読者さんより

初めまして。
僕は現在アメリカに住んでいて、年齢はHiro sanより少しだけ上の〇〇といいます。

私もアメリカ株を保有しており、いつもHiro sanのブログを読ませてもらって勉強させてもらったり共感したり勇気付けられたりしています。いつもありがとうございます。^^

僕は11年前に日本の大学を卒業後、日本のメーカー企業に就職して、約2年前に異動となりアメリカ西海岸のシリコンバレーで働いています。アメリカでは異文化に戸惑うこともありながらも、楽しく仕事できています。
その中で感じるのは、アメリカ経済の力強さです。長期的にアメリカ経済が発展することは、理屈では理解できていたつもりでしたが、実際にアメリカで生活・仕事をすると、その力強さを日々感じることがあります。そのような体験からも、アメリカ株への長期投資は間違いではないと感じています。

長期投資先のことを理解することは非常に重要なことと考えますが、アメリカに住んでみないと分からないことは多々あります。
出身が理系なので金融のことは疎いのですが、もし何かご質問ございましたら いつでも連絡してください。答えられる範囲でお答えさせてもらって、Hiro sanの役に立つことがあれば幸いです。

Hiroより

〇〇さん、はじめまして。ご丁寧にご連絡ありがとうございます。
日本人投資家として一次情報がないのが自分の一番の弱みだと思っています。ベライゾンやAT&Tなど100%ドメスティック企業なので、どれくらい知名度があるかも想像の域を出ません。

曖昧な質問で大変恐縮なのですが「実際にアメリカで生活・仕事をすると、その力強さを日々感じることがあります。」のところを具体的に教えて頂けると嬉しいです。

私は仕事(経理)で米国の担当者とコミュニケーション取ることがよくありますが、会計のことを理解している人もいれば、あまり知識がなくて頼りない人もいます。アメリカ経済ってこんな人材レベルでここまで強くなれるもんなんか?って思う時が(失礼ながら)あります。ちょっと偉そうなこと言ってすみません。メールとたまのテレカンファレンス程度なので、ほんの一部しか見てないとは思いますが。

アメリカ経済の力強さを一番感じる点はどこなのか、とても興味があります。
(法制度、カルチャー、パーソナリティ、教育・・・)
何卒よろしくお願いいたします。

Hiro

読者さんより

Hiro san,

かなり遅くなってしまい、すみません。。
実は11月に一時帰国で日本に帰っており、しばらくぶりの温泉を満喫してきました。

長くなってしまいましたが、内容まとめましたので、添付ファイルをご確認ください。

読者さんの添付ファイルの内容(ワード5枚分ものレポートを頂き、すべて掲載は厳しいので一部抜粋します)

カルチャー

アメリカは移民大国の多国籍国家である。その中でも私の住むカリフォルニアのシリコンバレーは特殊で、もはやアメリカというより多国籍国家といっても差し支えないくらい独自の発展を遂げている。仕事柄 シリコンバレーのIT企業を訪問することがよくあるが、ミーティングルーム入るとメンバー全員がアジア系ということもザラである。ちなみに、カリフォルニアだけで国毎GDPの4番目に入る経済力があり、アメリカ経済を牽引している代表的な州である。

カリフォルニア州に住む人種は様々で、日本、中国、韓国、台湾、インドといったアジア勢に加え、中東、欧州、北中南米の様々な人種の方が、アメリカに移り住んで2世、3世となり生まれも育ちもアメリカという人から、私のように出向者として一時的に移住している人まで、本当に様々なバックグラウンドを持った人が生活している。 育ってきた環境が様々であることから、受けてきた教育水準やそれぞれが持つ文化背景はバラバラである。

日本のように言わずとも分かる”察する”といった阿吽の呼吸はほとんど存在しない。 生まれ育った環境・文化が違い、思想も大きく異なるため、そもそも相手が何を考えているのか察する事が難しいのである。よって、何か伝えたいことがあるときは明確に言葉で伝える必要がある。逆に“察する”事を期待して相手に言葉で伝えないと相手には何も伝わっておらず、結果的に言わないと損になることが多い。

“相手は普通この程度はやってくれるだろう”という考えは、”普通”の基準が様々なバックグラウンドを持つアメリカ人では大きく異なるので、通用しないのである。端的に言ってしまえば、言わないと負け、言ったもの勝ちの世界である。

日本のような同調圧力はあまり存在しない。アメリカでは他人と違って当然で、他人との差をいちいち気にされる事がなく、より開放的な自由な雰囲気がある。

身近な例として服を出すと、日本では秋に夏服を着ていると変な目で見られるが、アメリカでは多種多様である。ダウンジャケットを着ている人の横で、Tシャツ・短パンを着ている人もいれば、上半身裸でランニングしている人もいる。そして彼らがお互いのことをオカシイという目で全く見ていない。気温が同じでも、人種が異なるのでDNA・体質的に感じる温度は変わるだろうし、人とは異なる事が普通であり当然のこととして根付いている。

教育

私の子供はPreschool(日本でいう幼稚園)に通っている年齢なので小学校以上の教育はあまり詳しくはないが、小学校に通わせている知り合いから聞いた話で、授業参観の面白い話を聞いたことがある。小学校低学年の授業参観で「2階から卵を落として割れないようにするにはどうすれば良いか」を各自考えて、授業参観当日に実行するとのお題が出たとの事。発想は様々で、卵を凍らせてくる子もいれば、羽みたいなものを付けてくる子もいたり、いろいろと面白いアイディアがでたよう。

日本だと先生が問題を出す、それに対して正しい回答を言わないと間違えると恥ずかしいといった雰囲気があるが、アメリカだとその感覚があまりない。仕事でもどんどん自分の意見を発言し、それが正しいかどうかはさておき、まずは自分の意見を言う。間違った意見を言うよりも、何も言わないほうが悪で、意見を言わない人は仕事ができない、と思われる文化である。

日本人は正しいことを言わないといけないと考えるあまり、発言数が少ない。一方アメリカ人は間違っていても意見を言うことが重要と考える文化である。ディベートは活発になりがちで、ゼロベースでアイディアを出し合うブレインストーミング等でも、経験上アメリカ人のほうが活発に様々なアイディアが出る印象がある。

日本では会社の同僚と株の話をすることはほとんど無かったが、アメリカでは株が趣味だという同僚の人もいたし、また別の同僚でもこの株を買っているとか、あなただったらアメリカのどの株を買うか?と質問されたこともあったし、得意先のアメリカ人とランチを食べている間に、株は持っているかと聞かれたこともあった。

日本よりもアメリカのほうが金融リテラシーが高いという印象がある。

パーソナリティ

アメリカは合理主義である。日本だと組織の中で意思決定するには打合せを重ねて、各組織のトップマネジメントの承認を取って前に転がるプロセスが一般的である。私自身、日本で働いていたときは会議に忙殺されていたが、アメリカでは社内会議自体がほとんどない。

(合理主義の)身近な例だと、道路交通にて車の右折は基本的に赤信号でも可である。歩行者、反対車線からの左折、Uターン等に気をつけなければならないが、これらの安全が確認できれば、いつでも右折可能の交差点がほとんどである。これは非常に合理的で、最初は危険では?と思ったが、実際に試してみると非常に便利である。

アメリカでは日本と比較し、子供も大人も”人間らしく”生きている。 親族の危篤に仕事で行けない、過労死で命を絶つ、このような事はアメリカではほとんどないと感じる。家族を非常に大切にし、仕事は一部であって全てではない、そう割り切って生活できている人が多いように感じる。(少なくとも私の周りでは)

社会的弱者に対しては非常に優しい。駐車場には必ずハンディキャップの方専用の駐車場があり、またバス等の公共交通機関で男性が女性に席を譲ったり、荷物を席上の荷台に載せるのを手伝ったりすることは当たり前の事として実施されている。(むしろ、そうしないと白い目で見られるくらいである。)

子供に対しても非常に優しい。上記のように子供はうるさくて当たり前という前提が日本よりも浸透している。私は以前 夜子供が寝る時間にオムツの在庫が切れていることに気づいて、慌ててスーパーに買いにいったことがある。夜10:00頃に子供のオムツを持ってレジに並んでいたところ、前に並んでいた人が“こんな時間にスーパーにオムツを買いに来ているなんて、きっと緊急なんだろう”と先に会計するよう順番を譲ってくれたことがある。子供に対しては、なんて優しいんだと感動した覚えがある。

また子供と一緒に歩いていると、日本以上に声を掛けられやすい。アジア系の赤ちゃん・幼児が珍しいということもあると思うが、とにかくよく笑顔で喋りかけられることが多い。

仕事・サービスにおいて、日本ではマニュアルが徹底されており、一定以上の質が見込まれるが、アメリカは人に依る差が非常に大きい。できる人はできるが、できない人は全くできない。サービスを受けるため家で待っていても(例えば引越し手続きや, WIFI接続のモデム設置等)、指定時間に来るとは限らないし、指定時間から遅れてきても特に悪びれる様子すらない。

サービスが悪い人に当たってしまった場合は、アメリカ文化とはこういうものだと理解するしかない。いちいち腹を立てていても、嫌な気分になるし、もったいないだけである。

イノベーション

アメリカでは自動運転を始め自動車市場が大きく変わる100年に1度の変革期を迎えようとしている。シリコンバレーは携帯電話市場に関連する企業が従来多かったが、最近では車市場に関連する企業も増えてきており、大企業はもちろんのこと、車関連のスタートアップ企業も非常に増えている。

この中でも自動運転関連の市場が大きく期待されており、カメラ、センサー、自動運転プラットフォーム、Laser, LIDAR, Telematics といった様々な機能が車に搭載され、自動運転技術を支えるスマートカーを実現するために様々な企業が鎬を削っている。既に実用化している例もあり、Waymo(Alphabetの傘下企業)はArizonaで自動運転タクシーのサービスを開始した。

また配車サービス事業では、UberやLyftは手軽で簡単で尚且つ安いので、アメリカではタクシーよりも一般的な配車サービスとして定着している。車以外の市場を見ると、決済サービスのPaypal, Venmoはアメリカで完全に定着している。私は硬貨を持ち歩いていないし、最後にお金をおろしたのがいつか記憶にないくらい、現金を持ち歩く必要性がほとんどない。

アメリカ生活は快適

私は日本が好きですし日本に戻り日本で暮らしたいと考えていますが、現在のアメリカ生活は非常に快適です。まず仕事が非常にやりやすいです。社内会議は少ないですし日本特有の根回しといった事も必要なく、また出勤時間もかなり緩くかなり自由で、結果重視の世界です。

プライベート面でも拙い英語でも快適に感じるほど住みやすいです。仮に私がアメリカ人だったら、アメリカから出たくなくなるだろうなと思います。アメリカは貧富の差が激しいと言われています。確かにその通りですが、ある程度の学歴や経験があれば(例えば日本でいう国公立大学、または相当以上の私大卒業)、日本よりも結構イージーモードじゃないかなと思います。

まだまだ私が気づいていない点も多くあろうかと思います。文化的知見を深めていけるよう、引き続き限られたアメリカ生活を楽しみながら送ろうと思います。