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財政赤字懸念が金利上昇をもたらす本当の理由

   

米国は2017年に歴史的な法人税率引き下げを決めました。2018年度より35%の連邦法人税率が21%に引き下げられます。個人所得税も含む減税規模は10年間で1.5兆ドルになると見込まれています。1986年以来約30年ぶりの減税となりました。

減税で企業は利益が増えるとは言いますが、無から有は生まれません。減税とは短期的には単なる所得移転に過ぎません。誰かが得すれば誰かが損しています。ゼロサムゲームです。

損をするのはそりゃ米国政府です。減税になればその分歳入は減ります。歳入が減った分は社会保障費(メディケア、メディケイド)削減で補填するかもしれません。トランプ大統領など政府は減税によって企業の利益が成長し、結果として法人税は増えるので問題ないと主張しています。減税がどれくらい経済成長に寄与するか今は分かりませんが、兎にも角にも短期的に政府歳入が減ることは紛れもない事実です。

2018年になってから、米国長期金利(米10年債利回り)が上昇しています。

以下は直近2年間の米10年債利回りチャートですが、2018年になってから2016年末の高値を突き抜けていますね。

米国で金利が上昇している理由について諸説言われていますが、こういう意見もあります。

「減税による財政赤字懸念から金利が上昇している。」

これ確かにその通りなのですが、なんで財政赤字が悪化すると金利が上昇するでしょうか?

え、そりゃ財務が悪化したらデフォルト懸念が高まって金利が上昇するのは当然だろ、って思われるかもしれません。

そうでしょうか、米国債がデフォルトを起こすなんてことあり得るでしょうか?
世界経済No.1の実力を誇り、世界の基軸通貨ドルを発行できる米国政府が破たんする??
んなこと起こるでしょうか?

起こらんでしょう。米国債がデフォルトするなんてあり得ないですよ。

ではなんで、財政赤字懸念が高まると金利が上昇するのでしょうか?

キーワードはインフレです。

 

企業の借入コストが上がるのは、デフォルト懸念が高まるから

先ず企業で考えてみましょう。話は単純です。財務安全性が低下すればデフォルト懸念が高まるので、借入コストは上昇します。要するに借金する時の金利が上がるということです。

企業は銀行からお金を借りることもあるし、社債を発行して投資家からお金を借りることもあります。もちろんタダじゃありません。金利を支払います。

その金利は企業によって異なります。優良企業ほど低利で借金できます。優良企業か否かの判定はS&Pやムーディーズの財務格付けによって決まります。財務格付けが”AAA”の企業がもっとも低コストでお金を借りることができます。

財務格付けは企業の債務返済力を表しています。もっとも重視される指標はインタレスト・カバレッジレシオ(ICR)という指標で、支払利息の何倍の純利益を出しているかを見る指標です。

たとえば、米国企業で”AAA”格付けを与えられている数少ない企業の一つにジョンソン&ジョンソン(JNJ)があります。JNJのICRは26倍です。26倍というのは驚異的な数字です。26年分の支払利息に相当する利益を1年で稼いでいる計算です。

銀行、投資家はみんな安心してJNJにお金を貸しています。まさかJNJへの貸付金の元本・利息の返済が滞るなんて万に一つもないだろうと考えています。なので、JNJの借入利率は激安です。国債利回り+α程度です。マーケットはJNJに対する債権は米国債並みに安全だと判断しています。

デフォルト懸念が小さい安全な企業の借入コストは安くなります。

逆に収益力が弱く、いつデフォルトが起こってもおかしくない企業の借入コストは高くなります。リスクが高くなる分求めるリターンも高くなります。信用力のない個人が消費者ローンから無担保でお金を借りる時に、20%近い高利を取られるのと一緒です。

財務格付けは常に一定ではなく定期的に見直されます。たとえば、かつてエクソンモービルは”AAA”でしたが今は”AA+”です。

財務格付けが引き下げられる理由は主に2つあります。1つが収益力の低下です。収益力が下がればその分、利息を返済する原資が減るわけで前述のICRが悪化します。2つ目がレバレッジの拡大です。M&A資金などのために巨額の借金を背負ってしまえば、いくら高収益な企業であっても利息負担はしんどくなってきます。過剰な借金もICR悪化をもたらすことになり、結果として財務格付け引き下げの原因になります。

なんでインタレスト・カバレッジレシオ(ICR)が悪化すると、財務格付けが引き下げられるのしょうか?

それは、ICRの悪化はデフォルト懸念が高くなることを意味するからです。

債権者は株主とは違います。企業がイケイケドンドンで儲かることなんて期待していません。契約通りに利息と元本を返済してくれるかどうかだけに興味関心があります。債権者にとって一番困るのは、お金を貸した企業の資金繰りが行き詰ってデフォルトを起こすことです。利益成長なんてどうでもいいから、とにかく財務安全性を守ってきちんとお金を返して欲しいの思っているのが債権者です。

デフォルト懸念の高まりが企業の借入コストの増大をもたらします。

 

政府の借入コスト(国債利回り)が上昇するのは、インフレ懸念が高まるから

政府も企業と一緒で借金しています。政府は国債を発行して借金をします。政府もタダでお金を借りれるわけじゃありません。企業と一緒で利息を支払います。その利率が国債利回りです。
(表面利率と利回りは違いますがここではそこは無視。)

企業はデフォルト懸念が高まると財務格付けが低下して、借入コストが上昇すると言いました。

では、国家はどうでしょうか?
国家もデフォルト懸念が高まることで、国債利回りが上昇し借入コストが上がってしまうのでしょうか?

法人減税によって米国政府の収入が減って米国債のデフォルト懸念が高まるから、米国債利回りは上昇しているのでしょうか?

否、特に米国に限ってはそのロジックは通用しないと思います。

率直に考えて欲しいです。

米国政府がデフォルトしている姿を想像できますか?

想像できないですよね。いまだ世界経済ではトップに君臨する米国です。アップルやアマゾンなど世界経済を牽引する企業を輩出し続ける国家が米国です。経済力も軍事力も圧倒的なパワーを持っています。そんな米国が債務返済を拒絶したら世界経済・金融は大混乱です。米国債2大投資家の中国と日本は大打撃です。バークシャーも大ダメージですよ(バークシャーは1000億ドル以上の米国債を保有しています)。

世界経済を混乱させるから、米国債はデフォルトさせるようなことはしません。

とは言え、ない袖は振れません。本当に米国政府の財政が行き詰ればデフォルトになることもあるのでしょうか?

いえいえ、米国財政が行き詰ることってないんです。

なぜなら、、米ドルを刷れるからです。結局、本当に金が足りなくなったらドル紙幣を刷ればいいだけです。

ただし、紙幣を刷ることには代償が伴います。
それがインフレです。

インフレ、つまり物価が上昇するということです。ドル紙幣を増刷すると世の中に出回るドルの量が増えるので、ドルの価値が下落します(=ドル安)。それはドル建て物価の上昇を意味します。

米国の物価が上昇したら、米国民みんなが苦しくなります。特に低所得層は苦しくなります。そうやって、国民全員に薄く広く負担を寄せることが紙幣を刷ることの本質です。米国の財政が仮に行き詰っても、米国民全員から無理矢理カネを引っ張ることで米国債は守られます。

企業と国家はそこが決定的に異なります。

企業が資金繰りが行き詰まればアウトです。企業はお金を刷るなんて魔法は使えませんから。でも国家は違います。国家はお金を刷るという魔法を使うことで、債券のデフォルトリスクを事実上消すことができます。

お金を刷ることを「魔法」と表現しました。しかし、、実際は魔法でも何でもありません。たとえ国家であろうとも無から有は生み出せません。輪転機を回すことで新たに生まれたドル紙幣は、米国民全員から(無理矢理)寄付させることで生まれたようなもんです。

この「魔法」によって、米国債には事実上デフォルトリスクがありません。

じゃあ、米国債に投資する人はノーリスクで債券利息を貰えるのか?
絶対に米国債がデフォルトしないのに年率3%のリターンが貰えるなら美味しいと思うかもしれません。

しかし、世の中そんなに甘くありません。米国債にもリスクはあります。デフォルトリスクはありませんが、インフレリスクがあります。

(期待)インフレ率が上がれば長期金利(債券利回り)は上がります。将来の物価が上昇するなら、それに応じて債券の利回りも上昇しないと購買力を維持できませんよね。債券利回りが上がるってことは債券価格は下がるということで、つまり債券投資家は損をします。

米国債はデフォルトリスクがインフレリスクに転換されます。

結局、リスクは残るのです。ノーリスクで飯が食えるなんてことは残念ながらありません。

企業の借入コスト上昇=デフォルトリスクの高まり
国家の借入コスト上昇=インフレ率の高まり
ということですね。

債券投資は未来のインフレ率に対する賭けだと言われることがありますが、その理由が分かると思います。

 - 投資理論・哲学