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【ジェレミー・シーゲル】運用成績が際立って高い企業の条件の「謎」

      2017/11/30

ジェレミー・シーゲル氏は著書『株式投資の未来』の中で、運用成績が際立って高かった企業の条件を3つ挙げています。

①PERが市場平均をわずかに上回る程度
②配当利回りが市場平均並み
③長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている

①と③に注目したいです。この2つちょっと矛盾を感じます。PERが市場平均を超えているにもかかわらず、増益率は市場平均を大きく上回るって、、なぜこんなことが起こるのでしょうか?

この謎の解の中に、「成熟」企業の長期投資リターンが高いことの秘密が隠されている気がするんです。

 

PERが高いバリュー銘柄=投資家の安心感が高い成熟企業

PERが50倍を超えるようなグロース株は置いておくとして、配当を開始して10年以上経過しているようなバリュー株でPERが市場平均を超えている企業は、一般的には収益が高くかつ安定している成熟企業です。PERが高いってことは利益の割に株価が高いということで、一般的には投資家の安心感が高い企業です。

グロース株の高PERは高い成長期待の表れですが、バリュー株の高PERは安心感の表れという面が強いです。リターンに安心感が持てるから、一株当たり利益(EPS)に対してちょっと高めの株価でも、その株に投資しようと思う人がいるわけです。

米国外でたばこ事業を行うフィリップモリスの実績PERは23倍とS&P500平均の20倍を超えていますが、これはフィリップモリスが今後生み出すキャッシュフローに対して、マーケットが安心感を抱いている証です。FDAによるニコチン規制強化の動きがヨーロッパなど他国にも広がる可能性は十分考えられますが、それでも投資家はフィリップモリスの未来を安泰と判断しているようです。ちなみに、FDAのニコチン規制の影響をもろに受けるアルトリアグループのPERも21倍あります。

IBMのPERは12倍でS&P500平均の20倍を大きく下回っています。2011年に1000億ドル以上あった売上高は今や800億ドル未満です。バフェット氏もIBM株を手放しているし、アナリストの評価も今のところ低いです。投資家はIBMの将来キャッシュをまだ信用していません。最近、業績回復の兆しが見え始めましたが、今の低いPERは依然として投資家期待が低いことを示しています。投資家は、IBMが本当にこれから復活して、利益が増加して多額の配当をもたらしてくれるのか不安に思っています。マーケットに安心感はありません。その不安な気持ちがIBMの低PERに表れています。

PERの逆数を株式益回りと言います。(一株当たり)利益100で株価2000ならPER20倍です。株価は利益の20倍で取引されていますね。そして、株式益回りは5%になります。2000で投資して利益が100なら利益率は5%ですよね。

株式益回りとは株式の期待リターンを示唆しています。
(実際には、投資リターンと益回りは一致しませんが。)

PERが市場平均より高い銘柄(バリュー株)とは、マーケットの信頼が厚い銘柄だと言えます。信頼できる強い企業だからこそ、PERが高く株式益回りが低くてもいい(リターンが低くてもいい)と投資家は判断してくれます。

「この株価で投資しても大きな儲けはないのは承知しているけど、フィリップモリスの事業は安泰だと思うから投資しよう!」

こんな風に考える投資家が多いから、フィリップモリスのPERは23倍にまで上がっています。

すでに配当を出してそこそこの年数が経過しているPERの高い企業は、過去の実績がある成熟企業であるケースが多いです。やはり厳しいビジネスの世界において、投資家が安心してリスク資本を提供できる銘柄というのはごく一部の超優良企業に限られます。何十年、いや100年以上もの間生き延びて、キャッシュを創出し続けてきた企業だからこそ、投資家は多少割高で期待リターンが低くても投資しようと思ってくれます。

なので、高PERの企業は一般的には成熟企業が多いです。人間で言えば、とっくに学校は卒業して社会人年数も長い仕事のできるオジサンって感じです。40~50歳くらいの管理職というイメージでしょうか。仕事の安定感は抜群です。

高PER企業の成長は鈍化しているケースが多いです。フィリップモリスの売上高なんて、ここ5年間成長するどころかむしろ減少しています。2012年度に300億ドル以上あった売上高は、2016年度は270億ドル以下にまで落ち込みました。ドル高の影響があったのは事実ですが、成長企業でないことは疑いようがありません。

(バリュー株で)高PER=投資家の安心感が高い=成熟企業
と言えます。

 

誰しも遠い未来まで利益を待ちたくはない!

長期的な増益を仮に予測できたとしても、それを材料に株は買われない。

もう一度冒頭の、シーゲル氏が言う、運用成績が際立って高い企業の条件3つを載せます。

①PERが市場平均をわずかに上回る程度
②配当利回りが市場平均並み
③長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている

赤字にした①と③に注目です。

シーゲル氏によると運用成績が高い企業は、PERが市場平均より高いにもかかわらず、長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っていました。さきほどフィリップモリスの例で言いましたが、高PERの企業は成熟企業が多く売上成長率も低いです。

でも過去を振り返ると、高PERの成熟企業は長期では市場平均を超える成長を実現してきたのです。期待を超える利益成長(=配当成長)だったから、投資家のリターンも高くなりました。

ポイントは「長期」という点です。

2012年~2016年のフィリップモリスの売上はマイナス成長でした。でもそれはたった5年という時間軸でしか見ていません。

高PERの成熟企業は実は「成熟」しておらず、その広い経済的濠を武器に、長期ではさらにマーケットを支配して利益成長を成し遂げてきました。オーガニックな成長だけでなく、M&Aによる成長もあるでしょう。米国では大企業同士のダイナミックなM&Aが日常茶飯事です。

「成熟」企業の株価には、秘めたる将来の成長余地が過小にしか織り込まれていなかったということです。

マーケットはそれら高PERの成熟企業のバリュエーション判断を誤っていたということでしょうか?

一見利益成長が鈍化しているように見える企業が、実は長期ではしっかり成長するという未来をマーケットは予測することができなかったのでしょうか?

確かに、それもあると思います。すべての投資家の英知が集合する株式マーケットでさえも、企業の未来の利益成長を予測するなんて簡単なことじゃありません。

でも、、それだけじゃないのかもしれません。

本当はマーケットはわかっていたのかもしれませんよ。
長期では、市場平均を超える高い成長が可能だと。

わかっていたけど、その予測を株価に織り込むことはなかった。
遠い将来の利益成長を材料に、株を買うことはなかった。
いや、できなかった。

そう、できなかったんじゃないでしょうか。
投資家はそんな将来の利益成長なんて、悠長に待ってられなかったのではないでしょうか。

明日貰える1万円
1年後に貰える10万円
どちらを選びますか?

1年待てば1万円が10万円になるんだから、テンバガーです。年率900%という凄まじいリターンです。こんな投資機会滅多にありません。経済学が前提とするホモ・エコノミクスであれば、前者を選ぶ理由はありません。100%後者の1年後の10万円を選ぶはずです。

でもね、多分現実は違うんです。1年後の10万円を犠牲にしてでも今すぐ1万円貰って、ドラクエ11を買いたい人が世の中にはたくさんいるんです。

当たり前ですが、投資家は人間です。

将来の利益なんて待ってられない、待ちたくない投資家は普通にいるわけです。てか、そっちの方が普通かもしれません。お金を預かっているファンドマネージャーは短中期で評価されがちです。個人投資家でも、長期間のんびりマーケットに居続けたい人もいれば、バチバチマーケットで闘いたい人もいます。

市場平均を僅かに上回るPERの企業が、市場平均を大きく上回る成長を実現したことで、それらの企業の株を長期保有していた投資家は高い利益を獲得することができました。将来の成長性を考慮すれば、本来は市場平均を大きく上回るPERで評価されて然るべきだったのです。でも、実際は市場平均を僅かに上回る程度のPERで済んでいました。

これは、マーケットの誤りでしょうか?

いや、違うと思います。リアルな間違いじゃなくって、確信犯的誤りだと思います。マーケットはもっと高いPERで評価されても良いとわかっていたのかもしれません。でも、わかっていても買えなかった。なぜなら、そんな遠い未来の利益なんて待てなかったからです。

遠い未来の利益なんて待ってられないのです。今すぐお金が欲しいのです、みんな。それは普通の発想です。私も30年後なんかじゃなくって、今すぐ1億欲しいです。別に望んで”長期”投資しているわけじゃないです。仕方なく長期投資しているだけです。早く金持ちになれるなら、それに越したことはないと思ってます。

英国の経済学者ケインズは、こんな言葉を残しています。

人生は短すぎる。人間の性格は短期の結果を熱望し、すぐに金儲けはしるおかしな風潮があり、遠い将来の利益に対する割引率は高利。

ジョン・メイナード・ケインズ


これ、真実だと思ってます。だって、私自身もできれば短期でお金持ちになりたいと思っていますから。やりたくて長期投資しているわけじゃないですから。

 

市場平均を僅かに上回るPERで評価されている優良企業は、本来は市場平均を大きく上回るPERで評価されるべきなのかもしれません。単純にPERを見ると割高に見えて、実はバーゲンセールなのかもしれません。500万円の車って言えば普通は高いですが、ポルシェ911カレラが新車で500万円なら激安なわけです。

ただ、現在高PERのフィリップモリスやコカ・コーラが、長期で市場平均を大きく上回る成長が可能なのか、正直言って疑問です(汗)。そのため、自分の理論や考えを過信せずに適度に分散して投資をしています。IBMやベライゾンなど、PERが市場平均を下回る所謂割安銘柄もポートフォリオに加えています。

 - 投資理論・哲学