株式と債券は競合する関係です、ライバルです。

株式リターンと債券リターンは長期で均衡するという理論すらあります。FEDモデルと言います。株式の益回りと10年債利回りは長期で均衡するという理論です。私はあんまり腑に落ちて納得はしていませんが。。

債券利回りの上昇(金利の上昇)は株式にとっては不利です。債券の投資利回りが上がるんだったら、株を売って債券を買いたい投資家が増えるからです。債券利回りが上昇すれば、その分株式の魅力は相対的に低下します。

トランプ大統領当選後に米10年国債利回りは1.7%から2.5%ほどまで上昇しました。債券が売られて債券価格が下落しました。ということは、債券の魅力が高まるので株式も売られました。実際、債券と特に競合関係にあるフィリップモリスなどの高配当銘柄の株が売られました。

高配当ディフェンシブ株の配当は安定しているので、もはや確定利付きの債券の利息のように見做されます。なので、債券利回りが上昇すると釣られて高配当ディフェンシブ株の配当利回りも上昇するまで売られがちです。

このように、株式と債券は競合する関係で、株式の中でも高配当ディフェンシブ株はとりわけ債券と競合する関係にあります。

ところがちょっと意外かもしれませんが、高配当ディフェンシブ株よりも金利上昇に敏感に反応するのが無配のグロース株です。無配グロース株も高配当株と同じく金利上昇に弱い側面があります。

なぜ配当を出しておらず、一見して債券とあまり競合しないように思える無配グロース株が金利上昇(債券利回り上昇)に弱いのか?

それは、逆説的ですが、無配だからです。

無配企業であってもその株式価値の根拠は配当です。無配企業であっても、いつか必ず配当を出します。その遠い将来の配当を現在価値に割り引いた金額こそが株式の理論価額です。

無配企業であっても、5年後か10年後かはたまた20年後かに始まる未来の配当金の現在価値がその株式価値となります。

つまり、無配企業の場合、将来の配当を現在に割り引くために必要な年数が長いということです。割り引く年数が長いということは、それだけ金利上昇のインパクトを受けやすいということを意味します。

 

 

1年後の100万円を6%で割り引けば、94万円です。
1年後の100万円を8%で割り引けば、93万円です。

10年後の100万円を6%で割り引けば、56万円です。
10年後の100万円を8%で割り引けば、46万円です。

金利(=割引率)が2%上昇したのはどちらの例も同じですが、1年後のキャッシュの現在価値には1万円しか影響しません。ですが、10年後のキャッシュの現在価値は10万円も変動します。

それは単純な理由で、1年後のキャッシュは1年分しか割り引かなくていいのに対して、10年後のキャッシュは10年分も割り引く必要があるからです。

無配のグロース株の配当がいつから始まるかは予測し得ませんが、少なくとも今年来年の話ではありません。ある無配株の配当開始が10年後だと予測されていれば、その10年後の配当金の現在価値は金利が1%上昇するだけでかなり減少してしまいます。

このように、無配株は有配株より金利上昇に弱い性質があります。

それはファイナンス理論的に言えば、上記の通り現在価値に割り引くまでの期間が長いからと言えます。

より実務的に言えば、世間の金利がぐんぐん上昇してるのにいつまでもいつまでも無配で俺は我慢できないよ!、もう売る!って思う投資家が多くなるということです。

 

 

FEBが利上げを加速するのではとの報道が散見されます。

ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は2017年は年4回の利上げが望ましいと発言しています。フィッシャー副議長は年3回の利上げが適切だと発言しています。サンフランシスコ地区のウィリアムズ総裁は4回以上の利上げも排除しないと発言しています。

FRBのタカ派的な発言が目立ってきました。

先日のFOMCで唯一利上げに反対したミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁以外はタカ派に変貌しつつあるように思います。

今後の雇用統計で示される失業率や賃金動向、インフレ率によってはアメリカは利上げを加速する可能性があります。先日の利上げでは長期金利はあまり動きませんでしたが、今後度重なる利上げを続ければ、長期金利も上昇してくると考えるのが自然です。

そうなれば、株式の魅力は相対的に低下していきます。今の高PERを支持しているのは低金利なわけですが、その前提が崩れます。FRBが2017年に本当に4回も利上げすれば、さすがに株価は調整する場面はあると思います。

大統領当選直後のように高配当ディフェンシブ株は売られると思います。

そして、それら高配当ディフェンシブ株以上に無配グロース株も売られる可能性が高いです。