運用成績が際立って高い企業はたいてい、

①PERが市場平均をわずかに上回る程度で、

②配当利回りが市場平均並みで、ただし

③長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている。

運用成績上位20銘柄のPERは最高でも27倍だ。これが黄金銘柄(コーポレート・エルドラド)に共通する特徴だ。

『株式投資の未来』

この3つの条件に該当する銘柄って何があるだろうか?
米国大型株限定ですが、いくつかピックしてみます。

と、その前に条件をもう少し具体化したいな。

先ず①の「PERが市場平均をわずかに上回る程度 」というのは、2019年予想EPSに基づくPERが20倍~30倍としよう。そして、②「配当利回りが市場平均並み」というのは、利回り1.5%~2.5%くらいかな。③が難しい。「長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている」というのは、将来のEPS成長率を予想する必要があります。まあ、過去のEPS成長率が高けりゃ合格にしようかな。まあ、③はちと個人的な感覚に基づくことになりそうだけど、先ずは客観的にスクリーニングできる①と②ですね。

①予想PER20倍~30倍
②配当利回り1.5%~2.5%


この2つを満足する優良企業(≒大型企業)を探してみようと思います。

サーチ結果。

マイクロソフト(PER28倍、利回り1.4%)
ウォルマート(PER24倍、利回り2.1%)
ウォルトディズニー(PER20倍、利回り1.3%)
ホームデポ(PER20倍、2.7%)
マクドナルド(PER24倍、利回り2.4%)
アボットラボラトリーズ(PER24倍、利回り1.6%)
ハネウェル・インターナショナル(PER21倍、利回り1.9%)
ユニオン・パシフィック(PER19倍、利回り2.0%)
イーライリリー(PER21倍、利回り2.2%)
スターバックス(PER28倍、利回り1.9%)
ネクステラ・エナジー(PER23倍、利回り2.6%)
モンデリーズ・インターナショナル(PER21倍、利回り2.0%)
コルゲート・パルモリーブ(PER25倍、利回り2.4%)
コンステレーション・ブランズ(PER24倍、利回り2.0%)
アクセンチュア(PER24倍、利回り1.6%)
オートマチック・データ・プロセッシング(PER29倍、2.0%)
マコーミック(PER28倍、1.5%)

以上、2019年5月2日現在の株価に基づく数字。

こんなもんでしょうか。漏れがあるかもしれませんが、条件に合致する銘柄を一通り列挙してみました。少し条件から外れている銘柄もありますが(マイクロソフトやウォルトディズニーなど)、まあ誤差の範囲ってことで。

無論、これらの銘柄に投資すれば高リターンが確定するわけではありません。株式投資がそんな単純だったら苦労しません。特に配当利回りは参考程度にした方がいいです。単に配当よりも自社株買いを優先しているせいで、利回りが低くなっている場合もよくあるので。

黄金銘柄3条件についての持論

シーゲル氏が『株式投資の未来』で言っているのは、上記の様にしっかり配当を出しており、かつそれなりにマーケットから評価されている高品質な株が高い株主リターンを生み出す可能性が高いということです。

配当利回りについてですが、ここは利回りが高い低いよりも、有配か無配かの方に焦点を当てた方がよいかと個人的には思います。米国企業の銘柄分析を始めてから驚いたことですが、米国企業は無配と有配のメリハリがしっかりしています。無配企業は還元ゼロ。逆に有配になると総還元(配当+自社株買い)性向が100%というのが珍しくありません。てかこっちの方が普通です。配当性向だけ見ると低還元企業と思いきや、莫大な自社株買いを実施することで総還元性向は100%を超えている企業は普通にあります。

私は無配のアルファベットやアマゾンにも興味があるものの、やはり有配企業の方が長期的な株主リターンは良い結果になるだろうという考えを持っています(バークシャーは例外)。有配企業=総還元性向100%というのがもはや普通と先ほど言いましたが、これは経営者にプレッシャーを与えます。純利益はほぼすべて株主に還元した上で、それなりのEPS成長を実現させなさいという資本の圧力です。これが財務に規律をもたらすと思います。

高配当株が有望とは思いませんが、有配企業は有望だと思います。アルファベットよりもマイクロソフトに投資したいです。利回りが高い低いはさほど重要ではなく、有配、還元ステージにあることが肝だと考えています。

株主に富を還元する圧力に晒されている、比較的高PERの優良企業が高リターンが期待できる銘柄かなって個人的に解釈しています。

最初は「なんで高PER銘柄の方がリターンがいいんだ。割高ってことだろ?」って思ってましたが、それは間違いだと気が付きました。投資期間が長くなればなるほど、目前のPERの高さはどうでもよくなる。それよりも、今後の利益成長力の方が重要です。シンプルに算数で計算すると、そうなるわなって思いました。PER15倍(益回り6.7%)かPER20倍(益回り5.0%)かで悩むよりも、これから50年でどれだけEPSが成長するかに思いを馳せるべきだと気が付きました。

そこで条件③「長期的な増益率が市場平均を大幅に上回っている。 」が重要なわけですね。PERが市場平均を少し上回っている程度の銘柄は、条件③を満たす可能性が高いってことです。PERが高いってことは投資家の期待が高いことを意味しているわけだけど、往々にして期待以上の増益を達成できるということです。

ただし、PERが市場平均より少し高い企業なら、どんな企業でも期待以上の増益を実現できるのかと言えばそれは違います。そこは将来のことだから、何とも言えません。それがわかれば誰でも億万長者です。なので、たとえばですけど、S&P100を構成する超大型株に限定するなどが一案です。大きけりゃ良いってもんじゃないでしょうけど、時価総額が大きい企業はやはり安心感があります。

そんなわけで、シーゲル氏が言う黄金銘柄の3条件を僕は勝手にこう読み替えています。
①PERが市場平均をわずかに上回る
②有配、還元ステージにある
③大型株(たとえばS&P100構成銘柄)

この条件にすると、最初に列挙した銘柄に加えてビザ(V)やマスターカード(MA)も加わります。配当利回りが低いって投資判断をくだす上でかなりどうでもいいことです。VとMAは高リターンが期待できる黄金銘柄だと思っています。

で、問題なのは、こんなこと語っておきながら、自分がこの3条件を満たす銘柄にあまり投資していないことです。PERが高いと必然的に配当利回りも低めになっちゃうので、インカム好きの僕はどうしても敬遠しがちなんです。あと、多少PERが高くても長期では報われると頭で理解していても、なかなかPER25倍とかの銘柄を買う気になれないというのもあります。

この辺の邪念を振り切って、どうポートフォリオを最適化していくかが、今後の僕の投資家としての課題です。