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WACC計算で株主資本を必ず時価にすべき理由

   

子供の頃のお勉強でも大人になってからの仕事でも、何となくわかった気になっていることってよくありますよね。

数学なんてとりあえず解法や公式だけ丸暗記してテストに臨むなんて普通のことでした。三平方の定理とか二次方程式の解の公式、数列の公式Σとか。

仕事でも私は経理部で細かい資料を作成することもあるのですが、何となくわかっているようなわかっていないような感覚で作業をすることがたまにあります。

昔誰かが作った複雑なマクロが組まれているエクセルファイルだけど、この資料はどういうロジックで作成されているのだろうか?と思いつつ、忙しいのにかま掛けて本質的な理解は後回しにする。連結会計システムが自動でいろんな仕訳を作成しているけれど、この連結仕訳はどういう意味だっけ?まあいいや時間ないし。とかもしょっちゅう。

株式投資やファイナンスでも、普段に何気なく使っている言葉や数値でもその本質を理解していないことって多々あるのではないかと思います。


  WACC計算に必要な投資家目線

WACC(ワック)とはWeighted Average Capital Costの略で日本語では加重平均資本コストと言います。

WACCとは企業がビジネス活動で超えるべきハードルレートであり、投資家視点から言えば要求利回りと言えます。

企業はWACCを超えるリターンを生み出してこそ社会的価値を生んでいると言えます。
企業は「社会の公器」であることは全く否定しませんが、その所有者は株主であり最も多大なリスクを負担しているのも株主です。株主資本コストを含むWACCを超える収益率を達成してこそ、企業は社会的存在価値があるのだと僕は敢えて言いたいです。

WACCの計算式は以下の通りです。

WACC=株主資本コスト*E/(D+E)+負債コスト*D/(D+E)*(1-実効税率)
D:負債総額
E:株主資本

式を見るとちょっと難しく見えるかもしれませんが、要するにバランスシートの右側である債権者と株式投資家の要求リターンを加重平均しているということです。

このWACCを実務で計算する人は少ないかもしれませんが、株式投資に興味のある人は見たことくらいはあると思います。

このWACCの計算では、Eの部分である株主資本は必ず時価である必要があります。
通常は負債コストより株主資本コストの方が高いので、株主資本を時価にしないとWACCが不当に低く算定されてしましいます。

ファイナンスの問題ではこの株主資本を時価ではなく簿価で計算してしまい間違うパターンが散見されます。

WACCの計算で、株主資本って時価だっけ簿価だっけて迷う人もいると思います。

なぜ迷うのでしょうか?

それはこのWACCの公式を丸暗記しているだけで、本質的な理解をしていないからです。

WACCとは何なのかを考えてみれば、株主資本は簿価ではなく絶対に時価にすべきと理解できるはずです。

なぜWACC計算で株主資本を時価にすべきなのか?

その答えは非常にシンプルです。

投資家は時価で株を買う必要があるからです。

WACCって投資家・債権者目線で考えると何でしょうか?
それは企業への要求利回りです。投資家として企業に求める資本収益率です。

WACCが7%であれば、株主と債権者は平均して7%のリターンを企業に要求しているということです。企業はその期待に応えて企業価値を向上するためには7%以上の投資リターンを達成する必要があるということです。

で、株式投資家であるあなたは投資利回りを計算する時どう計算しますか?
配当利回りを計算する時どう計算しますか?

時価をベースに計算しますよね?あたりまえですが。

配当利回りが3%という時、それは配当総額を株式時価総額で除した金額が3%ということです。あなたが、100万円分の株を買ったら約3万円の配当が貰えるということです。

最終的な投資利回りを計算する時も、自分の投資額(=当時の株式時価)に対していくらの配当、キャピタルゲインを得られたかを計算しますよね。

だから、WACC計算では必ず株主資本を時価にする必要があるのです。

株主資本を時価にしないと本当に株主が求めているリターンを算定できません。だって株主は自分の投資額(時価)を基準に利回りを計算するのであって、純資産簿価を基準に投資利回りを考えるわけではないからです。

WACC計算で株主資本を簿価にするとは企業内部から言えば極めて投資家意識が欠けた発想です。経営者として株主期待に応えるためにいくらのリターンが必要かを計算するうえで、WACC計算の株主資本を簿価にするということは株主が時価で投資をしているという事実を無視していることになります。

株主資本簿価に対して利回りがあっても株主にとって意味はありません。なぜなら繰り返しになりますが、投資家は時価で株を買うからです。

これは米国優良企業の議論をする時はより重要です。米国優良企業は純資産簿価と純資産時価(株式時価総額)が大きくかい離するからです。もちろん時価の方が大きいです。PBRが高いということです。

例えばコカ・コーラ(KO)のPBRは6倍もあります。純資産時価(株式時価総額)が純資産簿価よりも6倍も高いということです。

コカ・コーラの株価が42ドルの時、コカ・コーラの一株当たり純資産は7ドルということです。

何度も当然のことを言って失礼しますが、当たり前ですが投資家は42ドルでコカ・コーラ株を買うのであって簿価の7ドルで株を買えるわけではありません。
だからこの42ドル(時価)を基準にコカ・コーラのWACCを計算する必要があるわけです。

PBRが大きな優良企業では、株主資本を時価にするか簿価にするかでWACCの計算結果は大きく変わります。
高収益な優良企業になればなるほどWACC計算の株主資本は時価にすべきです。

時間は有限ですし、仕事でも何でも完璧は無理だと思います。コスパを考えることが大切だと思います。
日本人は完璧主義な傾向にありますし、それが世のブラック企業を生む土壌だと思います。

簡便化や効率化は僕はとても大好きです!何でもかんでも努力努力という根性論は嫌いです。

仕事でお給料をもらっているから仕事はなんでも完璧にと思う気持ちは大切かもしれません。でも、お給料をもらっているからこそ効率性を重視すべきだとも思います。無駄な残業とか命の浪費です。

WACC計算も簡便に株主資本を簿価でやりたい気持ちはわからなくはない。効率化は大切。

でも何でも効率化していいわけではない。コストとベネフィットです。
株主資本を簡便的に簿価にすることで誤ったWACCが計算されてしまうデメリットは無視できるものとは思えません。

公開企業であれば時価にするのなんて簡単でしょ。株価と株数かけて終了ですよ。もちろん、これを日々の株価で見直すとなれば大変でしょうけど。

年初の株価でWACC計算して、後は株価の重要な変動がなければ見直さないとか、株価が20%以上増減したら見直すとか、方法はいくらでもあると思います。

WACC計算で株主資本を簿価にすることによる経営判断ミスリードの影響は大きいと思います。投資計算では割引率が1%変わるだけでNPVは大違いです。

WACC計算で株主資本を簿価にしてもよい場合があり得ます。

それは株主資本の簿価と時価がかい離しない場合、PBRがほぼ1倍の企業の場合です。

そんな会社ある?

ありますよ。

日本企業です。

日経平均構成銘柄の平均PBRは1.2倍ほどです。

このような、日本企業のWACCを計算する時は株主資本は簿価でもいいと思います。でも、簿価にしてもいい理由はきちんと理解しておくべきです。投資家の投資額(株式時価)と純資産簿価がほぼ等しいから、簡便的に株主資本を簿価にしても大きな弊害はないといことです。

本質を理解していれば、日本企業なら何でも株主資本を簿価にしていいわけではないとわかりますね。

あくまでも日経平均のPBRが1.2倍なだけで、各社の数値はまちまちです。

例えば花王のPBRは4倍強あります。

花王のWACCを計算するうえで株主資本を簿価にするのは乱暴でしょう、時価にすべきです。

WACCとは投資家の要求するリターンだということを忘れてはいけません、投資家目線を持つことを忘れてはいけません。WACCとは何かその本質を理解して考えてみることも、たまには必要ではないでしょうか。そんな機会をこの記事が皆様にご提供できていれば本望です。

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