私の投資家人生は1冊の本との出会いで大きく変わりました。ジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』です。
この本に出会ってなければ米国株投資を始めることも、このブログを開設することも、ブログを通じて出会えた多くの方とやり取りすることもなかったはずです。まさに運命に一冊と言っても過言ではありません。
初めて株式投資にチャレンジしたのは2012年の秋。TOPIX連動型インデックスファンドを1万円だけ買いました。山崎元氏や「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」を運営されている水瀬ケンイチ氏などの影響を受けて、先進国・新興国の株式に分散投資するという投資法に憧れ、先ずは日本株にちょこっとだけ投資したのが最初でした。
それから海外先進国株式(MSCIコクサイ)や新興国株式(MSCIエマージング・マーケット)などの指数に連動する投資信託やETFを買い続けてきました。タイやインドネシア、フィリピン株に手を出して痛い目を見たこともありました。あとは、有名どころではバンガードのVTにも好んで投資してましたね。
「もうこの投資方針を一生続けよう。コツコツインデックス投資を続けるだけで庶民の僕もいつかは億万長者だ!」。そう希望を持ちながら毎月の給与を地道に投資に回していました。
そんな世界分散インデックス投資を3年ほど続けていた時に、ふとしたきっかけで読んだのが『株式投資の未来』です。きっかけはあまり覚えていません。投資本、マネー本を読むのが趣味みたいなところがあって、毎週末図書館で借りたり書店で買ったりして読んでました。『株式投資の未来』もそんな普段読んでいた数多くの投資本の中の一つでした。
が、そんなone of themに過ぎなかった1冊の本に僕は衝撃を受けました。読んでる時にビビッと体に電撃が走るよう感じもあった一方で、読み終わってそれを自分の中で咀嚼して理解していく中でよりインパクトが増していった面もありました。
『株式投資の未来』から学んだたった一つの重要なこと。それは株式投資の基礎基本
僕が『株式投資の未来』から学んだもっとも重要なこと。
それは株式を保有するとは企業の所有者になることであり、株主利益は企業がどれだけ利益を稼ぐか、ひいては稼いだ利益をどれだけ株主に還元するかで決まるという事実です。
何か仰々しく赤字で書きましたが、これはめっちゃ基本的なことです。専門的な要素はほぼゼロです。「衝撃を受けたほどの本で学んだことがこの程度なの?ww」って思われても仕方ありません。
でもでも、僕にとってはこの株式投資の基本を骨の髄まで叩き込んでくれたことが一番大きかったです。『株式投資の未来』を読むまでは、この投資の基本、株式会社制度の仕組みの基礎を忘れていた気がします。
『株式投資の未来』にはもっと具体的な推奨投資戦略も書かれています。
たとえば、
・生活必需品セクターを重視
・ヘルスケアセクターを重視
・高配当投資戦略
・低PER投資戦略
・バークシャーハサウェイへの投資
・S&P500生き残り上位戦略
などです。
これらの指南もとても参考になりました。
しかし、私にとって一番の学びはそういった具体的な投資戦略ではありませんでした。「株主の利益とは企業の利益であり、もっと言えば配当である」という当たり前の事実に気付かせてくれたこと。これが何にも増して大きなインパクトでした。
株式投資って色々と専門的に語られることも多い分野ですが、仕組みはめちゃシンプルです。アクションレベルでは、ネット証券でポチッと株を買っていつか売るだけです。世間で株式投資がマネーゲームと思われるのも仕方ありません。
そうやってポチッとネット証券で株を買うと、あなたは企業の所有者になります。企業が稼いだ利益は持ち株比率に応じてあなたに帰属します。企業がビジネスを行って社会に価値を生み、その価値を数値化したものが利益です。その利益は配当として株主であるあなたに還元されます。
社会に価値を生み続ける企業の所有者になっていれば、株主も必然的に儲かります。企業、法人とは概念的な存在でしかなく、実際にその裏にいるのは株主です。
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株式会社(株式投資)の仕組みを図に描いてました。シンプルですよね。
①株主が企業に出資してリスク資本を提供し、②企業はその資本を利用してビジネスを行って利益を稼いで、③稼いだ利益を株主に還元する。
抽象化してしまえば、株式投資の仕組みはこれだけです。
これを理解すると一つの当然の結論に帰着します。それは株主の利益とは配当でしかないということです。
もちろん、実際の投資では値上がり益(キャピタルゲイン)があるのはわかってます。ただそれは途中売却する場合であって、仮に株を永久保有するなら資本家たる株主の利益は配当のみです。
キャピタルゲイン、キャピタルロスとは株主間の富の移転という性質があります。すべてのパイの合計は総配当額です。総配当額を大勢の株主で配分し合っています。割安なタイミングで投資できた人は、多くの分け前をゲットできることができます。
インデックス投資家の頃は株価しか見えてなかった(反省)
『株式投資の未来』を読む前から、株式会社の仕組みくらい理解していたつもりです。一応経済学部出身です。会計士です。
でも、インデックス投資をやっていた頃はその資本主義経済の基礎基本を忘れていたように思います。株主の利益とは企業の利益(配当)だ、という至極当然の経済的事実がスッカリ頭から抜け落ちていました。
なぜ、そんな大事なことを忘れていたのか?
それは結局、株価しか見ていなかったからだと思います。「世界経済は右肩上がりで成長し続け、それに連れて株価も上昇するから、世界の株式に分散投資していれば株主も儲かるんだ」。これが世界分散インデックス投資が儲かると信じた根拠でした。当時はかなり納得して意気揚々と投資してました。
でも、今振り返るとかなり曖昧で理論的根拠の薄い理屈で投資方針を決めていたな~と感じます。なぜ、世界経済が成長し続けるから、株価も右肩上がりなのでしょうか。そもそも長期投資家のリターンは株価の値上がりがもたらすものなのでしょうか。
そういったことに疑問を感じないまま、「長期で株価が上がり続けるなら、そりゃ投資家も儲かるよな。」くらいの気持ちでインデックス投資をやっていました。
インデックス投資を選択するというのは今でも適切だと思っています。しかし、「株価が右肩上がりだから長期投資は儲かる」という理屈は正しくないと今では思っています。そうではありません。投資先企業がビジネスで利益を上げ続け、それが株主に還元されるから長期投資は儲かります。
ビジネスを見なくてはなりませんでした。株価ではなく利益、配当を見なくてはなりませんでした。
常に株券ではなく、ビジネスを買うという投資姿勢が必要です。
ウォーレン・バフェット
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昔は、このバフェットの言葉をきちんと理解できてませんでした。この言葉を芯から理解させてくれたのが『株式投資の未来』です。私はジェレミー・シーゲル先生に足を向けて寝ることはできません。
優良企業の株を適正価格で買えれば長期投資は(ほぼ)確実に儲かる。そう確信した。
優良企業の株を買い続けることが長期投資ではとても重要です。最重要マターです。ちょっと割安で買うとかそんなことより100倍重要です。投資タイミングよりも銘柄選別の方が120倍重要です。
長期的に社会に必要とされ、社会に価値貢献できる優良企業の株を持っておかないと長期投資でリターンを得るのは難しいです。なぜなら「株主の利益=企業が稼いだ利益」だからです。
短期的には、株価変動をうまく予想して利益を得ることが可能です。でもその利益の出所は企業ではありません。それは投資家間の売買ゲームによる富の移転です。
短期と長期とでは利益の出所が全く違います。
短期トレードとは株価変動による値上がり益、値下がり損がすべてなわけですが、それは投資家同士のバトルです。ゼロサムゲームです。そこに企業のビジネスという概念はあまり登場しません。
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下手くそですが短期トレードのイメージを描いてみました。投資家間でグルグル資金を回しているだけです。こういった短期トレードが悪と言いたいわけでは全くありません。一定のルールの下、自己責任でトレーディングを行うことが悪いわけがありません。
言いたいことは、短期トレードと同じ発想を長期投資に持ち込むべきではないということです。もっと具体的に言うと、株価で勝負が決まる短期トレードと同じ発想で長期投資を考えると判断を誤るということです。長期投資の結果を決めるのは株価ではありません、企業の利益です。企業がいかにたくさんの利益を上げるのかがもっとも大切です。
もちろん買い値も重要です。割安で投資できるに越したことはありません。が、こと長期投資に限ってはそこは二の次です。常に安定した利益を出している優良銘柄を選別することの方が重要です。
同じ絵をもう一度お見せします。
結局、これがすべてです。当たり前だけど、株主投資って企業がビジネスで利益を上げてナンボだよな。企業の利益なくして株主の利益もあるわけないよな。そんな超超当たり前の事実を腑に落ちるまで理解させてくれたこと。これが私が『株主投資の未来』で学んだもっとも重要な事、株式投資の基本でした。
株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす
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ぜひ夏休みを利用して読んでみて下さい。心の底からオススメしたい書籍です。
自分は「成長の罠」に衝撃を受けましたね。
衰退するタバコに投資するのが一番儲かった!というのが衝撃を受けました。
それまで株式投資のイメージとしては成長伸び盛りの会社を見つけてそいつに投資をして
お金を儲けるというイメージでしたので。
周りに投資に興味がある人に聞くとそういうイメージを持っている人多いですね。
タバコなんて衰退するだけ、投資をするなら将来性のある会社を見つけてそこに投資をすることだ!
というような感じで。
この本のおかげで経済的不安はとても解消されました。
しかも今はネットで同じような方を見つけることができるため大変ラッキーでした。
自分一人だけだと雑音に負けて成長会社に投資していたかもしれませんので。
この本は何度も繰り返し読むべき良書であると思います。
帯にバフェット氏が全ての投資家が読むべきものだと言っていますしね。
私も「成長の罠」には驚きましたし、勉強になりました。
IBMとスタンダード・オイルとのパフォーマンス比較、タバコ会社のフィリップモリスの株主リターンが圧倒的だった点、どちらも興味深い情報でした。
長期投資における利益が必ずしも株価と連動しないということを理解するまで、少し頭を整理して煮詰める必要がありましたが今はクリアです。
結局、この「成長の罠」で言っていることも本質はシンプルで、株主の利益は企業の利益・配当でしかないという事実です。
期待が低く株価が下がっているにもかかわらず、スタンダードオイルやフィリップモリスは淡々とキャッシュを稼ぎ続けたから、投資リターンは高まりました。
長期投資では、株価は割安でなくてもいいのでとにかく優良企業に投資することが肝要ですが、割安なタイミングで投資できる越したことはありません。
「優良企業×割安」この2つの条件が揃ったレアな銘柄がフィリップモリスでした。
現代でそういった割安優良企業の銘柄があるかと言え、なかなか難しいだろうなと思っています。
なるべくマーケット期待の低い銘柄を狙いつつも、あまり欲張らずに優良企業の株だけを粛々と買っていきたいです。
この本のおかげってのもありますが、株式投資という資本所得の手段を持てるのが不安解消にもっとも貢献してくれていると感じます。
労働所得を高める方向に努力するのも楽しい面もありますが、効率性を考えれば資本所得を得る方向に努力したほうが良いですね。
株主還元は自社株買いもですね
凄まじい規模の自社株買いのアップルにバフェットも惚れこむわけですね^^
高増配率・高自社株買いの2つが組み合わさっているのはアップルだけだと思います。そしてこの流れは数年続く可能性も高いです。
バフェットの目の付け所がやはり株主利益重視ですね。原則は不変ですね
そうですね、自社株買いも株主還元ですよね。
ちょっと屁理屈かもしれませんが、自社株買いで将来の一株当たり配当(DPS)が高くなっても、結局きちんと配当をもらうまでは株主の財布にはキャッシュは入ってきません。
なので、最終的なリターン、資本家の総リターンは配当でしかないと思っています。
すみません、ちょっと理屈っぽい話でした。
アップルは、株価が急上昇して時価総額が1兆ドルを超えた今でも予想PERはS&P500平均を下回ります。
単価の高い高級iPhoneの売上は競合サムスンより好調ですし、マージンの高いサービス売上の拡大も順調です。
将来の増配力は高いでしょうから、株価はまだ若干割安に見えるくらいです。
バフェットは、いずれアップルのバリュエーションがコカ・コーラ並みに落ち着くと踏んでいるのかもしれません。
HIRO様
半年ほど前からブログを読ませていただいております。
私自身はアラフィフですが、新しい分野に挑戦しようと3ヶ月ほど前から株式投資を始めました。物事を語るにおいて実践は欠かせないと考えたからです。
勿論、推薦される図書も読みました。一度読んだだけでは中々理解できない部分もありますが、財テク週刊誌などとは比べ物にならない正論です。当たり前ですね。
正直、妻の理解を得るためにはかなりの条件設定?整備?を要しました。限られた資金と生存年数(笑)ですが、良い経験ができたらと思っております。
さて、今回投書させていただいたのは真剣かつ切実な思いからです。
HIRO様のブログや推薦図書を読ませていただき(「投資は余裕資金で」とは言われますが)資本主義の恩恵を預からない側に居続けることはかなりのマイナスであると考えさせられました。
そして、次の世代や真に経済的に困っている方々こそ、正しい金融(教育を受け)知識を身に着け生活の一助にすべきだとも考えるに至りました。
話は飛躍しますが、だから国は年金という制度を作って「投資」を行い、広くすべての国民がその恩恵に預かれるようにと考えたのでしょうか。(GPIFでしたっけ? とてもそれだけでは生活の保障などむりでしょうが)
職業柄【教師(特別支援担当)】様々な環境の子供たちを見てきました。
今、夏休みで色々考えが巡ります・・・将来、保護者がいなくなり経済的な後ろ盾のない彼らが、少しでも「選択肢のある生き方」ができるようにするため株式投資をうまく活用できないものでしょうか。
浅はかとはおもいつつ・・・思いつくままを書いてしまいました。
TAKU様
コメントありがとうございます。
昔は投資で資産を築いてサラリーマン引退して、悠々自適な生活をすることに憧れを持っていました。
しかし、今はそれはちょっと違うかな~と思っています。
何に人生の意味を見出すかは人それぞれですが、私の場合は何らかの形で社会と繋がっていないと落ち着かない性格みたいです。
消費という形でしか社会と関わらなくなるのがアーリーリタイヤですが、それは嫌だな~と今は思っています。
仕事でも趣味でもゲームでも何でもいいので、時間を忘れて打ち込めることを一つでも多く持ちたいです。
株式投資は将来の財産形成の一助になるために行う面もありますが、色んな本を読んで勉強して知識が増えていくことを楽しんでやれる面もあります。
投資に限らずですが、何かを始めるのに年齢は関係ないと思っています。
長い長い人類の歴史を考えれば、0歳児も80歳のおじいちゃんも同世代みたいなもんとすら思います(笑)。
株式投資を行うと人生の経済的基盤を固めることができると思います。
が、そうやって経済的な支援が必要な層に、なかなか株式投資の知識が浸透しないという現実もありますよね。
また、株式投資は元手がないと始まらないというところもあって、資金が少なく将来の備えのため株式投資が必要な人に限って投資を始められないというジレンマもあります。
手品や魔法はありませんから、少額でもいいからコツコツ早い内から投資を始めましょうという有り体な提言しかできません。
今の生活水準を維持するために仕事を嫌々せざるを得ない、という状況が一番しんどいと思います。
給与の範囲内で経済的にそこそこ余裕のある状態を作り出すのが大切かなと。そうでないと、株式投資なんて考える余裕がありませんから。
先ずは株式投資どうこうの前に、最低限のマネーの勉強・資本主義の仕組みを知ることが大切かもしれません。
おっしゃる通り、株式投資をやらずに一生資本家側に回らない大多数の国民に変わって株式投資をやってくれているのがGPIFです。
一時的な損失ですぐにやり玉に挙げる先生方もいらっしゃいますが、GPIFのポートフォリオは真っ当です。
年金が少ないと不満を抱いている人も多いかもしれませんが、もしGPIFが運用していなかったらもっと悲惨な老後生活を強いられることになるでしょう。
>将来、保護者がいなくなり経済的な後ろ盾のない彼らが、少しでも「選択肢のある生き方」ができるようにするため株式投資をうまく活用できないものでしょうか。
日本がもっと経済成長して、福祉にたくさんの資金を回せて社会全体でサポートできるのが理想の姿だと思います。
が、正直言ってそれは現実的ではないですよね。
だからこそ、抱かれている問題意識かと存じます。
確かに、長期的な株式投資が役に立つ場面はあると思います。
分かりやすい低コストなインデックスを仕組みとして積み立てておけば、いざという時経済的に助かります。
hiro様
お忙しいところ、返信いただき誠にありがとうございました。
胸の内を話せただけで、ありがたいです。感謝申し上げます。
私には経済・会計の専門知識はありません。教育が本職です。
現在のところ銘柄分析を自前でする力量もありません。あったとしても公務員ですから、投資を勧める立場にもありません。
ただ、今回のチャレンジで自分で確信が持てるようになったら、いつかは違う立場で彼らの役に立ちたいと考えます。
教育の世界は「意外と綺麗ごと」が多くて、本来切実なはずの「お金」に切り込む教師は少ないです。居ないといっても過言ではないでしょう。役所や議員もせいぜい、公共のサービスや補助金をどう申請するかのアドバイスか口利き程度です。
それも大事なんですが、いつまでたっても「受ける側」のままではいけないと考えるのです。
また、思いのたけを書き込んでしまいました。すみませんでした。
TAKU様
いいえ、こちらこそ返信ありがとうございます。
>教育の世界は「意外と綺麗ごと」が多くて、・・
確かにおっしゃる側面はありますね。私も普通に義務教育+高校、大学と進んできた立場として思うところはあります。
綺麗ごとと言いますか、社会で必要とされる実践を無視した理論寄りの教育が重視されがちですかね。
それは決して悪いこととは思いません。
成功した事業家、投資家の多くは、会計や統計学なんかよりも歴史・哲学・心理学などの勉強がもっとも有益だったと語っています。
でも、それはごく一部の天才だからそう言えるところもあります。
現実問題としては、そういった抽象的普遍的な学問よりも、社会に出て即役に立つ「お金」の話や会計の知識の方が重要です。
大多数の人にとってはそういった実学の方が役立つ場面が多いと思います。
お金の話と汚いことと思わずに、きちんと貨幣の本質とか株式会社の仕組みを早い内から教育していくことは大切だと思います。
特に日本は過去の遺産たる金融資産を莫大に保有していますから、より一層お金の知識が必要とされます。
いつまでもGPIFに頼っているわけにはいきません。
素敵な投資哲学ですね。
考えさせられます。