人よりお金を稼ぎたいなら、リスクを取らないといけません。
投資に限らずビジネスでは常に当てはまることですが、何らかの方法でリスクテイクをしないと人よりも多くお金を稼ぐことはできません。
楽して儲けること、道端に落ちている1万円札を拾うこともあるかもしれませんが、その可能性はかなり低いし、そんな幸運を待っている間にも貴重な時間は刻々と過ぎてしまいます。
リスクは金銭的リスク、身体的リスク、時間的リスクなどに分けることができそうです。
株式投資はこの中でも特に金銭的リスクをテイクしていくものです。
どれだけディフェンシブ性の高い銘柄であれ、株式である以上時価変動からは逃れられません。株を長期で保有したとしても必ず儲かると保証されているわけではありません。
どんな優良企業であっても、特にIT関連から押し寄せる急激なビジネス環境の変化や突発的な品質問題、訴訟などのリスクは消えません。
株式投資をしている人の中で、何ら不安を持たずに常に自信満々にいれる人はいないはずです。
ドラえもんにお願いしてタイムマシーンに乗って未来を見て帰って来れるのび太君でもない限り、誰しもが企業の将来に不安を抱えながら投資を続けることになります。
投資とはそういうものだと諦めた方がいいです。リスクなきところにリターンはありません。
人々が株式投資にリスクを感じてくれることで、その中でリスク負担を申し出た人にリターンを得るチャンスが与えられます。あくまでチャンスが与えられるだけであって、リスクを取ったからって必ずリターンが保証されるわけではありませんが。
投資家個人のリスク認識はリターンと関係ない
リスクリスクと当たり前のように言っていますが、株式投資の世界ではリスクをそれを見る主体によって2つに分けて考えた方がいいと思います。
①マーケットのリスク(あなた以外のすべての人のリスク認識)
②あなた自身のリスク
ここで大事なことは、①マーケットのリスクはリターンを生むけど、②あなた自身のリスクはリターンと何ら関係ないということです。
ハイリスク・ハイリターンという言葉があります。
この言葉は概ね正しいと思います。
より高いリスクを負担すれば、それに相応しい高いリターンを得ることができる可能性があります。
リスクとは将来の結果に対する不確実性です。
将来の利息がほぼ確定している米国債よりも、将来の配当に不確実性が残る米国株の方がリスクが高いので期待リターンも高いです。
米国株の中でも銘柄によってリスクの高低が異なるでしょう。
高いリターンが欲しいなら、高いリスクを積極的に取りにいく必要があります。
その発想は間違いではありません。
ただ、大事なことがあって、あなた自身のリスク認識が高いからと言って投資リターンもそれに連動して高くなるわけではないということです。
考えるべきはあなた自身の属人的なリスクではなく、マーケットのリスクです。
マーケットのリスクとは、あなた以外のすべてのマーケット参加者が抱くリスク認識です。
一方であなた自身のリスクとは、そのままですがあなたが勝手に抱いているリスク認識です。
イギリスの経済学者ケインズは、株式投資のことを美人投票だと例えました。そこで大切なのは「自分にとって誰が美人なのか」ではなく「他の参加者にとって誰が美人なのか」ということです。
そういうことです。
自己中にならず、常に客観視しなさいとケインズは言っているのです。
長期株式投資は自分の感情との闘いです。
長期で高いリターンを得たいなら、途中で株価が急落しても信念を持って株を保有し続けることも必要になるでしょう。
人間とは感情の生き物ですから、株式投資でもなるべく心の平穏を保って取り組んでいける態勢を整えることは大切だと思います。
その為には無駄なリスクを取らないことです。
リスクそれ自体はリターンを得る上で仕方ない不可避な要素ですが、できればマーケットリスク以上のリスクを感じる銘柄に投資し過ぎないことです。
例えば、私自身の話で言えば最近のIBMへの投資がそれに該当するかもなって思っています。
IBMには100万円近く投資しています。
株価が160ドル、153ドルの時にそれぞれ約50万円ずつ投資しました。
現状は残念な結果です。
バフェット売却報道で株価急落、21四半期連続減収の決算発表で株価急落。
まあ短期的な話ですし、IBM株への投資が経済的に成功か否かは将来にならないとわかりません。
IBM株への投資が将来高いリターンを株主にもたらすか否か、確信を持って判断することはできません。
当然ですがね。
IBM株が“一般的に”良い投資案件なのかはわかりません。
ただ、IBM株は“私にとって”は割の合わない投資案件なのかもしれません。そう感じる今日この頃です。
あくまでも「私にとって」ですよ。
なぜなら、私のIBM株に対するリスク認識は恐らくマーケットのそれよりも格段に高いからです。
適当に数字で表現するとこんな感じです。
①マーケットのリスク・・・100
②Hiro個人のリスク・・・150
マーケットがIBMの将来の配当に対して持っているリスク認識が100だとしたら、私Hiroが個人的に持っているIBMの将来に対するリスクは150です。
なぜ私のリスクの方が高いのか?
それは私がIBMのビジネスについて無知だからです。
IT業界について無知だからです、不勉強だからです。
その私個人の無知に起因するマーケット超過リスク50(150-100)は、追加リターンを生みません。
無駄なリスクです。
リスクとは主観的なものです。
人それぞれ、株式そのものないし各銘柄の将来に対して抱く不安感は異なります。
だからね、たまに思うんですけど株式リターンって相対的なものでしかないですよ。
リスクに見合ったリターンなんて、人それぞれなわけです。
リスクとリターンは連動するという教科書的な概念を学ぶのは大切だと思います。ですが、ああいうのはあくまでも普遍的に誰でもわかるように抽象化されているものであって、それを現実に落とし込む時は各個人独自の判断要素が絡んできます。
だから、株式投資に絶対の正解はありません。
株式投資の方法や資産規模とかを他人と比較するのはあまり意味はないと思うんですが、そう思う根拠はここです。
リスクは主観的っていう話で思い出すのがバフェットのこの発言です。
「私は企業の将来キャッシュフローを債券と同じ利率で割り引きます。」
バフェットには数多くの名言が語り継がれていますが、個人的に一番痺れたのがこの発言です。
おお、すげ~って感動しました。
これはリスクがいかに主観的であるかを如実に物語っています。
マーケットのリスクが100だっとしても、バフェットが感じるリスクは20ほどしかない感じです。
バフェットが認識しているリスクがたとえ債券並みの低さだっとしても、バフェットが得られるリターンは債券並みではありません。なぜなら、リターンはバフェット個人のリスク認識ではなくマーケット全体のリスク認識によって決まるものだからです。
バフェットの「私は企業の将来キャッシュフローを債券と同じ利率で割り引きます。」という発言はややファイナンス寄りの発言ですが、これを私が勝手に意訳するとこうなります。
「私には企業の未来のすべてが見えている(キリッ)」
バフェットには世間の投資家には決して見えない企業の将来像がはっきりと見えているということです。
それは素人の私でも債券の利息収入であれば確実に予見できるのと同じくらいの確度に、ということです。
まあバフェットもIBMへの投資などで失敗もしているわけですから、その発言の信頼度は微妙かもしれませんがね。ただリスクとは主観的なものだから、バフェット本人がそう思うなら周りがどうこう言う話でもありません。
理解できるビジネスに投資する or インデックス投資
バフェットは自分が理解できるビジネスにしか絶対に投資しないと言っています。
30cmのハードルを超えればいいのに、わざわざ2Mのハードルを越える必要はないでしょうと言っています。
米国企業は優良企業がたくさんあるのですから。
これ、とても大事なことだと思います。
個別株投資を始めてから身に染みて感じるようになりましたね~。
リスク調整後リターンとか言うと、なんか概念的過ぎて分かりにくいのは理解しています。
でも長期投資では、保有銘柄の業績が多少悪くても安心して保有し続けられるくらいの納得感を持って投資に望んだ方がベターです。
バフェットみたく、マーケットリスクよりも遥かに低いリスク認識にすることは普通は難しいと思います。私たちは本業で働きながら片手間で株式投資をやっているわけですし。
でもせめて、マーケットの同程度のリスク認識には抑えたいところです。
そのためには、生活必需品関連などなるべく理解し易いビジネスに投資したい方がよいと思います。
長期投資では「リスク認識」というファクターをあまり甘く考えないほうがいいと思います。
自分自身のリスク認識を下げたければ、とにかく勉強して企業研究することです。
あるいは、自分が本業で働いている業界について配分を増やすとか。
特にIT業界なんかはそこに精通している人と、私の様な素人とではリスク認識に大きな差があると思います。
私にとってIBMやシスコシステムズへの投資はハイリスクであっても、IT業界で働いている人にとってはミドルリスクかもしれません。
繰り返しですが、リスクとは主観的なものなので人によって違います。
そういった投資家固有のリスクなんて一切考えたくない人は、S&P500連動ETFなどのインデックスに投資するのが合理的だと思いますよ。
5/22と5/23の記事とも関連しますね。
「アメリカ経済ダメだぁ~!アメリカ企業もダメだぁ~!」と投機家がパニックになって株価が暴落している時に賢い投資家は市場がつけた安くなった価格を拾うのですね。
そこまでの例でなくても「米国株はPERが高いから、ここからは買ってはいけない」と多くの人が横並びで思っている時に、米国企業の株主還元の姿勢やガバナンスをわかっている人はゆっくりと優良な米国企業の株を買い増ししていくのでしょうね。
「アメリカ経済ダメだぁ~!アメリカ企業もダメだぁ~!」というパニック状態にはなかなかならないのが、投資の難しいところでもありますよね。
やはり私もコツコツ投資すべきとか言いつつ、できれば暴落の安値で買いたいなという欲があります。
パニックで狼狽売りされている株を買うのがベストではありますが、日々の投資ではベターを追求する程度にとどめた方がいいのでしょうね。
投資って難しい心理ゲームだと思います。
投資をシンプルに考えたいけど、結局いろいろと複雑に考えてしまいます。
まあそうやって考えるのが私は楽しいからいいんですけどねw。
おっしゃる通り米国株投資の一番の魅力は、米国大企業はどこもコーポレートガバナンスがしっかりしているということですね。
リーマンショック後の金融規制はちょっと厳しすぎな面があるかもしれませんが(ストレステストとか)、それ位政府中央銀行が厳しい姿勢でいてくれることは長期投資家として安心できますね。