米銀ゴールドマン・サックス・グループのトレーディング部門は、この数年間で最大級の人材採用を計画している。採用する職種はコーディングの能力がある技術系エンジニアのみ。ウォール街が向かっている方向を示している。
トレーディング部門のエンジニアリング共同責任者、アダム・コーン氏によれば、ゴールドマンは向こう数カ月でトレーディングフロアの技術関連職にエンジニア100人超を採用する計画。
ブルームバーグより
こういう報道を見ると、今の低金利ってニューノーマルかもしれない、もう金利は上がらないかもしれないと思わされます。
ゴールドマンはトレーダーとしてエンジニアを採用すると。経験ある人の判断よりもアルゴリズムの方が有利に取引できるという経営判断です。
100人のエンジニアが作り出すアルゴリズムのせいで、昔なら採用されていたであろう数百人、もしかしたら数千人のトレーダー職が消えるかもしれません。いや、アルゴリズムのおかげで、トレーダー業務から解放されると言った方が正確でしょうか。
資本の需要が減っていくとはつまり、人の労働に依存する仕事が減っていくことだと解釈しています。今の低金利(資本に対する需要が相対的に小さい)は、ゴールドマンの採用戦略に見られるようなビジネスの構造的な変化が原因かもしれません。
失業と捉えるとネガティブですが、労働解放と捉えると前向きです。ただやはり手放しでは喜べないのも事実。エンジニアのプログラムが生み出した付加価値を、どう社会全体に配分するのか。エンジニアと経営陣と株主が富のすべてを持っていくのか。一見それは正当なように見えますが、そうなると必ず貧富の差が生じます。そこでベーシックインカムという議論がたまに出ますが、そう簡単には事は進まないでしょう。
社会全体として効率が上がって豊かになっているのは間違いない。でも、その効率性向上がもたらす富はごく一部の人が持っていく。ジェフ・ベゾス氏とか。リスクを取ってビジネスで成功した人が富を得るのは当然。当然だけど、社会にも還元しないと世の中が不安定になる。
金利が下がると将来キャッシュフローの割引率が下がるので、あらゆる資産価格が上がります。それは社会の正しい姿を映しているのかもしれません。つまり、資本需要(人の労働の需要)が減って豊かになっているということ。世の中の効率性向上による富の増加をどう社会全体に配分するのか。私は何のソリューションも持ち合わせていません。ただ所得の再配分がとても難しい時代だなあと思うだけです。
中央には期待できない。自分で防衛するしかない。投資ブログらしい有り体な結論ですが、アルゴリズムが生む利益を吸い取れる資本家という立場に居続けることが大切だと思います。