側面が確かに強いですが、長期投資となれば企業のビジネスがすべてです。
企業とは法人格という概念でしかなく、結局最後は「人」です。
株を買うとは、人に投資しているようなもんだと思います。
誰と一緒にその企業に出資しているのか、という点も重要ですよね。
創業者は「自分が興したビジネスで社会を変えたい」という思い、情熱が強いです。
それがプラスに効くこともあれば、マイナスに効くこともあり得ます。
今のところアマゾンにはプラスに作用しているようです。
しかし、マイナスに作用するリスクもあります。
株主利益よりも消費者利益を優先してビジネスを拡大するリスクです。
それが巡り巡って将来的には、株主の利益になる可能性もあります。
しかし、シーゲル教授が指摘している通り過大なイノベーション投資は、結局は消費者利益になるケースが多いです。
こういったことを加味して投資判断していくのは本当に難しいなと思います・・。
こんなこと書きましたが、私はアマゾンへの投資に否定的ではありません。むしろ楽観的です。
社会に貢献して継続的に利益を上げれる企業に投資していれば、それでOKだという基本認識があります。
ただし、成長の罠には気を付けなくてはなりませんが。