うちの部署ではここ数年で飲み会に参加する人が極端に減りました。特に若い人。私が入社した頃(8年くらい前)は、歓送迎会などがあれば8割くらい人が参加していましが、最近は半分行けば良い方でしょうか。

入社した年の忘年会、私は最初「欠席」と回答したのですが、その後上司に部屋に呼ばれて「出席しなさい」と諭されました。別に脅しではないですよ。あくまでも笑いながらの会話。結局忘年会には参加することになりました。転職とは言え新人なんだから忘年会くらい出て飲みニケーションしろって意図だったのかもしれませんが、ちょっと驚きました。こういう会社なのかな?って思いましたね。

今ではそんなことあり得ません。そんなこと部下に言おうもんなら「パワハラ!」って訴えられそうな勢いです。

私が基本飲み会に参加しないキャラなのはこの8年間変わらずですが、社内全体的な流れとして飲み会に参加する人が減ってたなあと感じます。お酒大好きなおじさん達と管理職の人は大半が参加しますが、実務レベルの若い人たち(私の同年齢くらい)の参加率はめちゃくちゃ低いです。

これはうちの会社、部署での話であって、世間一般的なことは知りません。でも、この傾向は他の会社さんでも同じなんじゃないかなと推測します。

なぜ、社内の飲み会に参加する人が減ったのか?

私は社会が豊かになったからだと思っています。

昔は終身雇用のもと、会社の仲間は家族同然という認識だったと聞きます。社内旅行や運動会など交流の機会も多かったです。結婚のお世話もしたそうです。

うちの会社で実際に聞いた話ですが、独身で海外赴任させていた男性社員が35歳前後になり、会社が「このままではまずい」と一時帰国させてお見合いを設定し、その社員は無事結婚したそうです。隔世の感を禁じ得ないです。今では恋人の有無や結婚の予定を聞くこと自体がタブーといった雰囲気です。特に上司が部下に聞くのは無しですね。

会社とは雇用関係を結んでいるだけ。やることやったらさっさと帰る。残業しない。仕事より家族、友達優先。人それぞれですが、全体としてはこういう風潮を感じます。政府も働き方改革を推進しています。働き方改革=長時間労働を止めるというのは解釈が表面的過ぎる気はしますが、結果として労働時間は減っています。残業はかなり減りました。

会社との関係がドライになり、合理化という名のもと労働時間が減っているのは、ひとえに社会が豊かになっていることが背景にあると思います。

パソコンの高機能化、ERPなどのシステム、マイクロソフトの生産性改善ツール(エクセルなど)、最近ではクラウドやAIの技術などによって仕事の生産性は年々改善しています。

日本人の平均年収はこの20年ほぼ横ばいで、豊かになっていないように見えますが、特にIT関連の技術革新の恩恵を受けて私たちの生活は格段に便利になっています。日本の平均年収は420万円だそうです。高級スマホのiPhoneを余裕で買えます。グーグルマップをダウンロードすれば、無料で世界地図が見れる上に現在地まで表示してくれます。

日本は貧しくなっているとよく言われますが、本当にそうでしょうか。中流層の幸福度はそれほど低いとは思いません。私が比較的恵まれた大企業にいるから、そう感じるだけかもしれませんが。

でも政府が働き方改革なんて言い出すってことは、そういうことなんだと解釈しています。人ががむしゃらに労働しなくても今の社会は維持できると、お役人さんは判断しているのではないでしょうか。

昔は良い生活を送るためには会社での人間関係が今よりずっと重要でした。が、今は違います。会社に忠誠を尽くして奉仕しなくても、そこそこ給料を貰えれば便利な生活が維持できます。無理して出世するインセンティブは小さくなりました。テクノロジーの進化でフリーランスという働き方も登場しています。

その結果、社内の人間関係を構築維持しようというモチベーションも減り、飲み会の参加率も低下したんだろうと思います。自分の行動の動機を客観的に見つめると、そういう心理があることに気が付きます。会社の仲間は大事だけど、あくまで仕事上のパートナー。飲み会を通じて個人的に仲良くなりたいとまで思わない。その必要性を感じない。純粋に楽しめる飲み会だけ参加したい。

インドなど所得の低い国では1世帯の構成員が多いです。日本など所得の高い国は単身世帯が増えます。その延長線上に飲み会の参加率低下があるように思います。

所得が上がって一人でも生活を維持できるようになると、人は村社会的な人間関係を無意識に切り捨てるのでしょうか。もしかしたら、少しでも売上高を伸ばしたい資本主義の圧力が、コミュニティの分離を陰で推し進めているのかもしれません。

個が重んじられる時代ですが、それが本当に幸せなことなのかはわかりません。社会資本を自ら築く努力をしないと不幸になる時代とも言えるかもしれません。広がる格差は金融資本に限りません。